STACKELBERG, H. von Marktform und Gleichgewicht , Wien und Berlin, Springer, 1934, 8vo., pp.vi+140 シュタッケルベルグ『市場形態と均衡』初版。 著者は、コスモポリタン。モスクワに生まれ、父はドイツ人、母はアルゼンチン人。ロシア革命の難を逃れ、ドイツのケルンで育つ。ベルリン大学を経て、マドリッド大学教授の時、スペインで客死する。――― 以前、スペインの本屋から送られて来たカタログに著者の本(スペイン語)を度々見かけたので不思議に思ったが、こういう訳があったのである。―――しかも、41歳の生涯であったから夭折といえよう。 供給者が2者の複占におけるシュタッケルベルグの解(最近はシュタッケルベルグ「均衡」といわれることが多いようだ)を展開した書である。 「競争と独占のあいだに存在している中間的市場形態をどう取り扱うかについては、いぜん見解の相違がみられる。さらにまた、考えられるすべての市場形態を包括し、かつ相互依存的な市場の関係を分析するような、問題の体系的研究が欠けている。以下において、わたくしはこの間隙を埋める基礎をつくりあげようと思っている。」(邦訳p.24) 著者は無差別曲線(等利潤曲線)と反応曲線により複占企業の行動を分析している。巻末には数学付録がある。 供給者複占における、供給者の態度については、クルーノ、エッジワース等の研究があった。それらは、複占者の操作しうる変数(数量・価格)を決定するに際し、お互いに相手の変数を所与とみなし自己から独立したものとしてきた。対称解といわれるものである。これに対しシュタッケルベルグの複占論は、一方が「独立の地位」を取り、他方が「従属の地位」を取る場合の「非対称複占解」である。 後世に名を残すには、「解」を見出すのが早道のようだ、一般相対性理論の何かも判らない門外漢も、「フリードマンの解」や「シュバルツシルトの解」(こちらは解といっても微分方程式のことらしいが)の名は知っている。著者も早世したにもかかわらず、「シュタッケルベルグの解」で記憶されることとなった。 ドイツの書店からの購入。紙表紙で表紙と標題紙が同一なので、標題紙写真は省略。 (参考文献)
(H18.9.23記) |