ROBERTSON, D. H.,
Banking Policy and the Price Level. An Essay in the Theory of the Trade Cycle, London 1926, 8vo., pp. vi+103

 ロバートソン、『銀行政策と価格水準』、初版。
 著者の『経済変動の研究』,『貨幣』とともに三部作をなす書。本書には邦訳があるが、私には読む力がないので、菱山泉『近代経済学の歴史』や根井雅弘編『経済学88物語』に寄り掛かりながら内容を紹介しておきます。
 物価を安定させる事が、銀行政策の眼目とされるが、物価安定を企図する銀行政策と資本形成を可能にするために必要な産業資金供給の銀行政策は矛盾しないかを究明する書である。
 その接近法に新しさがあり、景気循環を衝撃と波及の観点から、実物的波及過程と貨幣的波及過程の理論を展開する。貨幣的波及過程の理論が本書の業績である。事前・事後の分析、期間分析の方法で投資・貯蓄の関係を解明しようとした。ケインズに代表される投資・貯蓄分析の先駆とされる。
 「ロバートソンの問題提起は方法的にして現実的、その処理は、現実的でありながら、しかも精密にして数学的ですらある。彼が歩んだ道はいわば経済学の王道であった。彼の名がその業績に比して知られること割に乏しかったのは、こういう事情のため、その後の経済変動論が正しい課題解決のためにおのずからこの道を歩まざるを得ず、その足跡を見ることなく、彼の道を歩んだからではないかと思われる。」(青山秀夫『剣橋学派及び北欧学派の経済変動理論』序)
 ブローグも云う 「読者層をつかむには・・・あまりに難解で癖のありすぎるものであり、したがって当時も現在もほとんど読まれないままである。しかしながら、・・それは20世紀の経済学におけるもっとも重要な躍進の一つにあげられよう。・・・実際のところ、近代のマクロ経済的動態学の源泉は、ケインズの『一般理論』ではなくこの作品であると主張しても突飛なことではなかろう。」(中矢俊博訳『ケインズ以前の100大経済学者』p.226)

 小さな本で、以前からチェコの書店から入手した初版第2刷は持っていたが、この5年ほどの探求にかかわらずネット上で初版は現れなかった。それが、04年末日本の書店カタログで初版が出た。値段も安く直ぐに電話を入れたが、売り切れとの返事。落胆していた直後にネットで英国の書店で初版の連絡、私にしてはかなりの高額であったが、思い切って買った。




標題紙(拡大可能)

(H17.5.記)




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