KUHN. Thomas S,
The Structure of Scientific Revolutions. International Encyclopedia of Unified Science, Vol. II no 2., Chicago & London, University of Chicago Press, 1962, pp. xv+172

 トーマス・クーン著『科学革命の構造』初版。
 「パラダイム」なる概念を明らかにした科学史の書。最近書かれた経済学史の本でパラダイムなる語を載せないものはないほどであり、本書は経済学史年表にも堂々と記載されているため、経済学プロパーの本ではないが、ここに取り上げた。
 もっとも、パラダイムという言葉は、クーンの処女作である『コペルニクス革命』で初めて使われている。しかしながら、使用されているのは2箇所のみであり、言葉の意味について、何の説明もされていない。
 常石敬一氏が、『コペルニクス革命』の訳者解説で書かれているように、「パラダイムという言葉が、クーンの意志とは異なり一人歩きをしている」ようであり、むしろ「今日特に社会科学の分野でよく使われている」概念かもしれない。

 1962年にシカゴ大学出版局から発行された初版とされる本は2種類ある。一つは、“International Encyclopedia of Unified Science”シリーズの一冊として発行された黄色い紙表紙版であり、いま一つはブルークロス装で青と白の紙カーバーがかかったハードカバー版である。
 両者は標題紙関係を除いて内容は同一である。最初は該シリーズ本の一冊として、企画された。執筆過程で内容が膨らみ、シリーズ本としては大き過ぎるので単行本として出版されることとなったが、結局契約の問題もありシリーズからも出すこととなったようだ。両者は「同時に独立して」出版されたのであり、どちらも初版と呼んでさしつかえないが、成立経緯からしてどちらかといえば、前者が正式な初版とされる。

 アメリカ人が著したエポック・メーキングな本については、アメリカの古書店は高い値段を付ける傾向があるようで、この本の初版は上記どちらの版もかなりの値が付いている。しかしながら、根気よく時間を掛けて探せば必ず安い本は出てくるもので、所蔵する本もそうして入手したものである(初版の解説にかんしては、米国古書店カタログの説明文を参照した)。
 


(右が黄表紙版、左がブルークロス版)


黄表紙版標題紙 (拡大可能)

(H17.10.29記.H21.5写真追加)



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