KALECKI, M.
, Studies in Economic Dynamics , George Allen & Unwin Ltd., 1943, 19cm , pp.92

 カレツキー『経済動学研究』初版。
 ポーランドの経済学者で『一般理論』の同時発見者ともされるミハウ・カレツキは、マクロとミクロを結びつけた資本主義経済に関する大きな本を3冊書いている。”Essays in Theory of Economy Fluctuations, 1939” 、“Studies in Economic Dynamics, 1943”および “Theory of Economic Dynamics, 1954”である。
 発行順でその中間に発行された本書は、”Essays” から“Theory”へ完成度を高めて行く中間段階の著作として大きな評価がなされていない(宮崎義一『近代経済学の史的展開』およびP.クライスラー 金尾敏寛他訳『カレツキと現代経済』等)せいか、翻訳もなされていない。

 本書は、古書市場にも出て来ず、大学図書館の所蔵も少なく私製本が目録に載っているくらいだから稀覯本であろう。長らく探求書であった。このたび入手してみると、戦時経済統制下に発行された簡素な本であった。”BOOK PRODUCTION WAR ECONOMY STANDARD”とマークが標題紙裏に印刷されている。発行部数も少ない上、粗末な装丁のため保存されるのも少なかったと思える。
 ちなみに、”Essays”の翻訳本の題名は『ケインズ雇傭と賃銀理論の研究』となっており、戦争文化研究所が昭和19年に発行したもの。こちらも、完全な戦時仕様である。題名がケインズ云々となっているのは、「カレツキはケインズの同工異曲であると誤解され・・・彼の経済思想が十分評価されるようになったのは、つい最近のことなのである。」(ブローグ 中矢訳『ケインズ以後の100大経済学者』)事情によるのであろう。


写真左が”Fluctuations”の翻訳書、右が本書


標題紙(拡大可能)

(H16.12.記. H21.5.12写真追加)



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