FISHER, I.
,The Making of Index Numbers ; A Study of their Varieties, Tests, and Reliability, Boston and New York, Houghton Mifflin Company, 1922, ppxxxi+526, 8vo;Presentation copy. Inscribed and signed by author.

 フィッシャー『指数の作成』。初版、著者署名献呈本。
 指数といっても累乗(exponent)のことではない。物価指数の指数(Index)である。商品群があって、その中に含まれる個々商品の価格と数量が(時間的のみならず空間的の場合も含む)変化している時、その商品群としての価格・数量の変化はいかほどか、を数量化するものなのである。共通した物理的単位のない種々測定値の複合体にどのような数量的表現を与えるかの問題である。
 「指数をいかに構成するかという問題は、統計技術の問題であると同時に、経済理論の問題でもある」というフリッシュの言葉がアレンの本の冒頭に掲げてある。このフィッシャーの本も彼のドル安定化運動の所産である(都留重人『近代経済学の群像』)らしい。
 著者は本書で理想的な指数を求めた。130種類の指数から初めて、まず単純な指数とそれから導出されたものを除き65の指数に絞り、さらに奇妙であったりバイアスを作る20個を除き、残り45個に「フィッシャーのテスト」を行った。
 7つの主要なテストの名前だけ挙げると。1.循環テスト2.時点逆転テスト3.同一性テスト4.比例テスト5.単位無差別テスト6.確定テスト7.要素転逆テストである。
 しかし、かれの考えた一切のテストを満たすものはなく、ラスパイレス指数とパーシュ指数の幾何平均が最良であると選択し、これを「理想指数」であると結論づけた。しかし、これさえも1.のテストはクリアできていない。もっとも、これらフィッシャーのテストの内、いくつかのテストは同時には満足されえない事が、後にフリッシューおよびワルトによって示されている。

 著者のWarren M. Persons に対する献呈本。本書序文には、本書の元となった論文について書かれたものとして、真っ先にPersonsの"Fisher`s Formula for Index Numbers."論文があげられている。
 フィッシャーは署名好きだったようで、献呈本が売りに出されているのをよく見る。現に小生も他に2冊のフィッシャー署名本を蔵している。そのうち、一冊は「経済学者のサイン集」に高木(高城?)教授宛献呈本として載せている。
 なお、署名本として他に貴重と思われるのは、同じく「サイン集」の棚に置いてあるJ.R.HicksからA.Senに献呈されたものくらいか。ご覧いただければ幸いです。
 この本は署名本として取り上げたが、本自体も初版はなかなか入手しにくい本で、署名もなにもないただの初版本を、見つけるのに苦労した覚えがある。

(参考文献)
1.
水野勝之『経済指数の理論と適用ー経済分析への経済指数の適用ー』、創成 社、1988年
2.G・スチューヴェル著能勢信子・小西康生訳『経済理論の理論』、同文館、1991 年
3.R・G・D・アレン著溝口敏行・寺崎康弘訳『指数の理論と実際』、東洋経済新報社、1977年




標題紙(拡大可能)

(H20.4.19記)



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