BARONE, E.,
Principi di Economia Politica, Roma, Bertero, 1908, 24cm, pp.136

 バローネ『経済学原理』初版。
 第一巻だと思われる。書誌によって発行年を1908年とするものと1908-10年とするものがある。Webcatには、初版は搭載されていない。インターネットでイタリアの図書館のカタログを探ると、1908年刊で210ページの本だけが判ったが、これは1・2巻の合本だと思う。この本の標題紙には第一巻との記載はない(と思う)が、邦訳書(清水照夫訳『競争・独占・恐慌の厚生理論―経済学原理―』文雅堂書店S33、独訳からの重訳)と比較してみると、第一章から第四章の部分のみであるので、後の巻があるものと判断した。

 著者は、職業軍人として出発し軍事科学者として多くの著作を残している――ちなみにこちらの古書価も結構高い。40歳を過ぎてから経済学の研究を始めその魅力に惹かれて、軍人としてのキャリアを捨てて経済学に転進した。砲兵科の出身だから充分な数学的訓練を受けていたのが武器となったのだろう。
 彼は、生産係数が可変で生産要素が自由に変動するなら、限界生産力から企業の均衡産出水準を決定する費用関数が導出できる事を示し、限界生産力理論を一般均衡理論に組み入れられることをワルラスに教えた。ワルラスは古くは1870年代から同僚の数学者アムシュタインに可変的生産係数を基礎とした限界生産力理論の教示を受けたが理解できず、ウィクスティードの論文が出た後、バローネの書簡でようやく『要論』第三版から限界生産力理論を展開した。
 また、バローネといえば、「集産主義国家における生産省」(1908)の論文が有名で、集産主義(=社会主義)における競争均衡達成のためのシャドー・プライスの理論は1930年代の「社会主義計算論争」において取り上げられた。しかし主著としてはこの本が挙げられることが多い。
 最後にシュンペーターの言葉で締めくくる。「彼こそワルラスに対して、不変の生産係数を用いないでいかに論を進めうるかを示したその人であった。彼はマーシャルの部分分析の妥当性の限界を定式化した。彼は若干点でマーシャルを抜き又その他の点(公共財の理論)でエヂワースを追い抜いた。また彼は――疑いもなくパレートの言明した基礎にたって――社会主義経済の理論の輪郭を描いた・・・しかしただこの最後に挙げた業績と彼の優れた教科書(記者:この本のこと)のみが適格な認知を受けたのみであった。」(東畑精一訳『経済分析の歴史』p.1811)
 (参照:松浦保『オリーブの風と経済学』日本経済評論社2001年;柏崎利之輔『ワルラス』日本経済新聞社S52)

 イタリアの書店から購入。イタリアの書店サイトMaremagnumは最近のバージョンアップで書店への質問ができぬようになったため、読めぬイタリア語の説明文だけでみずてんで発注した。このサイトは、ちょくちょく仕様が変更されるが、書店との直接取引を恐れてか、今回のような変更はバージョンダウンである。




標題紙(拡大可能)


(H18.12.17記)




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