KEYNES, John Maynard,
The General Theory of Employment, Interest and Money, London, Macmillan, 1936 . 12mo. xii+384

 ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』初版。
 いわずと知れたケインズの主著。反ケインズの流れはあったが、ケインズが20世紀最大の経済学者という評価は動かないようである。

 ここに掲げたものは、一般に古書店で初版として売られている8vo. の大きさのものより一回り小さい12mo.版である。『一般理論』の第一刷は,INDEX の後に ERRATUM がある(Collected Writings of J.M.K. VII Editorial Introductions xix )となっているが、この本は索引その物がなく、本文の直後に正誤表がある――ただし、序文に「索引の作成には、ケンブリッジ大学キングス・カレッジのDMベンスザン・ハット氏の手を煩わせた。」との記述はある。
 本文も、384ページしかなく、いわゆる第一刷の403ページより索引分だけページ数が少ない。
 レビュー・コピーかなにかだろうか。諸賢のご教示をお待ちしている

 


標題紙


ERRATUM のある最終頁


いわゆる初版第一刷が左の紺表紙本、右のクリーム色表紙本がこの本である。


 (付記)

 兵庫県立大学 神戸学園都市学術情報館(旧神戸商大図書館)所収の瀧川ヒックス文庫にヒックス旧蔵の『一般理論』があり、HP上でレビュー・コピーとの記述を見つけた。
 メールで問い合わせた所、直ぐに返答を頂戴できた。ヒックス本は、403ページの「普通」の初版とのことである。本の遊び紙に “Jhon R Hicks. This was my review copy とした後に、E.J. 1936 ”と書かれていることから、レビュー・コピーとされたようだ。 
 ヒックスがEconomic Journalに書いた『一般理論』の書評"Mr Keynes's Theory of Employment", 1936 に用いた本だろう。当方の期待した簡易装丁の「書評用献呈本」ではないようだ。
 お忙しい中、お調べ頂いた学術情報館の司書の方には深く感謝します。
 また、故宮崎義一氏の講義の記録(実業之日本社『最終講義』所収)から、戦前黒表紙の海賊版があったのを知ったが、私蔵本はそれでもなさそうである。曲がりなりにも本の背にもマクミランの社名が印刷されているからである。私にとって謎は深まるばかりである。
(H18.2.20 追記、 H21.5 文章一部改訂及び写真一葉差換え)



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