PANTALEONI, M., Principi Economia Pura, Frenze, G.Barbera, 1889, pp.376, 16mo.

 パンタレオーニ『純粋経済学』、初版。
 パンタレオーニは、イタリアの経済学者。父は医師にして政治家、母はイギリス人。アングロサクソン系の経済学に関心を持ち、その継承者を任じていたのも、血のゆえか。
 ローマ大学卒業後、ジェヴォンズ理論を応用した租税転嫁についての論文(1883年)を執筆、これをもってイタリアにおける限界主義の出現とされる。
 バリ(注1)商業高等研究所教授の時代に主著であるこの『純粋経済学原理』を著した。本書は、過去の理論を整理しているだけで、独創性はないとされる。ゴッセンージェニングスージェヴォンズの線で限界効用理論が展開されているが、本文中に数式は使われていず、図式による説明がなされている。パンタレオーニは、経済学理論の発展方向は一般均衡理論であり、今後の課題は動学化であると正しく認識していた。
 ローザンヌ学派を支えた経済学者の多くがイタリア人であったことから考えると意外だが、限界主義はワルラスを経てイタリアに入ったものでもはない。この本によって、イギリスの経済思潮すなわちジェヴォンズの理論が広まったのである。ワルラスは早くも、1870年代の初めにイタリアに登場しながら忘却されていた。メンガーやボェーム・バヴェルクのオーストリア学派をパンタレオーニは、イカサマ師呼ばわりしていた。
 古典主義者や歴史主義者等「まとまりのないこの一群の経済学者の真っ只中に、パンタレオーニは、『さん然と輝く剣をもった大天使』のように現れたのであった。」(ピエロ・バルッチ、ブラック編著p.196)本書は、同時代の経済学者にとって必読書となって、パレート・バローネをはじめとするすべてのイタリア経済学者は、本書によって研究を始めたのである。パレートは、この本を高く評価したが、「限界効用」の概念になじめず、パンタレオーニに質問の書簡を出した。これを契機として、パレートの限界効用理論の研究が始まった。
 ちなみに、パンタレオーニとパレートが初めてあったのは、1890年。そして、彼がパレートとワルラスを引き合わせたのは、1891年である。

 イタリアの書店より購入。「掲示板」にも書いたことがあるが、昨年イタリア語の壁と格闘して発注した本書は、結局届かなかった。送金して不着の事故はインターネット取引歴7年間で初めてである。今回は、別の書店で、信じられないような安い価格で本書を見つけることが出来た。送料も船便並みだったが、頼みもしないのに書留・航空便で1週間ほどで届いた。このような経験があるので本書の入手は一入嬉しいものである。それにしても、イタリアという国は不可解である。

(注1)南イタリアの都市、バーリとも。パリと誤記したものもあるので注意
 
(参考文献)
  1. コリソン・ブラック他編著 岡田純一他訳『経済学と限界革命』日本経済新聞社、1975年
  2. 松浦保『オリーブの風と経済学』日本経済評論社、2001年
  3. 丸山徹『座談経済学』サイエンス社、1984年




標題紙(拡大可能)

(H18.7.15記)



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