MARSHALL, Alfred ,
Principles of Economics Vol.1 (all published) , London and New York, Macmillan and Co., 1890. 8vo, pp.xxviii+754+60

 マーシャル『経済学原理』初版。
 マーシャルの学説は早い段階から形成されていたが、十分な形で一般に発表されなかった。それは、講義や談話の中で惜しみなく友人・学生に分かたれたのである。「出版された著作だけでマーシャルを知る世界中の経済学者には、イギリスの彼の同時代人や後継者たちが彼のために法外な地位を要求するのが、了解しがたいかもしれない」
 「まことに、ジェヴォンズの『経済学理論』は才気に溢れたものだが、せっかちな、不正確で不完全な小冊子であって、マーシャルの苦心をこらした、完璧な、極度に良心的な、極度に目立たないやり方とは雲泥の相違がある。・・・ジェヴォンズは釜が沸くのを見て子供のような喜びの叫びをあげた、マーシャルも釜が沸くのを見たが、黙って座り込んでエンジンを作ったのである。」(ケインズ『人物評伝』大野忠男訳)
 新古典派の批判者であったケインズにこのように書かれれば、泉下のマーシャルももって瞑すべきだろう。日本でも杉本栄一は、マーシャルを中心としたケンブリッジ学派を高く評価しているのが記憶に残っている(『近代経済学の解明』)。
 当初マーシャルは二巻本として出版する予定で、第2巻は2年後に出すつもりであったが果たせず、標題から第1巻の名称をはずしたのは、1910年とのことである。(「J.K.ホイティカー『経済学原理』の第2巻はどうなったのか?」、ホイティカー編著 橋本昭一役『マーシャル経済学の体系』所収)

 標題紙にいくつかの虫食いの跡がある。全体はきれいな本である。都丸書店からの購入。
 地方在住者としては、カタログの届くのが遅く、注文したときには売り切れという悲哀を度々味わっているのだが、本書は運良く入手できた。




標題紙(拡大可能)



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