CAREY, H.C., Principles of Political Economy. Part the First; of the Law of the Production and Distribution of Wealth. Part the Second; of the Causes which retard increase of the Production of Man.Part the Third; of The Causes which retard increase in the Numbers of Mankind. Part the Fourth; of the Causes which retard Improvement in the Political Condition of Man., Philadelphia, Carey, Lea & Blanchard etc., 1837-1840, pp.xvi+342;vi+466;270, 8vo. ケアリー『経済学原理』全3巻、いずれも初版、著者贈呈本。 高橋和男氏も書かれているように(田中敏弘編、1999年、第2章)第1.2巻は、ケアリーもパートナーの「ケアリー、リー&ブランチャード」から発行されているが、第三巻の書肆は「リー&ブランチャード」(精確に云えば、及びロンドンの「ジョン・ミラー」)に変っている。 著者は、父親の経営する印刷業者の手伝いから出発し、独学で知識を身につけ、後は著述に専念した。主著は、本書、及び『自然の調和』(1836)、『社会科学原理』(1858-59)である。 本書は、Part one 「富の生産及び分配法則について」で展開した再生産費説で知られている。ケアリーは、ほとんどの点でリカード理論の追随者であったが、古典派が価値論では投下労働説をとりながら、土地の価値は例外とした矛盾を突いて「再生産費説」を唱えた。 人間の自然に対する支配力が増大する進歩する社会は、労働の価値で測定した財の価値は減少し、再生産費は生産費より小となり価値は再生産費で決定されるとしたのである。 「自然の抵抗」によって測定される「再生産費説」は、土地を含めたすべての価値を説明できるとする。「この価値論は一種の労働量理論であって、商品の価値を決定するものは、現実に商品に投下された労働量でなくて・それを再生産するに必要な労働量であるとなす改善点を含んでいたものである。彼はこの数量が技術的進歩の過程において急激に減少することを観察した。そしてこの点からも、労働の受け取るべき相対的分配分は、技術的進歩の経過において増加せねばならにと結論した。」(シュンペーター、1955-1962年、p.1088) 価値は過去の労働費用ではなく、将来の予想労働費用によって決定されるという、この再生産費説は、ブローグによれば、マルクスにさえ感銘を与えた(『ケインズ以前の100大経済学者』ケアリーの項)。 ブローグのいう部分がどこなのかは、調べが不足で、定かには判らなかったが、たしかに、マルクスは『経済学批判要綱』のなかで、ケアリーの作物については、詳細なノートを取っており、ケアリーは「北米大陸で唯一の独創的な経済学者」(マルクス、1959-1965年、Ⅲ・Ⅴ巻他)と評価している。 先に、著者から編集者への贈呈本の第3巻をアメリカの書店から購入(サイン本として紹介したもの)。その後、崇文荘より1,2巻を購入。これも献呈本であるが、図書館への献呈で、Ex-Library本である。 (参考文献)
(H18.8.1記.H21.6.20参考文献表記統一のための変更) |