都会からの星空観望記 > 波照間島旅行記

波照間島 星見旅行記


このサイトは天体写真の世界に移動しました

この波照間島ページは波照間島 南十字星に移動しました

波照間の町並み

 波照間島は、東経123度47分、北緯24度07分に位置する島で、有人島としては日本最南端の島です。日本地図を見ると沖縄本島よりずっと南、西表島の少し南に載っています。日本から探すよりも台湾の東を見た方が早そうです。
この島は、南十字星が国内で最もよく見える場所として有名です。今回私も「南十字星を見るぞー!」ということで、急遽行くことになりました。
 ちなみに「波照間」とは「果てのウルマ(サンゴ礁)」という意味だそうです。なかなか趣き深い地名ですね。


<交通>

 波照間島には、石垣島から船または航空機で行くことになります。まず石垣島に行く必要があるので、私は関西空港からANAの直行便で石垣島へ飛びました。

 石垣島から波照間島へは、船で行くのが一般的のようです。航空機ですと便数も限られていますし、小型機ですので荷物制限もあるようです。重い機材をお持ちの場合は避けた方がよさそうです。
船にはフェリーと高速船があります。高速船の方が時間的にも余裕ができるので、こちらの利用者が多くなっていました(石垣から波照間まで1時間ほどでした)。

高速船

石垣島からの高速船
帰りの写真です。行きは小雨模様でした。

 この高速船とても揺れました。往路は天気が悪かったのもあるのですが、海が荒れているにもかかわらず、すごい速度で航行してくれます。トランクケースが甲板で踊っていました。私は船室でグタァーっとしていました(笑)。

<波照間での宿>

 波照間に船が着くと、港にはお世話になる宿の方が迎えに来てくれていました。
今回お世話になった宿は「星空荘」です。波照間には数軒民宿があります。どの民宿も予約時に連絡しておくと、港まで迎えに来てくれるそうです。港から歩いても20分ぐらいの距離ですが、荷物があると大変ですので、前もって連絡しておくのが良さそうです。

 宿に着いて周りを見渡した第一印象は「何もないなぁ・・・」というものでした。またその後、部屋に案内されてまず思ったことは・・・
   「凄い所に来てしまった!」
というのが本音でした(笑)。
部屋は8畳ぐらいの和室でした。お世辞にも綺麗とは言えず、窓も小さいので監禁部屋のような印象でした(ごめんなさい民宿の方)。
ちなみにテレビはコイン式。エアコンもコインを入れると動作するものでした。
後で知ったのですが、隣の部屋は洋間でした。こちらの方が若干綺麗でした。   

お世話になった星空荘

 少し宿の情報を書いておくと、お風呂はシャワーのみでした。私が泊まったのは写真の建物ですが、隣の建物の部屋にはバストイレ付きの部屋もあるそうです。綺麗好き(?)の方はこちらが良いかも。
民宿のスタッフの方は、とても話しかけやすい方々で、あったかい感じがしました。「また、波照間に来たいなぁ」と思うのも、スタッフの方々のお陰でしょう。

<波照間の家並>

 部屋に入って荷物を置いてから、早速街中を散策してみました。宿の前はちょっとした広場になっており、小さなガソリンスタンドがあります。民宿の辺りが一番の繁華街(?)のようで人も車もたまに通ります。路地を歩くと沖縄らしい石垣の塀の家々が並んでいます。そんな風景を見ていると「離島に来たんだな」ということを実感できました。

 波照間島は島の中央から北寄りに集落が形成されており、島の南はサトウキビ畑となっています。島には山等の起伏もほとんどなく、てくてく歩くのには好都合です。歩いていると、何もないけど都会にはない不思議な雰囲気を味わえる島です。リゾート目的の人は辛そうですが、心からゆったりしたい人にはお勧めの場所だと思います。

波照間の道

南にまっすぐ続く道
両側はサトウキビ畑でした

 また、波照間にはいくつか小さな売店があります。ちょっとした食料品や飲物、それに乾電池も売っていました。赤道儀の電池の心配はしなくて良さそうです。ただカメラ用のリチウム電池等はなさそうでしたので、持参した方がよいと思います。
郵便局もありました。キャッシュコーナーもあるので便利です。荷物が重くなったら郵パックで送るのもいいかもしれませんね。


<観光名所>

 まず私が行ったのは、日本最南端の西浜ビーチ。宿から歩いて20分ほどです。白い砂が気持ち良く、人もほとんどいないので、広い砂浜を独り占めできます。海水浴をしている人も見受けられました。

 その後は、やっぱり日本最南端の碑がある高那崎です(ここはちょっと遠いので自転車で行きました)。この碑の写真だけはご存じの方も多いのではないでしょうか?離島ツアーの観光客が大勢いて、記念写真を撮っていました。最南端記念スポットですね。

最南端の碑

日本最南端の碑
思ったより小さかった

 次は波照間と言えば「星空!」ということで、普段天文に興味がない人も必ず行くのが「星空観測タワー」です(ずっと昔の天文ガイドの表紙にこのタワーを前景にした写真が載っていましたよね)。
この施設は昼間も開いていますが、やはり望遠鏡で観望させてくれる夜が人気です。この施設は高那崎の近くにあり、宿からは遠いので宿の送迎を利用することになります。送迎は有料でした(500円でした。施設利用料は300円)。私もあいにくの空模様でしたが、せっかく来たので行ってみました。
 さすがにこの日は、全天雲なので、人もほとんど参加されていず、貸し切り状態でした。施設自体は3階建で、屋上にドームがあります。ドーム以外の施設は・・・天文ファンにはあまり興味がわかないものだと思います(笑)。
ドームの中には西村製作所の20センチ屈折が鎮座しています。これで見る星空に憧れて、私は曇天の中やってきてしまったわけです(望遠鏡とっても大きかった)。

※どんなに大きな望遠鏡でも、全天が曇空では星は見えません(一緒に見に来ていた方々は見えると思っていたそうです)。行く時は注意しましょうね。

 施設の係の方は、とても親切で感じのよい方でした。全く星が見えていないにも関わらず、ドームを開けてくれ、曇り空の切れ目を探してくれました。この時、ラッキーにも少し雲が晴れ、木星が顔を出しました。係の方が素早く望遠鏡に導入してくれ、波照間での木星を少しの間観望できました。この望遠鏡で覗く木星はなかなかのものでした。気圧配置の関係で気流はそれほど良くなさそうでしたが、木星面の赤道縞はもちろん、南北の温帯縞も確認できました。望遠鏡の色消しも良好なようで、ガリレオ衛星もスキッとした像を見せてくれました(もう少し見たかった・・・)。

20センチ屈折

星空タワーの20センチ屈折
迫力です。波照間に行ったら是非どうぞ

 また、この後、土星も薄雲越しに見せてくれたのですが、さすがにこちらは低空と気流の悪さのため「カッシニ空隙が確認できるかな?」という程度でした。条件の良い日に行って、エンケ空隙を見てみたいものです。

 それにしてもこの星空観測タワーの運営には感心させられました。月曜日の休み以外は、毎日観望させてくれるのです。係員さんが南天の星座の見つけ方も教えてくれます。こんなに皆に開放して利用されている公共天文台は他にないのでは?地域の自治体が運営している天文施設には、是非見習って欲しい所です。「こんなセンターがあれば天文への理解も進むのにな」と思った私です。


<波照間島の天候>

 気になる波照間島の天候ですが、私が行った時の天気は「曇時々晴」でした。センターの方にお伺いすると、波照間は天候が安定せず、一晩中晴れることは稀なことのようです。5月のGWが毎年比較的晴天が続くそうですが、今年は満月ですしねぇ。GWを過ぎると梅雨に入り、まとまった雨が続くそうです。7月頃安定するようですが、夜はどこからともなく雲が出て、やはり一晩中は晴れない日が多いそうです。
星空が良くても晴天率がこれほど低いと考えものです。はるばる撮影に来たものの、曇って星が見えないとショックですものね(笑)。
ちなみにこの日の日中の気温は27度。夜は22度程度でした。7月を過ぎると蚊も飛ばないほど暑くなるそうです。日焼け止めは必須でしょう。


<星空観望>

 やっと星空観望の記事です(笑)。
 夕方頃空を見上げると、雲がほとんど全天を占めている状態。「無理かなぁ」と思いつつ、星見道具の準備だけして食事をしていました。食事が終わると、雲間から少し星が見えます。普段だったら諦めるくらいですが、今日見れなかったら終わりです。荷物を担いで、昼間に目星を付けていた場所まで行きました。

 波照間の夜はとても暗いです。集落を抜けると文字どおり真っ暗です。夜の移動は真っ暗やみの中を歩いて行くことになります(自転車貸し出しは夕方まで)。小さな懐中電灯は携行しておきましょう。また、星を見に行く時には、民宿の方にひと声かけていきましょう。怪しまれたら嫌ですものね(笑)。

 星空荘から歩いて15分ぐらいの道路脇に機材をセッティングし、雲が晴れるのを待ちました。昼間は気付かなかったのですが、東方向に燈台があり、こちらをクルッと照らしてくれます。かなり明るいです。もう少し下ると燈台の光が直接来ない所はありますが、低空には燈台の光が走るので、東の低空の撮影は難しそうでした。燈台は島の中央東よりにあるので、東を撮影したい時は燈台を越えて行かないと無理そうです。燈台まではかなりの距離があるので、徒歩では苦しいと思います。

 23時頃になると空が少し晴れてきました。北を見ると北極星がかなり低い位置で光っています。北斗七星もいつもよりずっと低くに見えます。南方向には、うす雲ごしにケンタウルス座が見えています。南十字座はその右下にあるはずですが・・・見えません(涙)。
全天の様子は、東方向は燈台の明かりで低空は光が走ってしまいます。北方向は、案外明るく20度付近までは光害があります。ひょっとすると石垣島の明かりかもしれません。西の方向は、少し集落の明かりがありますが、気になるほどでもありませんでした。それに比べて南方向は真っ暗です。畑と海しかないので真っ暗です。真南は水平線まで見えています。これなら条件さえ良ければ、南十字も見れそうです。このとき気温23度、湿度90%でした。

 24時頃。南天の一部に雲間ができ、ケンタウルス座全景が綺麗に見えてきました。オメガ星団は、かなり高い位置にありました(大阪では地上すれすれなのに・・・)。肝心の南十字は低空の透明度が悪くて見えません。なんとか一番上のγ星(ガクルックス)が見えたくらいです。眼視では無理でしたので、ダメもとで写真を撮ってみました。するとなんとか写っていました。少しわかりにくいですが、下に載せておきます。わかるでしょうか?南十字座(ちょっと一番下の星がスキャンで薄いですが・・・)。
宿の方の話では「南十字見たよー」と言って帰られる方の半分くらいは、ケンタウルス座の星の並びを南十字と思って帰られるそうです。行かれる時は、事前に星座を調べておいた方が良さそうですね(笑)。

ケンタウルスと南十字

ケンタウルス座と南十字座全景です
中央下の右寄りに南十字座が写りました。一番下のアクルックスがWeb上ではわからないかも。
また中央下部には、α、βケンタウリが写りました。
下の案内図と照らし合わせるとわかりやすいと思います

案内図

 1時頃になると、夜空に晴れ間ができました。まず眼視で観望してみました。さそり座、いて座付近の天の川は、白く濃く見え、空の暗さを感じさせてくれました。ただ、海が近いのと標高が低いためか、空の透明感はそれほどでもない気がしました。高山で見る透明感溢れる天の川とは、また違った天の川でした。
そこで6センチのガイド鏡を使って観望してみました。主要なメシエ天体を見たところ、さすがによく見えます。M8は眼視でも十分確認できましたが、望遠鏡を使うと星雲部分がぼんやり見えます。ただやはり高山で見た像と比べると、背景とのコントラストはもう一つの気がしました。空の条件が悪かったのかもしれません。
また、恒星を強拡大すると綺麗な回折リングが見えました。さすがに4重、5重までは見えませんでしたが、それでも安定した像でボンヤリ眺めてしまいました。南中過ぎた木星も見たところ、こちらも揺らぎのない像。シーイングは噂どおりの良さでした。この時、気温を測ってみると気温22度、湿度70%でした。観望はじめた時より、湿度が低くなっていました。どうも北風が吹き出してから、湿度が下がったような気がします。それでもかなりの高湿度ですので、レンズの夜露対策は必要でしょう。

 3時過ぎ。さそり座といて座が南高く昇ります。さそり座があの高さに位置するのが、不思議な気もするくらいです。何枚か主要な天体を撮影し、いて座の下方も撮ろうとしたところに雲が急に張り出し、撤収となりました。

さそり座といて座

南天高く駆け上る「さそり座」と「いて座」
本州よりもずっと高く見えます

 波照間の夜空を考えると「暗い」ということがまず言えると思います。ただ透明度が悪かったためか、星の見え方はそれほど強烈なものではありませんでした。柔らかく見えているという感じで、それほど数は見えていないような気がしました。
 また、話題の南十字ですが、地元の方に聞くと見えるのは、低空の透明度が良い僅かの日だけだそうです。今年に入って5回しか見れていないとのこと(南十字が見えるのは2月から6月頃まで)。どうも南方向は海があるので、湿度の関係から透明度がとても悪くなるようです。そのため南十字のα星(アクルックス)が低すぎて見えないようです(明るい星なんですが)。
波照間のような環境で、標高が高いところで星が見れれば、とてもすごい星空が観れるんでしょうねー。
M8付近の銀河

M8、M20付近の銀河
今回の波照間でのベストショットがこれでした


<帰路>

 帰りは民宿の方に港まで送ってもらって、高速船に乗り込みました。帰りは行きと違って嘘のような晴天。もう一日いたかったなぁ。高速船もそれほど揺れず、ご機嫌でした。

 石垣空港からは、飛行機で関西空港へ飛び帰ってきました。関空に着いた時、人の多さにグッタリでした。波照間が恋しいです(笑)。

石垣空港

石垣空港
小さな空港なので、人があふれてます


<つぶやき>

 初めての波照間島。最初着いた時は「なんだここぉ〜!」と驚きましたが、時間が経つとともに、身体が波照間の空気に馴染んでいきました。何もない環境が心を落ち着かせるようで、こうやってパソコンに向かっている自分が、波照間では不思議なことのように感じられました。
宿から少し歩けば、素晴らしい星空。こんなに素敵な星見環境は今の日本では貴重なものでしょう。今度は双眼鏡だけ持って、身軽な身なりで訪れてみたい波照間です。


<最後に>

 波照間島は観光地ではなく、島の人々が暮らす生活の場所です。
 島の人々は気さくで、夜星を見ていると気楽に声をかけてくれ、単車のライトを消すなどして気を使ってくれます。こんな素朴な環境があるのも、昔から受け継がれたルールを島の人が守っているからだと思います。私たち旅行者は、そのルールを尊重して波照間を楽しまなければなりません。
また、天文ファンは夜中に行動するので怪しまれがちです。星見に行く前には、宿の方に声をかける等して、安心してもらうことも大切だと思います。星見中に声をかけられたら明るく応対して、お互い安心したいものです。地元の方は天体観測に理解があるようで、星を見ながらお話しすると「あっちの方がよく見えるよー」と教えてくれました。挨拶は忘れずしたいものですね。
最後に当たり前のことですが、ゴミは持ち帰りましょう。昼間道を歩いていると、道路脇に結構ゴミが落ちていて少し興醒めしました。素晴らしいこの環境を守るためにも、今後来る天文ファンのためにも、マナーは守っていきたいものです。

掲載画像の著作権は撮影者が所有しています。画像の無断転載・使用(個人的に楽しむ場合を除く)はご遠慮ください。

トップページへ