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特定非営利活動法人奈良県自閉症協会

インクルーシブな学校に!」

堀 智晴(インクルーシブ(共生)教育研究所
               
 2007年度から日本では、特殊教育から特別支援教育に転換しました。いま10年目 を迎えています。日本の教育はインクルーシブ教育に転換してきたでしょうか。残 念ながらそうではありません。その反対の方向、インクルーシブ教育とは逆の方向、 分離・別学の方向に進んでいます。障害のある子どもたちが、どんどん特別支援学 級と特別支援学校に入っています。本当に残念でなりません。
 私は日本とイタリアの教育現場の実践に学んで、障害児教育の実践研究をしてき ました。イタリアにはもう今では全国で特別支援学校は10校もなく、特別支援学級 もありません。みんなと同じクラスで、支援を受けながら子どもたちは共に学んで います。日本では子どもの数が減少している中で、特別支援学校と特別支援学級に 在籍する子どもの数がどんどん増えているのです。
 なぜ、こうなるのでしょうか。
 それは、特別支援教育の考え方に根本的な問題があるからです。特別支援教育は、 障害のある子どもと支援を必要とする子どもの教育です。だから、その子どもたち に力をつけてその子自身を育てるのは当然です。しかし、その子自身を育てるため には他児との育ち合いが不可欠であるという考え方が特別支援教育には欠落してい ます。障害のある子の教育のために障害のない子の教育と分けて考えるのはもとも と間違いです。支援ができないので分けるといいますが、そんなことはありません。 同じ場で学ぶ中で支援を受けることができるはずです。むしろ他児と同じ場で生活 し学ぶことによって支援の在り方も変わるし子ども同士の人間としての育ち合いが できるのです。
 特別支援教育は自立と社会参加をめざしていると文科省の定義には書いてありま す。もし、そのように考えるならば、そのためにこそ障害のある子もない子も共に 育つ必要があります。分けてはなりません。自立と共生はワンセットなのです。  今、どんな子どもにも居場所のある学校として注目されている『みんなの学校』 の大阪市立大空小学校には、特別支援学級もありません。障害のある子も一人の 子どもとしてみんなの中で通常学級で育ち合っています。もちろん先生やボラン ティアが配慮の必要な子どもにはつかず離れず見守り支援しています。ほったら かしにはしていません。そして、何よりも大切にしていることは子ども同士の助 け合い支え合いです。同じ場で学ぶことによって手助けし合う関係が自然なもの になっています。子どもたちの育ち合いを私は10年間拝見してきました。
 日本の学校教育はインクルーシブ教育と逆の方向に進んでいます。このことを 私たちはどのように理解するか深く考え直す必要があります。学齢期こそ、子ど もたちが仲間の中で自分をありのまま表現し、そこでいろんなことを体験し、ト ラブルや支え合いの経験をすることこそが大事だと思います。学校も一つの社会 なのです。
 それでも、関西では、障害者権利条約の批准と障害者差別解消法の施行を契機 に、共に学ぶ実践が少しずつ取り組まれるようになってきました。そして、共に 学ぶ実践に挑戦すると通常学級のこれまでの実践の見直しを迫られることになり ます。それは障害のあるなしに関係なく学校教育の見直しにつながっていきます。 分離・別学の現状を直視しつつ、インクルージョンの理念をめざして運動と日々 の実践を積み重ねていくことが今求められています。

きずなへ