アジア・アウトリーチ・AR239
前を見て前進する 〜コロナ禍下の宣教〜

アジア・アウトリーチ・マレーシア 牧師  

      ケヴィン・イェスダサン  

 生きていれば落胆する時もあります。難しい時にも信仰によって前に進むことはできます。我々は人生の歩みを導 いてくださる神様を知っていて、この方を信頼できるからです。新型コロナウィルス感染拡大によって設けられてい る隔離の影響によって、まるで拘留されているような、どこにも動けない状況に置かれている人は少なくないでしょ う。次に来ることが何なのかは不確定です。また、どのような未来が待っているのかも未知数でしょう。パンデミッ ク前の普通の状態に戻りつつありますが、まだしばらく待たなければならない状況のようです。それでも前に進む選 択を今日から始めるべきです。多くの人は、普通の生活に戻ったのならば、あれをしよう、これをしようと考えるか も知れません。しかし、今置かれているこの状況こそが今日であり、それを直視して前に進もうとする方が真実だと 考えます。

 過去二年間は、国々の国境が閉ざされ、あらゆる種類の旅が大幅に制限されました。宣教地を視察する我々の計画 も中断されたのです。次回の訪問予定を立てられないまま延期せざるをえなかったのです。研修プログラムも中止 されました。2019 年の我々は、いったいいつまで今回のパンデミックが続くのかがまったく分かりませんでした。 2020 年にはできなかったことが、きっと2021 年にできると気持ちを切り替えましたが、2021 年になっても新型 コロナウィルスによる感染拡大は収まることがなく、我々の希望は失われました。

 いかなる状況でも、神様は我々に対してご計画と目的をもっておられます。宣教地とつながる手段としてZOOM を使うようになりました。これによって、オンラインで会議や研修会を開くことができるようになりました。神様は このような時のために準備しておられたのだと信じています。感染症が広がる前に、オンラインでつながるプラット フォームであるWhatsApp やZOOM やLINE などが開発されたのです。今日、日曜礼拝のメッセージはインター ネットを通じて世界中に届けることができます。地上における宣教活動のために、神様が設けてくださった方法は実 にすばらしいのです。

 アジア・アウトリーチ・マレーシアの同労者たちは、パンデミックが宣教命令を果たす妨げにならないようにと チャレンジしてくれました。混乱や落胆によって途方にくれている世界に神様の愛を伝え、宣教する方法と手段を彼 らは見つけたのです。世界は恐れと病が広がっているのに、彼らのあきらめない前向きな姿を見た世界は不思議に思っ たはずです。確かに、同労者の中には新型コロナウィルスに感染し、重症化した人もいました。そして、周りの人た ちが感染したことを知って気落ちした人もいました。力のなさを痛感することは、人間として普通の反応ではないで しょうか。しかし、マレーシアの同労者たちが涙ながらに話し、我々は彼らとつながり続けたのです。私た ちは互いに祈り、励まし合いました。

 「ですから、あなたがたは、今しているとおり、
        互いに励まし合い、互いに徳を高め合いなさい。」
(Ⅰテサロニケ5:11)

 パンデミックの最中にあったいくつかの必要の内、特に緊急的な必要は食料でした。見捨てられ ている人や飢えている人々に対して、食べ物を与え、少しばかりの安心を提供できたことに、神様を賛美し ます。食糧支援はパンデミックの中にあって我々の最優先事項でした。しかし今でも飢えている人は多いので、まだ 表面的にしか支援できていないのが現状です。支援が行き届いていないのは、ロックダウンによって地域間での往来 が大幅に制限されていることが一つの原因です。我々の同労者たちは疲れることなく働き続けています。大きな集会 が制限されているので、小さなグループになって集まっています。これは自分たちを感染症から守る方法でもありま す。ある国においては、都市封鎖がとても厳しく、外に出ることすら禁じられました。そのような中、2021 年9 月 以降、インドやネパール、ベトナム、ミャンマー、フィリピンそして東マレーシアといった地域に数千人という規模 で食料支援を続けています。現地で働くスタッフにとって、配給するべき食料をすみやかに受け取ることは難しい ようです。自分たちには交通手段がないこともあり、公共の交通機関やサービスに頼る以外に方法がないのです。し かし、パンデミックによって公共交通機関は厳しい制限を受け、まったく利用できない場合もありました。自転車や バイクで移動する現地スタッフもいます。ある村で働く牧師は、中古で購入したバイクを20 年以上も乗り続けてい ます。このバイクの状態が気になるところですが……。

 仕事がなく収入のない人も多くいます。多くの企業は閉鎖され、たくさんの農家は被害を受けました。世帯主が死 んでしまうこともあり、そのため家族は大変苦しみます。ある子どもたちは、両親をなくして、孤児になってしまい ました。悲しみと苦しみに溢れている社会と、傷ついている世界に対して、神様の愛を伝える機会を模索しています。 肉体的な飢えが満たされる以上に、霊的な飢えをキリストによって満たさなければなりません。食糧支援とともに福 音を伝えています。そして、支援を受け取る人々と個人的に接して働いています。数週の間に受洗する人々が与えら れました。これは多くの人々が、神様を捜しているからではないでしょうか。その飢え渇きに対して、神様の愛を伝 えています。

 前に進み、神様が新しいことをなさるのを期待しようではありませんか。神様が与えてくださっている魂を愛して 受け入れようではありませんか。将来に対する幻を掲げて、神様がすばらしいご計画をもっておられると信じようでは ありませんか。救われるべき世界に対して、私たちの最善を与え続けようではありませんか。

 「すると、王は彼らに答えて言います。『まことに、あなたがたに告げます。あなたがたが、これらのわたしの兄弟 たち、しかも最も小さい者たちのひとりにしたのは、わたしにしたのです。』」(マタイ25:40)

 前を向いてはいるけれども、前進しない者とならないように気を付けましょう。障害は成長を促し、神様の平安を 経験できる機会として用いられるはずです。

 「見よ。わたしは新しい事をする。今、もうそれが起ころうとしている。
あなたがたは、それを知らないのか。確 かに、わたしは荒野に道を、荒地に川を設ける。」
(イザヤ書43:19)




アジア・アウトリーチ・ジャパン・・・アジア・リポート No.239

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APRIL - JUNE 2022.