シュークリーム

 

 

シュークリームあるいはクリームパフ、プロフィトロールの名でレシピを最初に記した料理書は1884年刊のボストン・クッキングスクールから出たクックブックである。
合衆国では
1851年のレストランのメニューの中にクリームパフの名が残っている。イギリスではプロフィトロール( profiteroleprophitrole, profitrolle, profiterolle )と呼ばれ、フランスでは1600年代にプロフィトロールの名でポタージュ( Potage de profiteolles 又はprofiterolles )の中に入れる小さな乾燥したブレッドとして紹介されている。
ギリシャでは
Prophiterólと言い、トルコ、イタリアではボールに入れて上にチョコレートソース、ホイップクリームをかける。さまざまな形と名前で我々の目の前に現れる
シュークリームとは一体どのような生い立ちを持つのであろうか。

最近になってシュークリームを紹介した書物がある。アントニー・ローリー(Anthony Rowley)著の『美食の歴史( A table ! La fête gastronomique )』である。
氏はその中でランスト・ド・カスト
Lancelot de Casteau1500s – 1613、ベルギー人にしてリエージュの三人の司教君主に仕えた ) が紹介したシュークリームの皮は
今日にも立派に通用するレシピであると述べている。カスト
の『料理入門( De Casteau's book Ouverture de cuisine, 1604 右 )の中でシュークリームの皮とおぼしき
レシピを次に取り上げた。

ドーナッツ又はフリッターのペイストリィ( Pour faire paste de bugnolle ou friture


クリームと少量のバターを器に入れる。火にかけ小麦粉を入れてペイスト状にする。卵4個を割り入れ木杓子でよく混ぜる。さらに4個入れる、
ペイストが濃いポリッジのようになるまで混ぜる。ペイストが柔らかくなるまで卵を入れる。塩を抜いたバターが熱くなるまで火にかける。
銀のスプーンでパイストをウズラ卵大の大きさに取り、一度に
1820個、バターの中に落とす。穴の開いた杓子で返し、生地に火が入るまで
クックする。取り出す。生地がしぼんでしまうようなら戻して、よく火が通るまでクックする。


これはベニエ(
Beignet である。ベニエには二種類ある。シュー生地を揚げたイタリアのツェッポレ( Zeppole ) や、ドイツのシュプリッツクーヘン
( Spritzkuchen )
と、これとは別にイースト生地を揚げたタイプがある。フランスのブール・ド・ベルラン( boules de Berlin )と
ポーランドのポンチキ、ポルトガルのボーラ・デ・ベルリン(
Bola de Berlim )、ドイツでは果物の入ったものをベニエと呼び、
入っていないものをクラップフェン
( Krapfen )と呼ぶ。

 

因みに、1961年刊のThe New York Times Cook Book ( Craig Claiborne ) のクリーム・パフ・シェル( Cream Puff Shell, 531page )のレシピには;クリーム・パフ・ペイストは
焼くだけではなく、ディープフライすると空気を含んだベニエができるとある。

今のところカスト―がシュークリームの最初のレシピを書いたようだが、それにしても何ともややこしい、ルーツを辿ることがむつかしいレシピではある。

1604年に早くもシュークリームの皮のレシピがあったとは、それも今日の内容と変わらないとは、驚きだ。

 

 

参考文献

 

Anthony RowleyA Table ! La fete gastronomique

Craig Claiborne, The New York Times Cook Book 1961