ヨーロッパの料理書を翻訳していると、我々日本人の想像しているヨーロッパ社会とは異なった姿に遭遇することがある。それは目からウロコの事柄であったり、まさかと思う意外な世界であったりと、そんな事実に出合えることは、一年に1-2度の稀なことだが。その時はもう天にも昇る気分である。恐らく頭の中にはモルヒネの何倍もの脳内ホルモンが分泌されていることだろう。
しかしほとんどの場合、空を跳ねるような気分は、2-3分で消滅する。詳しく慎重に調べれば、園芸家や医学、薬学、動物学等の料理以外の方面の方々からすれば、「そんなことはこの世界ではとっくに知られた
”常識 ”。」だったりして、すぐに気持ちは消沈するのだけれど、それでも何とか生き残った数少ない ”面白い事実” をご紹介していこうと思う。
ここ (ヨーロッパ社会~シェイクスピアを訪ねて)では、シェイクスピアが生きていた時代背景を写し出す同年代の文献、及びこれより以前の文献を下地に、シェイクスピアの時代に生きた人間の時代性、社会性、環境の中に自らの身を置き、彼が書き残した作品を眺めなおそうと思う。彼が生きていた時代から今の時代を自らの視覚内に捉え、将来の社会の姿を把握できればと思っている。これから引用する文献を下記に、括弧内にその略称を書いておいた。参考にしながら読むと更に面白さが増す。
参考文献
ザ・シェークスピア;坪内逍遙訳、1933
Thomas Tusser.;Fiue Hundred Pointes of Good Husbandrie, 1573
( トーマス・タッサー;ファイブハンドレッド )
William How ; A Proper New Booke of Cookery 1575
( ウイリアム・ホウ;プロパー・ニューブック)
Partridge, John; The treasurie of commodious conceits, & hidden secrets, 1583
( パートリッヂ・ジョン;トレジャリィ )
Gathered by A. W A Book of Cookerye 1591
( エイ・ダブリュ;ブック・オブ・クックァリィ )
Thomas Dawson;The good Huswifes Handmaide for the Kitchin. London, 1594
( トーマス・ドーソン;ハウスワイブズ・ハンドメイド )
Thomas Dawson ;The Good Huswifes Jewell, 1596
( トーマス・ドーソン;ハウスワイブズ・ジュエルズ )
John Gerard; The Herball or Generall Historie of Planets, 1596 ( ジョン・ジェラード; 本草学 )
Hugh Plat; Delightes for Ladies, 1602
( ヒュー・プラット;レディの愉しみ )
Master Lancelot de Casteau, Montios; Ouverture de Cuisine, 1604
( マスター・ランスロット;オープニンブ・ザ・キッチン)
Gervase Markham ; The English Huswife; 1615
( ガーバス・マークハム;イングリシュ・ハウスワイブズ )
Nicolas Culpeper; The English Physitian or An Astrologo-Physical Discourse
of the Vulgar Herbs of this Nation., 1652
( ニコラス・カルペッパー;イングリシュ・フィジシャン )
W.M.; The Compleat Cook 1658
( ダブリュ・エム;コンプリート・ブック )
リア王:Ludwig Devrient as King Lear, probably made for Jean-Francois Ducis'
production in 1769