DRM受信

Since:2006年9月24日
Last Updated:2007年5月14日

1.DRMとは
 DRMとは、Digital Radio Mondialeの略で短波帯や中波帯などにおいて、狭い周波数(通常10kHz幅)の幅を用いて行われているデジタルラジオ放送のことを言います。すでに欧州では、多くの放送局がDRMを行っています。が、日本の近くではなかなか放送がなく、今までは私も興味がありましたが、どうもDRM受信のための設備を作るには腰が重かったという状態でした。ところが、6月からRadio New Zealand Internationalが太平洋向けにDRM放送をスタートしたと聞き、やっとこさ重い腰が上がったと言うことです。DRM放送の特徴はデジタル伝送である事と伝送前に音声データを圧縮している事で、狭いAM放送帯域内でも非常にきれいな音として聞く事ができると言うのが、われわれ受信者側のメリットです。一方放送を送る側も、従来のAM放送で用いていた送信機が若干の改修でそのまま使用できるため、設備投資を抑える事が出来るというメリットがあります。このようなことで、HiFiサウンドが短波で伝送できてしまうのです。

2.DRM受信に必要な機器は
 さて、このDRMを受信するために必要な機器は何かと言いますと、まず以下の我が家での受信時の機器接続の図をご覧ください。

 この図にあるように、IF OUTが付いた受信機、455kHzを12kHzに変換するコンバーター、そして、DRM復調ソフトがインストールされたPCが必要となります。もちろん、アンテナは必要です。私の場合は、ΔLOOP7を使用しています。さて、それぞれのアイテムについてもう少し詳しく説明をしてまいりましょう。

3.受信機について
 通常の短波の受かる受信機で良いのですが、中間周波数の信号を取り出せる事が必要です。通信型受信機の一部には「IF OUT」と言う端子を持ったものもありますが、残念ならが、私が持っている受信機達には、どう見回してもそんなものはありません。そこで、覚悟を決めて2台あるICF-SW7600GRの1台を改造する事にしました。ICF-SW7600GRのLINE OUT(録音端子)はステレオになっています。そのRチャンネルをこのIF OUTにして、Lチャンネルは録音用に音声が出せるようにしました。以下に改造方法を示します。
 しかし、この改造は腕に自信のある方に限ります。あまりお勧めできません。もし壊しても当然ながらメーカーのサービスに依頼する事などできませんから。

(1)IF信号を取り出す:IC201の16番ピンがIF出力です。ここにソースフォロワー回路を空中配線で取り出し、同軸ケーブルを用いてLINE OUT端子部まで持って行きます。この同軸ケーブルですが1.5C-2Vでは太すぎますので、細いものを電線専門店で入手してください。


(2)ジャックにIF信号が出るようにします:C250と言うコンデンサーを外し、R-CHのLINE OUTを浮かせます。この状態で、同軸ケーブルの芯線をC250があった部分の右側のパターンに半田付けします。外被側(GND)はLINE OUTのGNDが接続されている所に半田付けします。


(3)以下の写真が改造後のそれぞれの部分の拡大写真です。左側の写真が上のIC201周辺部の改造、右側の写真がLINE OUT端子部付近の改造になります。下にある基板のランドに改造部分がショートしないように、ビニールテープを何層も貼り付けております。そして下の写真が全景になります。
 



4.コンバーターについて
 受信機から455kHzのIFを取り出す事ができたならば、次に、このコンバーターを作らなくてはなりません。以下が私が設計してみた回路図です。結構シンプルな回路でOKです。この回路図でFIXといたします。
良く聞えていますよ!

 J1から入ってきた中間周波数信号はソースフォロワーで一旦インピーダンスを下げ、隣接局の混信から逃げるために455kHzのセラミックフィルターに通します。私は当初、村田製のCFK455E7と言うメタルケース入りのセラミックフィルター使用していましたが、帯域が広すぎて混信に弱すぎるため変更をする事にしました。なかなか入手し辛いセラミックフィルターですが、。10kHz帯域のDRM信号を通さなくてはならないため、AM放送のDX受信等で使用する3.3kHzフィルターなどではいけません。ブロードなフィルターとなりますが、切れ味は良い方がいいのは当たり前です。できればこのフィルターですが、村田製ですとCFK455F等のサフィックスが"F"のものをお勧めいたします。ちょっと、"E"タイプでは帯域幅が広いように思います。それで、混信対策として"F"タイプを探していたところ、CFK455Fと言うメタルケース入りの特性の良いフィルターをお譲りくださる方がいらっしゃり、それを用いてより混信に強い回路としました。お譲り頂いたN様ありがとうございました。それも上の回路図に反映しております。その後、AN614というバランスドモジュレータのICにより周波数変換をかけます。変換をかけるためには、455kHz-12kHz=443kHz か 455kHz+12kHz=467kHz の周波数を発振する回路が必要です。ここには、やはり村田製のセラミック発振子CSB450Eを使用しました。もともとは450kHzの発振子ですが、発振子と直列に入っているC2を上手く調整すれば、443kHzを発振してくれます。で、変換後の12kHzの信号はオペアンプを用いて適正なレベルとなるように増幅をしてPCに渡すと言うことになります。このオペアンプですが、IFフィルターの交換と同時に、ローノイズタイプのNJM5523Lに変更をしてみましたが、一般品とあまり差を感じませんでした。NJM4558とかNJM4580で十分のようです。
以下にこのコンバーターの中身と外観の写真を示します。VR1は局ごとに調整できるようにつまみをつけました。


5.PCについて
 PCについては、ノート・デスクトップは問いませんが、ノートの方がコンパクトで良いかと存じます。PCにはこのDRM放送をデコードして音声にするためのソフトウェアが必要です。現在、このソフトウェアは次の2種類があります。
 (1)DRM Software Radio (WiNRADiO社)
   このソフトは、以下のURLから購入できます。US$49.95で販売されています。
   http://www.drmrx.org/
 (2)Dream
   このソフトは、大学のプロジェクトでソースコードが開発されており、以下のURLから無償でソースコードは入手可能ですが、パソコンで使用するためには、コンパイラーを用いてそのソースコードをコンパイルする必要があります。ソフトウェア開発のご経験がある方でしたらコンパイルできるでしょう。私は、このDreamを使用しています。
   http://drm.sourceforge.net/
PCですが、マイク入力端子からコンバーターの出力の12kHzのデジタルオーディオストリーミングを入力する事になります。この際、PCのサウンドカードのノイズが少ないものが良いようです。私もノートPCが古くなったので、つい最近PCを新しくしたところサウンドカードのS/Nも良いようで、音が途切れにくくなりました。この点にも注意が必要なようです。

 さて、ソフトもインストールできましたら、あとは、全部の機材を接続します。コンバーターからの12kHzの信号はPCのマイク入力に接続します。この際、音量メータをよく見て過入力や入力不足にならないように、コンバータのオペアンプを用いた増幅器のゲインを調整します。
 以下に我が家での接続した状態の写真を示します。このように、受信機とコンバータはできるだけ近くに配置して、12kHzの変換信号を引き伸ばす方が良いです。真横にPCを置く事もノイズの原因になりますので、ある程度離した方がよいようです。


6.聞きましょう!
 PCでDreamを実行し、受信機とコンバータの電源を入れ、DRM放送をしている周波数を受信します。そうしますと、上手くいけばDreamの画面は以下のようになります。

 中央にある6個の状態表示が、全部緑色の表示になり、メインウィンドウには受信局名が自動的に表示されます。これは、DRM放送には局名などのデータも含んでいるからなのです。SNRはSN比ですが、10dBもあれば十分なようです。フェージングなどによってこの値が刻々と変わるのを眺めていても面白いです。また、下の画面でスペクトルが表示されています。12kHz付近を中心に±5kHzにDRMの信号があることがわかります。

7.受信音は?
 さて上記の状態で受信した Radio New Zealand International の音をお聞きください。局名をクリックしますと再生されると思います。

 で、受信状態が悪化してくるとこのように、途中が歯抜けの音になります。まあ、この歯抜けの受信音でも音になっている部分がハイクオリティーなのはおわかりいただけると思います。

以下に最新の受信音をUPするようにいたします。
●受信日時:2006年11月21日 19:59、周波数:9890kHz、局名:Radio New Zealand International
 20:00前の、ID&ISです。きれいに受信できています。

●受信日時:2007年05月02日 13:02、周波数:15735kHz、局名:Voice of Russia
 Komsomorskからの、Voice of Russia英語放送です。これもきれいに受信できています。


8.感想
 最近近隣のRNZIに加えて、Voice of Russia, Radio Australia等も放送を始めて、Hi-FiサウンドがBCLの短波放送から得られるようになって来ました。これは本当にすばらしい事で、一種のカルチャーショックを覚えてしまいます。しかし、課題だと思うのはDRM放送を国際バンドの真ん中でしていることです。DRM放送をAMで聞きますとジャミングのようになって聞え、当然ながら近接の局はひどい混信を受けます。また、DRM放送のほうも近接のAM局から混信がくればあっという間に聞えなくなります。これについてはDRM用の放送周波数帯と、AM用の放送周波数帯を分けるなどの対策が必要だと思います。今だとまだDRMをやっている局が少ないですから良いですけど、今後例えば中国などが放送を始めたら、ひどい混信状態が予想され何らかの対策の必要性を感じます。
 しかし、このDRM放送というのはフェージングが多少あってもAM放送より非常にきれいな音が聞えます。ただし、混信があったりすると全く聞えなくなるのもDRM放送です。まさにデジタル!0か1か?です。これからも、AM-DXの合間に楽しみで聞いて見たいと思います。


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