[水質]

11.水質変化(1)

<生体を飼育すると>

アクアリウムなのですからなにがしらのお魚やエビなどの生体を飼育することとなります。
このような生体には当然餌を与えます。生き物なんですから人間と同じように代謝を行います。
そうです、食べたら出します・・・・・・。
老廃物は底床上にたまり底床内のバクテリアによって分解されたり、一部は水草の栄養素として吸収されたりしますが、アンモニアは濾過器の生物濾過部分のバクテリアによって分解されることとなります。
このような作用を硝化作用と言い、生物濾過槽のバクテリアによってアンモニアを亜硝酸に、そして硝酸へと酸化させていくのです。

硝酸となったものはそれ以上変化することはなく水槽内に蓄積されることとなります。
この硝化作用のうちアンモニアを亜硝酸に酸化する過程でバクテリアは水素イオンを生成します。
わざと作っているのか出来てしまうのかはバクテリアに聞いてみないと分かりませんが、これが正常な形なのです。
アンモニアが硝酸にまで酸化される内訳を化学式を用いて書いてみますと

NH(アンモニア)+2O(酸素)⇒NO(硝酸イオン)+H(水素イオン)+HO(水)

と言うようになります。
当然水素イオンが生まれてくるわけですから、水素イオン濃度が上がり=ペーハーが低下するという水質の変化を起こすこととなるのです。
ですから、その他の水質を変化させる要因がない場合には(床の問題や濾材の問題)濾過システムをセットすることで、詳しく言えば生物濾過部分を設けることによって水槽内のペーハーは低下するというのが大前提であり、自然なことなのです。

<水草を植栽すると>

次に水草を植えるとどのようになるのでしょうか?
水草は水質を浄化することはあっても悪化させることはないようです。
ただし、購入してきた水草に、なにがしらの薬品がついていたり、巻き付けてあった石綿部分に何かの成分などが残っていて、購入した状態のまま水槽内に持ち込んだような場合には、とんでもない悲劇が起こることがまれにあるようです。
また、スネールと呼ばれる小さな貝の卵などが大量に付着していて、それが水槽内で大量発生してしまうようなことも、よく起こります。
ですから購入してきた水草は水槽内に植える前に、余分な石綿などを綺麗に取り省き、流水にてきれいに洗って、しかも、コケが付着していないとは限りませんので、そのあたりもチェックし、カットするなりして植えるようにしなくてはいけません。
 
水草は生育する上で、根のある物は当然床内に伸びた根から床内の栄養分を吸収し生育します。
また、水槽水に含まれる栄養素も、その葉面から吸収し生育します。
リシアなどの根を持たない浮き草の種類は水中の栄養素を取得することだけで生育します。
水草は栄養素を取得し光合成を行うことによって炭水化物を生成します。
この炭水化物が水草の呼吸のために用いられたり、アミノ酸や脂質になって水草を構成する材料となるようです。
水草は光合成によってブドウ糖を生成します。化学式を用いますと

CO+HO+光エネルギー⇒C12(ブドウ糖)

となります。しかしこのブドウ糖には炭素(C)と水素(H)と酸素(O)しかありません。
それではアミノ酸や脂質はどのようにして作られているのでしょうか?これらには窒素(N)やリン(P)などの元素が必要です。
水草はこれらの元素を取り入れるために底床内や水槽水に存在する硝酸イオン(NO3)やアンモニウムイオン(NH)から取得しています。
水草に吸収された硝酸イオンは還元されてアンモニウムイオンとなりアンモニウムイオンは糖から変化したケトグルタル酸と結びついてアミノ酸の一種であるグルタミン酸となるそうです。
このグルタミン酸を元にして各種アミノ酸や核酸、クロロフィルなどの水草の生長に必要な有機物が生成されるようです。
また、その他に、カリウムや鉄分も重要な栄養素であり、その他の微量元素もその栄養素となります。
 
以上のようなことを水質の面から考えますと、濾過システムによって蓄積されるだけの硝酸(硝酸イオン)や生体から排出される老廃物やアンモニア(アンモニウムイオン)は必要量は違っても水草にとっては大切な栄養素となります。
大きな水槽で、栄養吸収の盛んな有茎草やリシアがたくさんある水槽において、少ない数の小魚などの生体しか飼育していない場合には、濾過における最終蓄積物である硝酸さえもさほど蓄積しないと言うことになります。
このような作用を持って、「水草には水質の浄化作用がある」と言うのです。