[水質]

6.底床における水質の変化(ソイル系)

<アクアソイル>

アクアデザインアマノ(ADA)より発売されている土系の床です。
マレーヤ、アフリカーナ、アマゾニア、の3タイプ(3色)があり、粒の大きさがノーマルタイプとパウダータイプの物があります。
通常はノーマルタイプを使用し、見映えをよくするために前景部分にパウダータイプを使用したりします。
名前からも想像できるように、熱帯雨林のその地域をイメージさせるような色合いで、レイアウトする水草などとのマッチングを考えて使い分けます。
 
ADAの説明では併売されているパワーサンドかパワーサンドスペシャルを一番下にひき、その上にアクアソイルをひきます。
どちらのパワーサンドにもS.M.L.と、粒の大きさの違いがあり、水槽の大きさに合わせて選びます。
このパワーサンドとパワーサンドスペシャルは多孔質の軽石をベースに水草の生育に必要な栄養素を配合させたもので、スペシャルは栄養素となる有機物の配合量を増加させたもので、底床内バクテリアの発生を早める成分もプラスされた物のようです。
(詳しくはADA取り扱いのアクアショップでカタログをもらってください。使用方法などは詳しく解説してあります。)
 
この床を使えば、先ずほとんどの水草を育成することが容易に出来きます。
難易度の高い水草でも、照明や濾過システムの基本的なものが出来ていれば勝手に育っていきます。
ただし、この床は再利用は不可能です。洗えませんし掃除もできません。しかも耐用年数は1年ほどと思った方がいいでしょう。
言うなれば使い捨ての床と言うことになります。(水草のレイアウトなどをほとんど途中変更しないことが前提条件です。言い換えればリセットするたびに新しいものと取り替える、と言うことになります。)
 
この底床は水草を容易に育成できる代わりに多くの特徴も兼ね備えています。
 
先ず、パワーサンドについて。
 
肥料分が含まれている、と言うことは植栽する水草の種類や量によっては、その量を調整する必要があります。
水草水槽における底床内では、底床内のバクテリアの力によってその肥料分を水草が吸収できる形に分解し、それを根を出してきた水草が栄養分として吸収し生育していきます。
水槽セッティング当初はまだ底床内に多くのバクテリアが繁殖しておらず、その溶けだした肥料分を分解することが出来ません。
また、購入したての水草の多くは、まだ根の発育が少なく、物によっては茎だけの物もあります。
その様な状態では溶けだした肥料分は水草のために使われるのではなく、余剰な栄養分としてすべてコケの発生を促します。
特にパワーサンドスペシャルは肥料分が多く、様々な栄養素がプラスされているために、使用に当たっては十分に注意が必要であります。(逆にそれだから水槽の立ち上がりが早くなると言うことでもあります。)
ベテランになるとレイアウトに使用する水草の状態や根張りの状態も良いものを選びますし、場合によっては別の水槽で、ある程度生育させたものを使用します。
また、使用する水草が必要とする肥料分をその水草の生長スピードなどから逆算して、底床に用いる種類や量を決定することが出来ます。
その様な方々にとっては、このパワーサンドはレイアウトの完成を早め、また、多孔質の軽石をベースにしている事による、底床内の通水性の確保や追肥の軽減、バクテリアの早期発生などの利点がフルに発揮され、重宝されているようです。
 
元来、土系の底床を使用する場合においてこのような方にとっては、一度決めたレイアウトを大きく変更するようなことは御法度であり、一番始めにレイアウトする時点ですべてが決定してしまいます。
このようにするには、水草の生育やすべての状況を完成時期から逆算することによって成されるわけで、そう言った意味からは、ベテランの方向けの床であると言えるかもしれません。
しかし、初心者の方の多くはその様な逆算方式で使用できるわけはなく、試行錯誤を繰り返しいろいろとレイアウトをさわったり、水草を植え替えたりするものです。それがまた楽しみであるとも言えるでしょう。
また、その様なことを繰り返していくうちにおのずと色々な水草の特徴やレイアウトのコツを拾得していくものだと思います。
そうなりますと、水草を引き抜くときに、最下部にひいたパワーサンドが生長した根と共に表面に出てきてしまい、そのままにしておきますとコケまみれになって見苦しくなってしまったり、一瞬にして水槽内に細かい土の粉が舞い上がって水質を一変させてしまうようなことも起こってしまいます。
床表面にパワーサンドがたくさん出てしまった場合には、表面に出てしまったパワーサンドをピンセットなどで床内に戻してやったり、取り出したりしなくてはいけません。これがたくさんあったらとても大変な作業となります。
よって、植え替えや差し戻しなどのトリミングをする場合には、細心の注意が必要で、出来る限り底床を巻き上げないようにしなくてはいけません。またそれを回避するために底床内部分(根の部分)を残してカットしてしまう技法はよく使用されるやり方です。
この特徴は言わずとスペシャルタイプの方が大きいのは言うまでもありません。
そう言った特徴を考えますとあまり初心者には向かない物のようにも思えますが、考えようによっては、このような情報をよく理解し、使用する量を調整することによって、そう言った特徴は有利に利用できるものと思います。
 
次にアクアソイル本体について。
 
アクアソイルについての製造段階における細かい情報は得られていません。
その製造方法がどのような物なのか、採取地は一体どこなのか、等々、製造元が明らかにしておられません。(企業秘密として当然かも知れません)
しかしながら多くの方や私の使用経験からいろいろなことが明らかになっていますのであくまで参考意見としてご紹介いたします。
 
先ず、最大の特徴として、セッティング当初、ペーハーを大きく酸性に傾ける働きがあります。
私が知っているだけでもセッティングした翌日、もしくは2〜3日後でペーハーが4.5になったとか、半年以上使用しているがペーハーは6以上になったことがない、など様々な情報が届いております。
実際、私の所でもセッティング当初はかなり極端にペーハーを下げヤマトヌマエビが落ちることもありましたし、ペーハーが6以上には成らなかった経験もあります。(製品のばらつきにもその原因があるようですが・・・)
また、逆にADAの説明にある通りにペーハーや総硬度が推移した、と言う情報もあります。
さらに、同一製品にもばらつきがあるようで、同じ物を数袋購入した所、すべて色が違った、などという情報もありました。
なぜでしょうか?
 
アクアソイルの特長としては先ず、多くの水草が自生している土壌が弱酸性であるため、その性質に近い物を自然界から採取し特殊焼成した底床であることがあげられます。(自生地の土壌を採取しているわけではありません。)
また、水槽内の水質調整の効果もありGH・KH・pHを低く押さえる特徴があります。
次に、コロイド粒子の働きで水中の汚れなどを吸着し、土壌そのものの性質により硬度を低下させる、とあります。
また、弱酸性の水質を再現するためにペーハー5.5〜6.5の酸性土壌であるとされています。(5.5と6.5ではかなり違ってきますが採取地が色々であると言う理由からかもしれません。)
その他には、優れた粒形で空気を含みやすく底床の硬化を防ぐことなどが上げられています。(ADAカタログ参照)
 
土壌を弱酸性にすることは、自生地の環境や水草の根の栄養分吸収力を考えれば納得できることで疑う余地はありません。
問題はどうやら特殊焼成された土壌の性質とコロイド粒子の働きと採取した酸性土壌の度合いによるようです。
カタログには水質データとして「セッティング翌日にpHが5.8にまで低下しTH(GH)やKHも同様に低下。これはアクアソイルの土壌吸着効果に寄るもので・・・云々」とあります。
と言うことは、化学的に言って炭酸水素イオンやカルシウムイオン、マグネシウムイオンを吸着すると言うことであります。
前項でも解説いたしましたように国内においてもその水質にはかなり違いがあります。
水道水においてはペーハーはさほど開きはないように思えますが、総硬度と炭酸水素イオン濃度はどうでしょうか?
 
ちなみに源水の炭酸水素イオン濃度は東北地方では20mg/l平均で、関東、九州地方では40mg/l以上平均だそうです。
これだけを見てもおわかりになるように、いろいろな水質の水を「セッティング翌日にpHが5.8にまで低下しTH(GH)やKHも同様に低下」させることは不可能であります。(全体としては低下させることになりますがペーハーが5.8になるとは言い切れないと言うことです。)
ましてや、地下水や井戸水をおもに使用しておられる地域の方々にとっては、その水質がはっきりと把握していない状況では、この床を用いることによってどのように水質が変化するかは分かりません。(どれぐらい酸性になるかは様々であるはず)
極端ないい方をすれば、採取した土壌が、ペーハー5.5の物と6.5の物とではその結果が大きく変わってしまうことは歴然としています。”これが同一製品においてもばらつきがある”、と言われる原因のように思えます。
 
以上のようなことからこの床は、使用する地域の水質や購入した物がどんなものかによっては、かなり水質を酸性にしてしまう床であるようです。
おそらく、ADA本社での水質データが基準となっていると思われますが、ペーハーに幅のある採取土壌を使用すると言うことからも、ペーハーが〜に成ります、と言うような断定的な販売方法やカタログ記載は遺憾であります。
 
参考までに、このような水質の酸性化に対処するには「頻繁に水換えをして少しでもましになるのをただ待つ」と言うことになります。
また、ADAの提唱する「ネイチャーアクアリウム」ではセッティング当初に生体を投入すると言うことはありませんのでその構築論を理解する必要もあります。(関連ページ True Nature Aquarium
 
ここでは詳しく記述しませんが、これに対処するためにペーハー上昇剤やその他の薬品による対応は禁物です。
水槽内に薬品を投入すると言うことは何がしらの化学反応を起こさせることであって、決して水質の安定には結びつかないことなのです。
極端な状況を回避するために、一時的にやむなく使用せざるを得ない場合を省けば、決して使用するものではありません。
一時的に水質を調整したとしても、おそらく翌日には元に戻っているでしょうし、何がしらの薬品を投入することによって、その成分も分からないような状況では、どのような反応が起こり、どのような結果を招くかは予測できません。
最悪の場合は生体やバクテリアに決定的なダメージを与えてしまうことも、「なきにしもあらず」、であることを認識して頂きたいと思います。
 
次に、よく問題にされるのが「すぐに粒がつぶれてしまい泥のようになる」と言うことがあります。
これにもかなり製品によってばらつきがあるようで、2ヶ月でだめになったと言う方がいたり、1年は大丈夫と仰る方もいらっしゃいます。
当然これに関しましては、その方のメンテナンスやトリミングの際の手法の違い、またはその頻度によっても異なってきますので一概には言えないとは思いますが、焼成している割には簡単に指でつぶせるところを見ますと「しっかりと焼きが入っている」とは言えないようです。(逆に言えばそれが最大の特徴の1つと言えます)
これが前述しましたような効果を引き出すためには仕方がないことなのかは分かりませんが、少なくとも使用した経験からパーワーサンドと併用しなくてはすぐに底床が硬化してしまうようです。
水草水槽ではディスカス水槽とまではいかないまでも水換えを基本に考えています。
平均すれば1ヶ月に3〜4回はすることになるでしょう。(別の所で詳しく表記いたしますが、硝酸濃度の測定データをしっかりと把握されている水槽では一概に1ヶ月に3〜4回とは言えませんが)
繰り返し行われる水換え作業と何十リットルという水圧によって、床は日々締まって行くものなのです。
指で押して簡単につぶれるぐらいの堅さであるなら、すぐにその粒がつぶれていくであろう事は予測できます。
それ故に使い捨てと言われるのかも知れません。
 
いろいろと能書きを書いて参りましたが、このような特長をすべて把握すれば、こと水草育成にかけては、素晴らしい底床であることは誰でもが認めることであります。実際に使用してのその根張りの良さには驚くばかりで、1ヶ月以上経過して落ち着いた状態になりますと自然と弱酸性超軟水の水質を作り出し、初心者でも難種と呼ばれる水草を難なく育成できるようになると言うことは最大のメリットであります。
「ちょっとクセはあるがそれを理解し使いこなせば大きな見方になる」と言うのが私の感想であります。

<アクアプラントサンド・熱帯魚安心サンド>

ニッソーから発売されている土系の茶色い底床です。元祖土系底床でしょうか・・・。
熱帯魚安心サンドは簡単に言えば、近年発売されたアクアプラントサンドの色違い、と言うことになります。
(茶色と黒の違いだと思うのですがなぜか黒い方が高い・・・・。)
 
この底床は製造段階で原料となる土に肥料分をしみこませて作られています。
ADAのパワーサンドとアクアソイルをくっつけた様なものと言うことになるでしょうか。(すごくおおざっぱに言って、と言うことです。)
この底床もやはり水質を弱酸性にし硬度を低く保つ作用がありますが、ADA製品よりかは、そのデメリットは少ないようです。
実際ペーハーを弱酸性に保つ効果は私自身も経験しておりますし、水草の生育に関しては素晴らしいと感じています。
セッティング当初においても、アクアソイルほど酸性に傾くこともありません。(これは製品によるばらつきが少ない、と言うことにも成ると思います。)
ただし、パワーサンドの所でも記述しましたようにセッティング当初の過剰栄養分は必ずコケを発生させます。
頻繁に水換えをしてやらないとガラス面などはすぐにコケだらけになってしまいます。(簡単に除去できますが・・・)
当然土系の底床ですので植え替えやレイアウト変更の時には細心の注意が必要です。
底床が舞い上がると言うことは肥料分も舞い上がるわけで、その様になったときには必ず水換えをしなくてはいけません。
 
アクアソイルとの違いはこちらの方がさらに早く粒がつぶれてしまい粉々になります。よって、底床の硬化も早くなってしまいます。
まさに使い捨てそのものであり、値段の割にはもうちょっと頑張って欲しい気がいたします。
しかし、アクアソイル同様、水草育成においてはその力を遺憾なく発揮します。
初心者の方にとってはセッティング当初の水換えをする労力を惜しまなければ、パワーサンド+アクアソイルよりは扱い安い底床であると言えるかもしれません。