[濾過]

23.最良の濾過システム

さて、これまでのことを色々考え合わせますと、一番単純でデメリットの少ない濾材を用いた濾過が最良の濾過システムであるといえないでしょうか。
濾過とは生体によって排出されるアンモニアや排出物に含まれる有害な物質を、より有害でないものにしていくことさえ出来ればいいのです。
さらに別の項で詳しく書きますが、硝酸を窒素ガスにまで変化させる脱窒素効果を期待するのであれば「物理濾過+連続した多気孔濾材を使用し、酸化バクテリアを飼育し、脱窒素菌の繁殖を期待する」事で全てがまかなえます。
これだけで全てがまかなえるのであれば、それ以上に必要なものはないはずです。
 
ただ、その様なことを各アクアメーカーが解説してしまったらどうなるでしようか?
アクアメーカーは何とかして買ってもらえる、または定期的に購入してもらえる商品を発売したがります。
定期的に購入してもらえる商品があれば、それだけ売り上げも見込めますし安定してきますよね。
しかし、実際にはちゃんとした濾過器と濾材の組み合わせによって全てがまかなえるのですから、その様な宣伝文句に耳を貸す必要はありません。
ただし、場合によっては緊急的な対処のためや水槽セット初期には有効なものもありますので、全てが無用であるとは言いません。
その様なものを使用するに当たっては「何のために、どのような目的で、どのような結果を期待して行うのか」がはっきりしていなくてはいけないと思います。
何となく必ず必要でないものを使用し続けて、それでアクアリウムはお金がかかるというのであれば、誠にこっけいな話であると思います。

お勧めのシステム

わたしの個人的にお勧めする濾過システムはメイン濾過器+プレフィルターという組み合わせです。
プレフィルターというのは、モーター部分を含まない単なる濾材を入れる容器であると思って頂けたらいいかと思います。
市販されているものもかなり安価になってきたようですし、また、自作もちょっとした努力で出来そうなものです。
この組み合わせにすることによって濾過能力は必ず1ランクアップすると考えて良いかと思います。
 
1っの外部濾過器に物理濾材と生物濾材を一緒にセットしますと、ほとんどの場合物理濾材部分が一番下になり、濾過器のメンテナンス時には上にある生物濾材を取り出す必要が生じます。
また、水流が上から下へ行くタイプで、物理濾材が一番上になり、メンテナンスがしやすくなっているものもあるようですが、水流が上から下方向ですと、どうしても各濾材の「しまり」が出てきてしまいます。
ギュッと締まってしまった濾材では、その通水性や溶存酸素量などに問題が出てくる可能性や、濾材自体の耐久性にも問題が出てくる可能性もなきにしもあらずだと考えられます。
その様なことを考えますと、私はどちらかと言えば、水の流れは下から上方向の方が良いように感じています。
 
しかしながら、物理濾材が一番下にあるとすれば、出来れば生物濾材でバクテリアを飼育しているわけですから、さわりたくない訳なのですが、そうはいきません。
しかし、プレフィルターを使用することによって、この容器をメイン濾過器の前段階に配置しそこで物理濾過を行い、その後の水をメイン濾過器の生物濾材に送り込みます。
こうすることによって、生物濾材の量はメインフィルターに目一杯はいることとなり、優れた濾過能力を発揮します。
また、物理濾過に使用するプレフィルターは何に気を使うこともなく、ゴミがたまれば気軽にメンテナンスが出来ます。
これによって、生物濾過部分はプレフィルター部を掃除してもシャワーパイプからの流量が元に戻らなくなるまで、メンテナンスをする必要が無くなります。
この方法によって5年以上、生物濾材のメンテナンスをされていない方もいるそうで、バクテリアの保護にももってこいだと思われます。
ただし、通常1っで良かった濾過器の容器が2つになってしまうと言う欠点はどうしようもありません。
ただ、プレフィルターは物理濾過に使用しますのでメインフィルターのおよそ1/3ほどの容量があれば十分ですので、設置スペースがない方は何とか工夫して容器を自作し、メインフィルターの上にでも設置できるようなものにすれば良いのではないかと思われますので、それぞれのケースに合わせて考えてみられてはいかがかと思います。
 
ここで1っ大切なことがあります。
それは、「我が家の水槽においてどれだけの生物濾材=酸化バクテリアが必要十分な量なのか?」と言うことであります。
以前にも記述しましたように、酸化作用による硝化バクテリアは、それが繁殖及び生きていくための物質が必要です。
簡単に言えば、餌になるアンモニアや亜硝酸が無くては生きていけません。
何かで読んだことがあるのですが「生物濾過におけるバクテリアの過剰発生によって・・・・」と言うのがありました。
しかし、生きて行くだけの物質がない状態ではその様なことは決して起こりません。
それは、何かの原因で既存の酸化バクテリアが死滅してしまったためか、その他のバクテリアの進入によって優劣関係が引き起こされたことと考えられます。
生物濾過において、その水槽に必要な量、すなわち、飼育している生体や餌の量に比例したバクテリアの数しか存在できないのです。
ですから、例え大型水槽であったにせよ、飼育している生体が少数の場合には大量の生物濾材が必要には成りません。
余分な生物濾材の面積は住む者のいない空き家となるのが正しい解釈です。
しかし、一般的に言って、ほとんどのアクアリストが、知らない間にか分かっていても、段々と生体の数が増えていくものです。
ましてや、水槽内で繁殖などを期待していたとしたら、または知らない間に繁殖していたとしたら、生体の数は増えてしまいます。
このように通常では、なかなか生体の数が一定しないのが現状であると思われます。
もしも増えてしまった場合や、意図せず過密飼育になってしまった場合などを考えると、生物濾材は必要十分にセッとしておくのが得策であると思うのです。
それ故に1ランク上の濾過器を購入しましょう、と言うアドバイスも生まれてきたものと思われます。
たくさんの生物濾材によってその濾過能力が保証されるとしたら、または何年に1度かは生物濾材の交換も必要になってくることを考えれば、十二分な量の濾材があることによって、その交換も1/3もしくは1/2ずつの交換で事足りることとなります。
そう言った意味で、わたしは生物濾材は多少多いぐらいの方がいいと考えています。
 
プレフィルターを設置する上で気を付けなければいけない事に、メイン濾過器のモーターの抑揚力があります。
当然の事ながらプレフィルターを設置することによってその抵抗が加わり、モーターには付加がかかります。
多少の流量の低下ならば、こと水草水槽においては強い水流は必要ありませんので、さほど問題にはならないと思いますが水槽の大きさから見て精一杯の濾過器ですと止水域が出来てしまうこともありますので注意が必要です。
出来る限り通水性の良さそうな物理濾材(リング状になったものなど)を選択すればさほど問題はないと思いますがチェックは必要です。
また、極端に流量が落ちる場合にはモーター部を1ランク上のものに交換するなどの処置が必要になりますが、使い込んだ濾過器ですと濾過器内部のモーターの消耗やインペラーと呼ばれる部品などの消耗によって流量が低下している場合もありますので、やってみられるならば、臨機応変に対処して頂きたいと思います。(わたしの経験ではさほど流量に変化はありませんでした・・。)
 
このようなシステムにすることによって、よく言われている「水槽の大きさよりも1ランク上の濾過能力のある濾過器を購入しましょう」と言うことにも、1ランク上の濾過器になると極端に価格が高くなる、と言うデメリットからも逃れられますし、使い回しも可能になります。
また、生体の過密飼育による弊害に悩んでおられる方や頻繁な水換えに追われている方、定期的に水換えが困難な方には最良な濾過システムと成るように思います。
 
また、使用していない外部フィルターや、プレフィルターを購入するよりもバーゲンなどで出ている安価な外部フィルターがあればそれを使用する手もあります。
その様な場合には、生物濾材を投入するメイン濾過器のモーターのみを稼働させプレフィルターになる濾過器のモーターは稼働させないのが通常です。
その場合モーターを稼働させない濾過器のインペラーやその他の水の抵抗になるような部品は全て取り省きます。
逆にメインフィルターのモーターの力不足を感じるような場合にはプレフィルターになる濾過器も稼働させることは出来ますが、この場合2つの濾過器のモーターの抑揚力の違いを見極めなければ、逆にモーターに負担をかける場合もありますので、気を付ける必要があります。
また、メイン濾過器の最上部(濾過の最後の部分)にウールなどを詰め込んでいる場合には、そのウールの目詰まりによって流量が低下する場合もありますので定期的にチェックする必要があります。
 
尚、ここに記述いたしました濾過システムにおいて、自作のプレフィルターやその他の方法は、わたしの個人的な見解をご紹介しただけですので、実践に当たっては必ずご自分の判断にて行って下さい。いかなる事故や問題が起こりましても作者は責任を負いませんのでよろしく御願いいたします。
  
以上、最良な濾過システムについていろいろと考えてみました。
始めにも記述しましたように、濾過にはいろいろな方法があり、今回わたしがご紹介した見解が最も優れているとは思えません。
いろいろな方のご意見を参考にして、「我が家の水槽の、我が家の濾過システム」を一度考えてみるのも良いのではないでしょうか。