[水換えの真意]

32.水質の改善

2つ目の大きな目的として上げられるものは、それまでの水質や条件を改善するために行う水換えです。
これまでにいろいろなことを記述してきましたが、始めからこのようなことを考えていた方であるならば、おそらく、さほど硝酸イオンの蓄積=コケの発生に悩まされることなく水槽を維持管理されているでしょう。
しかし、ほとんどの場合はコケが発生して仕方がない、とか、某らの問題が起きてから気づくものであると思います。
そう言った意味からは、今まで記述してきたことは単なる予習でしかないのかも知れません。
これからが本当の意味での実践となるようです。
 
まず、コケに悩まされていた原因が何であるのかが、おぼろげにでも分かってくれば、それに対しての対処が必要です。
いわゆるこれが水質の改善や今までの状況を変えるために行う水換えと言うことになります。
また、誤って投入してしまった事故的な状況や人為的なミスによる状況の改善も含まれると思います。
 
これらの状況を改善するには最も確実な方法は「リセット」です。始めから作り直すのです。
しかしながら、口で言うのは簡単ですが実際に執り行うと成れば大変な作業となるわけで、おいそれと簡単に出来ることではありません。
ただ、それに出来る限り近いことをすれば確実に状況が変化することは確かなのです。
このような場合に、ちまちまと1/3の水換えを毎日のように繰り返して行く方法もありますが、それはとても時間がかかり、つらくて効果の薄いこととなります。確かに、生体に対しては最も好ましい方法論ではあります。
当然、状況の程度によりますが、ソイル系の底床で半年以上使用していたり、または肥料分をセットしすぎたと思う場合などは迷わず底床を新しくすることをお勧めいたします。
これではほとんどリセットとなってしまいますが、根本的な原因であると思われる、底床の富栄養化や硝酸イオンの蓄積、または老廃物の蓄積、通水性の崩壊は改善されません。
底床を全てを取りだしてセットし直すのが無理なのであれば例え2/3でも新しいものにするのが好ましいと思います。
 
また、大磯やセラミックの底床などで掃除が可能なものであるならば、一度、水草を全て取りだして、底床の大掃除をかねた全換水が最も効果があります。
全換水と言っても実質90%程度しか吸い出せませんから誤解があってはいけませんが換えれる限り換えるという意味です。
その時点でまだ底床がひどく臭ったり、汚れが取り省かれていないようなら取り出せるだけ取りだして洗浄しなくてはいけないでしょう。
こうなれば、またもリセットとほとんど変わらないですね・・・・・。
まっ、これもそうしようとする水槽の状態にもよりますから、底床をさわらないまでも改善される場合もありますので、ケースバイケースと言うことになるでしょう。
 
要するに、濾過システムなどの不備がない限りは、蓄積された物質による原因やその時点での水質に問題があるわけですから、思い切った水換えなどの処置をしなくては改善される見込みが薄いと言うことです。
 
確かに、ある程度の硝酸イオンの蓄積だけならば1/3の水換えを数日間続けることによって改善されるでしょう。
数日間続けるのであれば、半日を費やして全換水をする方が手っ取り早いです。
また、軽い状態ですとコケのカットなどのメンテナンスを施しながら、水草を抜き取ること無しに80%程度の水換えは可能です。
ますますひどくなっている状態であれば、思い切って水草を選別し新しい水草や元気のいい草体のものを新たに追加する方が、事態の改善に大きく貢献します。
 
コケの発生に悩まされている状況を改善するために、そのままの状態で某らの添加剤を使って状況を一変させよう、コケをなくそうという考えは冷静になって考えてみれば、いかに管理者にとって都合のいい、自分勝手な方法であるかが分かると思います。
その様な方法を取ることは往々にして多大なリスクを負い、失敗するかやけになってどぼどぼと添加してしまうか、悲惨な結果や無駄な努力、時間の浪費となってしまいます。
コケも水草の仲間です。何かの添加剤でコケだけが無くなることはあり得ません。
塩素系洗剤をコケの大発生している水槽に添加するのと同じ様な事だと私は思っています。
そうです、コケもなくなりますが全て無くなります・・・・。
 
私は他のページで木酢液の紹介や使用方法を記述しています。
木酢液にしたってそれを添加すればコケが無くなるわけではないのです。
コケが発生しづらい環境の構築に一役買うだけのことです。 どうか誤解しないで下さい。
木酢液には水草に有害なコケなどを寄せ付けないようにするフィトンチッドと呼ばれる免疫剤的な効果と、主成分となる酢酸の効果による殺菌効果があると言われています。
添加しすぎると濾過バクテリアさえ殺菌してしまうおそれがありますので注意が必要です。
 
ただ、確固たる証拠や理論は説明できませんが、定期的な少量の添加をしている時期とそれをやめてしまった時期を比べてみますと、確かにどうしても発生してしまうコケの量に違いがあるように思うのです。
これは私の目で見た感覚によるところが多く「その様に思うだけ」かもしれません。
何度か試してみましたが、やはり添加している方が出てくるコケの量が少ないように感じています。
所詮、木酢液がコケに効くと言ってみた所でこの程度の効果です。
でも、言い替えればそれだから使える添加液なのかも知れません。
基本は何と言っても根本的な環境であることは間違いないのです。
 
全換水を行ったときの注意事項として(記述するまでもありませんが)、生体を水槽に戻す場合には「水あわせ」が必要です。
新しく生体を購入してきたのと同じように扱わなくてはいけません。
また、出来るだけもとの水質(ペーハー及び総硬度)に合わせるようにしなくてはいけませんので、元水とかなりかけ離れた水質になっていた場合などは前日に1/3ほどの水換えをしてから、全換水の作業に入った方が良いでしょう。
通常の場合はじっくりと水あわせをすれば問題はありません。
また、通常の水換えでも元水と水槽水の水質が大きく異なる場合、例えば水槽水は底床の働きでペーハーが6以下なのに、ペーハー7.5の元水で、一挙に1/2以上の水換えを行えば、生体に対してペーハーショックを与えることも考えられます。
(私の経験からは生体がしっかりとした成魚であり日頃から1/2程度の水換えを行っていて、その様な環境の変化に順応している様な場合にはさほど神経質になる必要はないように感じています)
たかが水換えですが、水質の大きな変化は生体に少なからずも影響を与えますので細心の注意と準備も必要かと思います。
その様な環境で飼育をされている方は、全換水と言う手段は最終手段として、1/3の水換えを数日間続けてやる方法の方が望ましいかもしれませんね・・・。
我が家の水槽、水質に合わせて臨機応変な対処が必要と言うことになります。

<まとめ> 

最後に、まとめとして、結果的に水草水槽における水換えとは、生体を硝酸イオンの蓄積から守ることや、ペーハーの低下などによる水質の変化をくい止め安定させようとして行われているものではなく、そう言った弊害が出てくる以前にコケの発生との戦いの為に行っているようです。
多くの場合は水槽水の富栄養化を防ぐために=コケの発生を抑止するために水換えに追われているのが現状となっているのではないでしょうか。
しかし、このような要因は生体の過密飼育をさけ必要最小限の良質な餌を与えることや、水草育成に必要だとされてきた底床内への施肥、そして液体栄養素などの添加剤の使用方法を改善することでその多くの問題から回避できるように思います。
水草水槽における先人達が呪文のように伝え続けている「週に1度の1/3の水換え」や「水換えに勝るもの無し」という言葉の真意は、どうやらここにあるように思います。
濾過が出来上がった水槽において、必ず週に1度の水換えをしていればそんなに大きな問題には直面しないであろう、また、何かあれば先ずは水換えをするように伝えれば最悪の事態は幾分回避できるであろう、と言う思いからであると思います。
理論的な説明がなかったにせよ、間違ったことではないと言うことと、その真意を知ることによって、さらにハイレベルな維持が可能になると思います。
 
また、基本的理念として、水槽という限られた空間における環境を、可能な限り良好に保つためには、その水槽の管理者の努力無くしては決してなしえないと言うことです。
その努力とは、水換えにいそしむ肉体的努力や必要な知識の習得、そしてさらなる研究が必要になってくるわけで、その様な姿勢で臨むことがやがて経験を積むことによって、責任ある生体の管理や水草水槽の維持が成されるものと思います。
熱帯魚はとりあえずペットと呼ばれているようなもので、犬や猫のような確固たる地位を得ていません。
生き物を飼育するという行為に関しては少しも違いはないはずです。
 
水草の育成についても同じです。
園芸愛好家やガーデニング愛好者は一生懸命お世話をします。
それらの趣味や嗜好と何ら変わることはなく、水草水槽というアクアリウムは生体の飼育、水草の育成、アクアリウムの遂行といろいろな要因が複雑に絡み合う非常に贅沢な趣味であるように思います。
これをうまく維持していくためには、それなりに管理者としての責任も多く大変なはずです。
楽して綺麗な水草水槽を楽しみたい方は「水槽レンタル」と言うのがあるのかどうかは知りませんが、その様なものを利用する方がずっと楽であり、本来の目的を達成できるものと思います。
 
しかし、管理者の努力というものは創意工夫と仕組みの理解によってさほど大変なものとは成らないはずです。
現に私は(私が優れた管理者でその方法論が一番だとは決して思っていません)だいたい週に1度ぐらいの水換えをかねたメンテナンスしかしておらず、それに必要な時間はせいぜい30分から1時間程度です。
それでも自分としてはそこそこの水槽を持つことが出来、自分なりに楽しむことが出来ていると思っています。
所詮、私が思うに自分がそれで良ければそれで十分なことであり、誰かに批評批判して頂くものでは無いと思っています。
 
ただその様な状態でも、むやみやたらに水槽の数を増やしてしまってはもともこもありません。
生体の繁殖はとても神秘的でほほえましいものです。
しかし、そればかりを楽しんで後々のことも考えないのは無責任となってしまうでしょう。
 
家族設計は計画的に・・・・いや違った、水槽趣味は計画的に・・・・と言うところでしょうか。