[水換えの真意]

29.水換えの目的

「水換えに勝るもの無し」・・・呪文のように言われているこの言葉の真意たるやいかなるものなのか!
今回はこの水換えという行為について考えていきたいと思います。
 
水草水槽において、と言うよりもアクアリウムにおいて「水換え」という作業はなくては成らないものです。
自然の川では次々と新しい水が上流より流れてきて、安定した水質が保たれています。
当然、豪雨や洪水などの自然災害もあるでしょうが、いずれまたもとの水質へと戻っていくのです。
一方水槽という限られた空間では「安定した水質」と言うものが長きにわたり確実には望めません。(ある程度の範囲で安定しますが・・)
どのような立派な濾過器や濾過システムを持ってしても自然の川と同じ様なことは出来るはずがないのです。
 
一口に水換え、と言ってもいろいろな目的があると思われます。
今やろうとしている水換えがどのような目的のためにしなくてはいけないのか、それが分かってこそ、水換えする量が決まり、そしてそのペース、間隔が決まってくると思います。必要でない水換えは出来るだけさぼりたいですよね・・・。
ここでは基本的に「水草水槽」での水換えについて考えていきます。
 
水換えをする目的には
  1. 生物濾過(硝化菌の作用による)の働きによって生じる水素イオンの蓄積により、酸性化してきた水質を元に戻すため
  2. 硝化菌(酸化菌)によるアンモニアや亜硝酸を酸化させた最終蓄積物質となる硝酸イオンの除去のため
  3. 富栄養化していると見られる水質から余分な栄養素を除去しコケの発生を抑えるため
  4. 大量にコケが発生してしまった水槽の水質を改善させる目的のため
  5. 底床部分の環境改善のため
  6. レイアウト変更や差し戻しなどのトリミングをして底床部分の肥料分や堆積物が大量に水槽水に出てしまったため
  7. ガラス面に付着したコケなどをメンテナンスするためや木酢液などを使用してメンテナンスしたため
  8. 誤った容量の液体肥料や添加剤を使用してしまったなどの人為的ミスを改善するため
  9. 魚病治療のための処置を行ったため
  10. 物理的にゴミやコケを吸い出すため
などなど、これらの他にもいくつもの目的のための水換えがあると思います。
水槽セット初期の状態での水換えは、まだ水が出来ていない=生物濾過が完全に立ち上がっていないために、有毒性のあるアンモニアや亜硝酸の除去がそのほとんどの目的であります。
また、何らかの理由によって今まで順調に機能していた生物濾過が崩壊して、水槽立ち上げ時と同じ様な状態になってしまった場合も同じ目的となってしまいます。
これらのような水質維持初期段階での水換えは頻繁に行わなくてはいけません。
しかし、その間隔と量は?
これは飼育しているお魚と与えている餌とその量と全水量に比例します。
要するに生じるアンモニアや老廃物の量に比例すると言うことで、ここではその濃度が問題となるのです。
わかりやすい判断の仕方としては現在の飼育状況に置いてアンモニアや亜硝酸イオンの蓄積度合いが水換え何日後で警戒数値を示すかが分かっていればその値に成るであろう予定日の前日までに行えば良いと言うことになります。
水槽セット初期の段階を含めアンモニアや亜硝酸が検出されなくなった時点でこの目的のための水換えは終了することとなり、次回以降は硝酸イオン濃度の値を計測しその除去の為などの目的の水換えに変わります。
 
また、水槽立ち上げ初期においては、特殊な例として選んだ底床の作用や濾材の作用によって、日々ペーハーや総硬度が変化するような場合には、それらの変化を和らげるために水換えをしなくては成らない場合もあります。
もし、あわてずじっくりと作り上げていく場合であれば、床による水質の変化が和らいでから本格的な水草水槽を作成したり、お魚を投入するようにすればいいでしょう。
生体を飼育しながらいろいろな条件を考え、または状況を見てミス無く対処していくには、それなりの経験も必要となり、なかなか難しいものです。

<毎日水換えするのは善か悪か>

答えは、「善」です。
しかし、水槽立ち上げ初期に起こるような「白濁り」という状況下でのこととしては「悪」です。
また、毎日全換水と言うような量も「悪」になってしまうでしょう。(お魚の移動などによる生体への影響のため)
出来ることであるならば毎日1/4ほどの水換えを行っていれば最も水質も安定し良好な状態が保たれるものと思われます。
しかしながら、一般人である私達がその様なことを長きにわたって続けていくことが出来るでしょうか?
まず無理ですよね・・・。
もし可能であるならば必要な濾過器も小さいものでも大丈夫ですし、濾材だってたくさん必要でなくなります。
また、多少の過密飼育でも問題ないでしょう。
しかし、誰だって楽して、楽しみたいですからこのようなことは考えたくないですね・・・。
余談ですが、東南アジアのファームなどでは濾過というものは全くなく、全て毎日の水換えで飼育していると言うことだそうです。