[濾過]

19.吸着物質濾材

ここで取り上げる吸着物質による濾過は前項の化学濾過の所で紹介しました。
代表となるものが活性炭や、ゼオライトと呼ばれるものです。
これらはその物質が持ち合わせる吸着作用によって、アンモニアや亜硝酸と言った有害物質を取り省こうとするものです。
言うなれば掃除機のようなものだと思って頂ければいいかと思います。
どのような化学反応や化学式によって吸着作用となるのかは私も詳しくは知りません。

<活性炭>

活性炭はその粒子が小さいと同時に、1つ1つの粒子に微細な空間があって、これらの単位質量に対する表面積がきわめて大きく、そのため、この微細な空間にいろいろなイオンや物質を吸着するのであると考えられます。
これらの物質を濾過に使用すると即効性はないですが確実に有害物質の吸着は行えるようです。
ただし、その吸着効果は一定の期間が過ぎると段々と無くなっていきますし、(微細な空間がいっぱいになる)その吸着された物質は濾過器内に残るわけですから取り替えが必要となります。
その様な取り替えを行わずに放置した場合には、今度はその物質から逆に有害物質を排出してくる、という理論も存在しています。
また、全く逆に活性炭は吸着した物質を排出したりしない、と言う理論もあります。
どちらにしても、私は確認したり実験データーを持っているわけではありませんので、断言は出来ません。
どちらが正しいのかは別にして、その様なはっきりしない状況からは、こまめなメンテナンスと注意が必要となります。
 
一口に活性炭と言っても元になる材質は様々です。
有名なのはヤシガラの活性炭で適量がネットに入れられ数個単位でパックされて販売されています。
非常に安価な価格です。
最近脚光を浴びてきたのが竹炭です。
吸着した物質を排出してしまうのかそうでないのかはどうやら活性炭の種類によって変わってくるように感じています。
安価な物は排出し、高価な物は排出しないのかどうかは分かりませんが出来れば発売元より様々な実験データや情報を公開して頂きたいものです。
また、投入した水槽の状態によっても、その吸着効果の持続性には差が出るはずです。
R/O等を使用した水で維持管理などをしている場合には極端に導電率の低いピュアな飼育水となり吸着する物質の総量も少ないはずです。
 
よってその取り替え期間は一般的には1週間から2週間と言われていますが実際の所は管理者の勘に頼るところとなっているのが現状です

<ゼオライト>

ゼオライトとは吸着効果のある物質ですが、天然物、人工合成物など100種類を越えるものがあるそうです。
天然物は白やベージュや緑色のものなど、産地によってその効果の差も含めて違いがあるようです。
このゼオライトも多孔質体で活性炭のようにその小さな穴にいろいろなイオンや物質を吸着するのだそうです。
よってその穴に入らないものは吸着しないと言う、ゼオライトの分子ふるい作用と言うものがあるようです。
この穴の中には自由に動ける陽イオンが存在しているようで、静電気的な作用によって陰イオンなどを引きつけるようです。
ただし、環境によっては放出と言うことも行うようで、詳しいことはわたしも知りませんが、どのような条件でも同じ効果を示すようではないとのことです。
このゼオライトは再生が可能だそうで、5%程度の食塩水にしばらく(数時間)つけてから乾燥させるだけで、再度利用できるそうです。
ちなみに、天然ゼオライトはイオン交換特性を生かした硬水軟化剤や土壌改良材として多く利用され、合成ゼオライトは石油精製や洗剤の製造などに利用されているそうです。
余談ですが、市販されている麦○石グッズの中にはゼオライトの固まりを「魔法の・・・・」と言ったキャッチコピーで販売しているものもあるようで注意が必要だそうです。
もともと、このゼオライトというものは安価なもので、国内でもたくさんの採取地があるぐらいで、各地の農協などでも販売されているようです。
また、品質にもかなりばらつきがあるようですので、購入されるときには爪でつぶしてみて簡単につぶれてしまうようなものはさけるべきとのことです。
また、農協などでの購入は何10s単位だそうなので、ペットショップにある猫の砂などと言われる物の中で、固まらないものを選んでも代用できるようです。

<まとめ>

以上のようなことから、水換え用の水の前処理として利用したり、生物濾過のバクテリアの繁殖がまだ十分でない濾過立ち上げ初期に使用したりします。
しかし、これらを引き続き使用し続けることはどのように考えても、掛かるランニングコストや交換の手間を考えると得策ではないはずです。
生物濾材に十分なバクテリアが繁殖した濾材とこれらを比較した場合、どちらが有効であり得策であるかはおわかり頂けると思います。
 
このような濾材は先述したような濾過立ち上げ時期にバクテリアが繁殖するまでの間の補助として使用したり、思わぬ事態により、生物濾過が機能していないと判断されるような場合の緊急対応として用いることが適切です。
また、このような物質は濾過槽になくてもその効果は得られますので、非常時に水槽内につり下げたり流木の上などに置いたりするのでも良いと思います。ただし、細かいネットなどに入れて使用しなくてはなりませんが・・・。
最も効果がある期間は活性炭の場合およそ2週間程度が限界ですので早めに撤去するようにした方が良いでしょう。
おそらく、1週間もあればある程度バクテリアも再生して増殖してきますから十分であると思います。

<注意事項> 

大きな欠点として上げられることに、有害物質とされる物質だけを吸着するのではないと言うことがあります。
水草に必要な各種の栄養素やその他の微量元素も吸着しますので、これらの物質を濾材として使い続けると言うことは、いかにお勧めできないか、と言うことが分かって頂けると思います。
 
また、前に登場しましたがこのような吸着効果を用いた製品に、どこへ行っても販売されている麦○石グッズがあります。
どのような成分の物質であるかは例のごとく、どこにも詳しい説明がありませんので不明ですが、何らかの吸着効果のある物質やそれらの反応を起こす物質が混入されているものだと思われます。結構高価な価格ですよね・・・。
固形の濾材タイプのものや石の固まりのようなもの、液体のものなど様々なものがあり、中には「正規のルートのもの」とか、「本物の・・・・」などと言ったキャッチコピーがついたものもあるようです。
と言うことは偽物(例えばゼオライトが正体であるなど)がたくさん横行していると言うことでしょうか?
 
いずれにしても、このようなものを濾材として使用することは活性炭などの効果と同様に、その作用には時間的限度があると想像できます。
ましてや、吸着した物質はそれによって無くなるわけではありませんので、定期的に交換しなくては成りません。
幾分バクテリアの定着は望めますが、それを望むのであれば一般的な生物濾材の方が定期的な交換の必要もなく適切であると思います。
さらに吸着した物質は蓄積していくのですから、必ず濾材の目詰まりを引き起こすでしょう。
 
このような濾材は簡単に綺麗な水を作ることが出来ますが、これを定期的に交換して使用し続けない限り水質の安定化は図れません。
さらに、だからといって安定したバクテリアが存在する生物濾材には取って代われそうにはありません。
アクアメーカーはこのような商品を発売して、使い続けてくれるユーザーが増えることによって、収益の安定化が図られ、売上アップが期待できます。それはアクアショップも同じ事です。
定期的に趣味に対してお金を使うこともとても楽しいものですから、このようなものを濾材として使用することを否定しませんが、「払う代金の割にはその効果はその代金に見合わないもの」と、私は位置づけています。