[水質]

3.塩素を中和する

我が家の水質がある程度把握できれば、アクアリウムに使用するために塩素を中和します。
誰でもが知っているテトラのコントラコロラインを始め様々な物が市販されているようです。
アクアリウムを楽しんでいく上で最も使用するものと言えば、この塩素中和剤ではないでしょうか。
けっこうみなさん塩素を中和することは忘れないようで、しかもたっぷりと入れてしまうこともあって、あっと言う間になくなってしまうのが現状のようです。
塩素(Cl2)は常温では気体の有毒な物質だそうで、たくさん水に溶けていると塩酸や次亜塩素酸を生じ、酸性にしてしまうそうです。
この塩素中和剤の成分は、そのほとんどがハイポ(チオ硫酸ナトリウム、Na2S2O3と言う物のようです。
このハイポは安価なもので、その他の成分を微量加えることによってその商品価値を高め、ハイポの原価とはかけ離れた価格で塩素中和剤として販売されているようです。 ちなみに私の地元では100粒ぐらい入った物が30円です。(ハイポは米粒大の透明な氷砂糖のようなものです。)
 
塩素の除去にはハイポを加えるか、活性炭処理をするか、丸1日バケツに汲み置くなどの処理を施します。
手っ取り早いのはやはりハイポ処理になるでしょうか。
ハイポ処理に必要な量は極めて微量です。水道水中の塩素が1ppmとして、約0.6ppmのハイポを加えれば中和出来ます。
100リットルの水に60mg入れれば良いわけで、60センチの水槽で1/3の水換えをするのであれば、水量が約20リットルほどですから、1回の換水に12mgで十分です。1/3粒でも多いという事になるでしょうか。

ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)が塩素(Cl2)を中和するときの反応式は以下の通りです。
4Cl2+5H2O+Na2S2O3→8HCl+H2SO4 +Na2SO4
チオ硫酸ナトリウムと塩素、水との反応で硫酸(H2SO4)や塩酸(HCl)と言った物質の生成が生じますが、水道水に含まれる塩素濃度の割合から言ってその生成量はごくごくわずかであり何ら問題はありません。
それよりも塩素を完全に除去できずに残留塩素が存在する方が、例えば飼育水にアンモニア(アンモニウムイオン)が存在することによって有害な物質であるクロレラミン(NH2Cl)と言われる化合物の生成が生じる可能性もあるようです。
当然の事ながら残留塩素は濾過バクテリアに重大な影響を与えます。
 
また、塩素濃度に見合わない大量のハイポを投入することも余りよいことではありません。
後述するハイポ溶液を使用するのであれば間違って多くの量を投入して塩素中和したとしてもさほど問題は生じませんが、ハイポの粒をそのまま使用して塩素中和する場合には、比較的水量の多い90センチ以上の水槽であればまだしも60センチ以下、とりわけ30センチやS水槽に対して、また、その水換えの水に使用する場合には注意が必要です。
 
ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)は還元剤であり、その還元力によって塩素(酸化剤)を還元し中和します。
塩素のない水に対して大量のチオ硫酸ナトリウムを投入すればその還元力によって某らの反応を引き起こす可能性もあります。
某らの酸化物があれば還元しようとするでしょうし、水との反応で硫化水素(H2S)や硫酸(H2SO4)が生成されるやも知れません。
硫化水素は多くの重金属と反応して生体に有害な物質を作り出してしまい、それが生体に取り込まれたり付着することによって生体に影響を与えることもなきにしもあらずです。
要するに不必要な物質が大量に添加されることは、飼育水に含まれる様々な物質と各々の水槽の特徴、そのにタイミングよってはどのような反応を引き起こし、どのような結果になるのかは全く予想が出来ないと言うことになります。
某らの間違いや事故でない限り大量のハイポの粒を水槽内や水換え用の水に添加することはないでしょうが、万が一そうなってしまった場合にはすぐに水換えをやり直した方が賢明です。
したがって塩素濃度に見合った添加量を心がける必要があり、特に小さな水槽に対しては厳密に行うべきなのです。
よって、ハイポをそのままの粒の状態で使用する事は出来る限りさけるべきであると思われます。
よく大型水槽の場合にはそのまま使用して水換えをしている方のお話を耳にすることがありますが、原則としては塩素中和を済ませた水を水槽に投入するのが基本です。
塩素は反応スピードが速く直接飼育水と混ざり合うことによって中和される以前に有害な塩素化合物に変化してしまう恐れもあり、このようになればもはや塩素中和剤では除去できなくなってしまう場合もあるようなのです。

また、ハイポなどを使用すると不必要な無機イオン濃度を増やすことになると言う理由から、活性炭処理や汲み置き水しか使用しない、と言われる方もいらっしゃいます。

ハイポをそのままの粒の状態で使用するには、その必要量から使い勝手が悪くなり、万が一のこともあると言うことになります。
そこでそれを溶かした溶液を作りそれを添加する方がずっと楽で安全であると言うことになります。
コントラコロラインは水10Lに対して2mlの投入とされています。
一方ハイポは蛇口からの上水道の残留塩素濃度が1ppmと仮定して100Lの水道水に60mgのハイポを投入すれば良いことになります。
ハイポを5倍に薄めたならば100に対して300mlの溶液を投入すればいいことになるわけで、3gのハイポを1Lの水で溶かした溶解液を作れば、「コントラコロライン」と全く同じ使い方が出来るというわけです。
500ミリリットルの容器ならば1.5グラムのハイポを入れておけばいいわけで、出来ればコントラコロラインのあき容器に水を入れて(かすかに残ったコントラコロラインで水は中和される)作ればいいわけです。
さて、何円の塩素中和剤が出来たことになるでしょうか・・・・・。よしをのホームページ 自家製コントラコロラインより)
 
注意!必ず塩素が中和されているか残留塩素を測定してから使用して下さい。バケツ1杯の水にハイポ溶液2mlを投入し測定してみて下さい。確実に中和されていることを確かめてからお使いになることをお薦めいたします。
 
私自身、塩素の中和にはさほど気を使っていません。水換えの時も水道の蛇口からホースでどぼどぼと入れています。
当然水道水を注入しながらハイポ溶液は必要量投入します。
また、90センチ以上の水槽では産卵箱を受け皿とし、その中にホースからの水道水が入るようにセットします。
そして、産卵箱には必要量のハイポを粒状のまま投入し溶かしながら使用して塩素中和をしています。
このような荒っぽい方法でも過去に事故を引き起こした経験は全くありませんが、本来であればバケツなどを使用して塩素中和した水で水換えを行うのが基本であり正道です。
 
なぜこのような荒っぽい方法をとっているかと言えば、例えば大阪の残留塩素平均が0.7mg/lですから、60センチ水槽の1/3を水換えしたとしてその濃度は1/3になるわけで実質約0.23mg/lの残留塩素濃度となりますから、神経質にならなければいけないほどではないと勝手に解釈しているだけなのです。
あまり私のようなやり方はまねをして欲しくはないのですが、いくつもの水槽があると水換えだけでも相当の時間を要します。
汲み置きしておけるようなスペースもなければ仕方がない、と言うことで強引に行っているだけです。
神経質にはならなくて良いとは思いますが、決して中和しなくても良いという事ではなく、(残留塩素濃度がもっと低い地域の方にとっては塩素中和さえ必要ない場合もあるようです。)必ず中和剤を投入しなくてはいけません。
しかし、その量は気持ち程度の添加で良いという事です。
夏期における蒸発分のたし水などは量が少なければ中和せずに入れたとしても、全く問題は無いと思われますが念のために中和剤は数滴でも投入するべきであると思います。
こんな事を書いていても実際私はしない方が多かったりします・・・・。
また、塩素がどれくらいの濃度で生体に影響を与えるのかは、その生体により異なるものであって違ってくるはずです。
また、エビやバクテリア、水草についても同じ事が言えると思います。
そのための実験をするのもこくなので私はしていませんが「塩素は中和するもの」と決めておくべきで習慣とするべきです。
これらのことから我が家の水道水の残留塩素濃度を知っておくことは「楽できる」(経済的にも時間的にも)事であるかもしれません。

<ペーハーや総硬度は変化する>

ここでは詳しく記述しませんが、ペーハーや総硬度はその水が水槽内に入ることによって変化します。あがったり下がったりするのです。
試しにバケツに汲み置いた水道水のペーハーや総硬度を計って下さい。1週間後同じように測定すると変化はほとんどないはずです。
(水道水に含まれる二酸化炭素が幾分抜けてペーハーが上昇することはあります。水道水を一晩エアレーションして爆気すると含まれていた二酸化炭素が放出されて必ずペーハーが上昇します。)
あるとすれば残留塩素が空気に触れて無くなっているぐらいでしょう。
起こりうる化学反応は水面において炭酸ガスと酸素が飽和溶解度までとけ込むぐらいと考えられます。
しかし、水槽内では様々な化学反応が起こってしまうのです。しかも限られた容量の中でです。
生体に与える餌や底床内、濾過槽内のバクテリアや生体の消費する酸素など、挙げ句の果ては二酸化炭素まで強制添加するわけですから様々な化学反応が起こり、どんどんとその状態は変化していきます。
 
水草水槽=ネイチャーアクアリウム、自然の生態系の一部を切り取って・・・・と言うことではなく、単なるたまり水なんです。
自然の河川では上流より次々と新しい水が流れてきます。この方がこと水質に関しては非常に安定することとなり、1日や2日で水質が一変するようなことは考えられません。(その地域の地質によりとけ込んでいる成分には違いが生じます。)
しかし、所詮水槽内は閉鎖環境で水質の変化なんて簡単に起こり得る環境であることを頭にたたき込んでおかなくては成らないのです。
アクアリウムにおいて何をしなくては成らないのか?と言うと「水質を安定させる」事なのかもしれません。
ペーハーを始め色々な試薬によって水質を知り、我が家の水槽の水質が日を追うごとにどのように変化するのか、を知ることが最も重要なことなのかもしれません。