[濾過]

22.番外編(コロイドと光合成細菌)

<コロイド溶液による凝集>

多くの凝集効果のある添加剤は、おそらくなにがしらのコロイド溶液を用いているものと考えられます。
コロイド粒子は直径が10−7〜10−5pの粒子を言い、銀などの単体のもの、水酸化鉄などの化合物、タンパク質やデンプンのような大きな分子から成る化合物のことを言います。
このコロイド粒子が液体中に分散しているものをコロイド溶液、または、ゾルと言います。
粘土や水酸化鉄のコロイドは疎水コロイドと呼ばれ、水との親和力が弱いコロイド粒子です。
また、タンパク質やデンプンは親水コロイドと呼ばれ水との親和力が強いコロイド粒子です。
疎水コロイドに親水コロイドを加えると、疎水コロイドの粒子はその周りに親水コロイドの粒子を吸着すると言う特徴を持っています。
これは水道水に含まれる有害な金属が生体に影響を与えないように保護コロイドとして利用されています。
これらのコロイドは正または負に帯電しており、電気的な関係で引き合うのです。
小さなほこりや不純物でも静電気によってどちらかに帯電しています。
疎水コロイドに親水コロイドを加えるとその様なコロイド粒子が集合凝析します。
このような作用を利用した溶液が凝集効果のある添加剤の1つの正体であるのではないか、と考えられます。
 
しかし、水槽内にどれだけの有害な重金属やほこりが含まれているかは分かりません。 地域によって必ず異なります。
要するにどれだけ添加すればいいかがとても難しいと言うことです。
確かに有害な重金属を取り省く(保護コロイドで包み込んで有害性を発揮できないようにする)ことは大切なことかも知れませんが、国内における水道水中に含まれる程度のものであれば問題にするほどのことは無いように感じます。
(ただし、地下水などを利用しておられる地域の方で、水質をチェックしてみて、含まれる重金属の値などが通常の水道水の値よりも高い場合などは必要であります。)
一般的な水道水を考えますと、通常であるならばその様な処置をせずとも十分に生体の飼育は可能です。
特殊な生体を飼育する以外は個人的には必要ないように感じています。

<光合成細菌濾過>

少し前から良く話題になっているP○B溶液やゼリー状のものなどがこれに当てはまるものです。
P○Bと言うのは特定メーカーの登録商標であったと記憶していますが、同じ名称でたくさんの類似品が出回っているようです。
水槽内に添加したり、設置したりすることによって、光合成をして細菌が増殖しアンモニアや亜硝酸を分解するというようなことが宣伝文句になっているようです。
しかし、あのようなパッケージや瓶、ボトルに入って販売されている状況から見て嫌気性の細菌であることは想像できます。
本来の光合成細菌とは汚水処理などに用いられているようで、アクアリウムの水槽環境とはずいぶんと違うようです。
相変わらずどのような細菌を培養したものなのか、など詳しい記載がありませんので、あくまで想像の範囲で考えざるを得ません。
 
光合成細菌は大別して4種類ほどになるそうですが、その中の1種に紅色非イオウ細菌と言うのがあり、その中のロードシュードモナス・キャプスレーターと言う細菌があるそうです。
これは、ほとんどの栄養条件下で生育できるようで、暗所、嫌気的な条件では発酵によって生育するそうです。
しかしながら、これらの細菌はいろいろな条件で生育できるとはいえ、光合成を行うのは嫌気的な条件でなくてはいけません。
すなわち溶存酸素量が限りなく0に近いか、全くの0である条件と言うことになります。
このような細菌を単純に培養したものであったならば、水槽環境では生育繁殖することは不可能であると考えざるを得ません。
 
投入時点ではなにがしらのバクテリアやプランクトンの餌となり、その様なものが繁殖することによって、水槽内の栄養素が取り省かれるかも知れませんが、それ以上の効果は望めず、下手をすれば生物濾材にいる酸化バクテリアにダメージを与えることにもなる可能性があります。
どのような細菌を培養したものであるのか分からないのでその作用について否定は致しませんが、その販売形態を見る限り、仮に水槽に添加してもその場でのことにしかならず、継続して水を浄化する作用は期待できないと思います。
ですから、「効いているのかどうなのか、はっきりと認識できない」製品であることは確かで、生物濾過にとって変わるものとも考えられません。生物濾過が出来上がっていれば必要なものでないことは確かです。
 
また、このようなもので仮に、偶然にでも水質が改善され良好な状態になったと思われたとしても、それを維持するためには定期的に添加をし続けなければならず、とても濾過におけるアドバンテージがあるとは思えません。
光合成細菌に対して詳しい知識もないわたしが、このように評論めいたことを書くのはちょっと気が引けるのですが、汚水や湖沼などの水質浄化に使用されている光合成細菌はそれなりに学説や実験によってその効果が実証されており、疑う余地はありません。
しかしながら、アクア用品として販売されている「色の付いた溶液やゼリー状のもの」がそのものであるかどうかは疑問に思います。
「本物の」と言うと語弊があるかも知れませんが、それは「どぶ臭い臭いがする」様なものだと聞いたことがあります。
その様な本物の光合成細菌を培養したものであったとしても、水槽環境下ではその効果を十分に発揮できないように思います。
「無くても困らない」ものだと仮定すれば、「使用しなくても良いもの」となるわけですから、「その様なものに投資をすることは不必要である」と言うのが、わたしの個人的な判断です。