征韓之大義
夫れ征韓之大義とは、
一國の私欲にあらず、即ち、兵を出して朝鮮に征き、清國を威嚇して、其の隷従より解放せしめ、近代國家の樹立を諭して、
互ひに睦び、邦を富ましめ、兵を強くして、偕に魯西亞の脅威に立ち向かひ、以て東洋平和の基礎確立に盡力せん事に有り。
此の崇高なる理念の発端は、實に明治維新の成りて朝野一變し、其の變革を隣邦友誼に依りて、國書に記めて、朝鮮國に使ひを送り候へども、彼國、永年清國の属領なれば、謀叛の無きやう兵は弱く手懐けられ、甚だ脆弱たり。また清國に遠慮つて本心を顯せず、その威に怯へて皇國の書を、受け容れざる姿は卑屈にして洵に憐れに御座有候なり。
朝鮮國は必ずや蕃猛たる魯西亞の餌食に為らん乎。之を見過ごすは人之道にあらず、仁之術にあらず、義を以て助太刀を致さんと思ふが所以なり。
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