高取山[584m] 所在地:奈良県高取町       ルートMAP


< プロローグ >
 いよいよ紅葉本番の季節。ネットで「紅葉が見事な山」をチェックして奈良県高取町にある「高取山」を見つけた。高取山の山頂には日本一の規模の山城として有名な高取城の本丸跡があり、秋には雄大な石垣を背景にしたカエデの紅葉が楽しめるという。

 今回は、ガイドブック(注1)に紹介されているルートを参考にして、近鉄吉野線の壺阪山駅を始点に土佐街道を歩いて北側から高取城跡に取り付き、下山は南西方向に降りて、浄瑠璃の「壺阪霊験記」で知られる名刹「壺坂寺」を経由して壺坂山駅に戻ることにする。(ガイドブックのルート[反時計回りコース]とは逆方向に周回する)
(注1)関西「日帰り山歩きベスト100」(実業の日本社 2011/3/1)



    日時:2017年11月17日(金)   天候:晴れ

  ルート: 近鉄 壺坂山駅 → 松ノ門 → 砂防公園 → 一升坂 → 山頂(高取城本丸跡)
         11:00     11:15   11:40    12:10    12:40/13:20

       → 五百羅漢 → 壺阪寺 → 清水谷東分岐 → 松ノ門 → 壺阪山駅
         13:50    14:15    14:40    14:55   15:10

  所要時間(休憩・昼食・ルート探索等の時間を含む):約4時間10分



< ゴーイングアップ >

【 壺阪山駅 →(土佐街道)→ 松ノ門 】

 近鉄吉野線「壺阪山駅」(p1)のベンチで身支度をして11:00丁度に出発する。駅前の小さな広場を東方向に進んで「観光とくすりの町」の看板(p2)の下を潜ると、駅の東側を南北方向に延びる国道169号の交差点(p3)に出る。交差点を横断して住宅街(p4)を東方向に歩く。


 
p1-近鉄吉野線壷阪山駅  p2-駅前から東方向に進む  p3-国道169号を横断する  p4-住宅街を東方向に進む


 「高取城跡5km」と表示した道標
(p5)が立つ交差点(p6)で右折して一方通行の土佐街道(p7)を南方向に進む。火縄銃の実演や時代行列などの催しで知られる「たかとり城まつり」は、来週の23日に行われるようで、鮮やかな赤色の「のぼり」(p8)が道路脇のそこかしこに立てられている。
 
  
p5-土佐街道の道標    p6-交差点を右折する    p7-土佐街道を南へ     p8-「城まつり」の幟


 高取町は、大和置薬としても知られる「くすり」の産地で、その起源は飛鳥時代にまで遡るという。城下町らしい佇まいの家並みが続く土佐街道沿いには、地場の薬屋さんの古風な造作の店舗
(p9)が見られ、道路脇右手の奥には「くすり資料館」(p10)が建っている。また、左手には農作物の直売所やカフェが入った洒落た風情の街の駅「城跡(きせき)」(p11)もある。
      
  
p9-レトロ風味の薬屋さん     p10-くすり資料館       p11-街の駅「城跡」


 「奈良県」の25,000石の城下町に「土佐」街道とは・・、何となく違和感があったが、『6世紀初頭に大和朝廷によって労役のために四国の「土佐国」から召し出された人々が、この地に住み着いて此所を「土佐」と名付けた・・』と解説する掲示板が道路脇に立てられていて納得する。高取城主の植村氏が支配した時代も、この「土佐」の集落が高取藩の中心地として栄えたようだ。

 壺阪駅から15分ほどで、木造りの立派な柱
(p12)の横に出る。解説板によると、高取城内にあった「松ノ門」の一部を再建したものだという。松ノ門の手前に「右 よしの つぼさか 道」と彫った石柱(p13)が置かれており、ガイドブックにある壺阪寺経由で高取山に向かう反時計回りのコースは、このポイント(p14)で右折すれば良いようだ。今回は時計回りで歩くので、ここは直進する。
        
    
p12 - 松ノ門       p13-「つぼさか道」の道標   p14-交差点を直進する



【 砂防公園へ 】
 この辺りは植村氏が領主だった江戸時代に武家屋敷が置かれていたようで、松ノ門の東側には、高取藩の田塩家の長屋門(p15)、さらに東に進むと城代家老邸の長屋門(p16)が残されている。「土佐」の中心地を抜け切って国道169号のバイパス(p17)を越えると、辺りは里山風景(18)に変わり、遠く正面奥の右手に高取山の山頂付近が見えてくる。


 
p15-田塩家の長屋門     p16-植村家の長屋門   p17-169号のバイパスを越える p18-高取山の山頂が見える


 壺阪山駅から30分弱で道は高取川の上流の「上小島沢」沿い
(p19)になる。通りすがりの農家のお父さんから「いい天気になったねえ」と声を掛けられる。「台風で道が荒れとるが、歩きだったら通れるや」とのお話。やはり高取山の登山道も台風21号の豪雨の影響を受けたようだ。右手に今日初めての鮮やかな紅葉(p20)を眺めると、沢が右手に変わり(p21)、右手下に水車小屋(p22)が見える。


  
p19-沢沿いを行く    p20-右手に紅葉が・・   p21-沢が右手に変わる   p22-右手眼下に水車小屋


 「城跡2.3km」の道標から、道
(p23)はやや厳しい上り勾配になる。直ぐ先の左手にトイレ(p24)があり、左手の階段を降りた沢沿いには休憩所(p25)もある。ここが、「上小島沢砂防公園」のようだ。壺阪山駅から丁度、40分である。

      
  
p23-上り勾配が厳しくなる   p24-左手に砂防公園のトイレ    p25-砂防公園の休憩所



【 高取城跡の本丸跡へ 】
 砂防公園から「黒門跡」の標識を左手に見て、沢沿いのコンクリート舗装路(p26)を進むと、砂防公園から8分ほどで、宗泉寺へのコンクリート道と高取城跡へ向かう山道との分岐(p27)がある。ここを直進して山道に入り、50mほど先の分岐(p28)を右に進んで、台風21号の豪雨による瓦礫が堆積した一画(p29)を抜ける。


 
p26-コンクリート舗装路を行く  p27-宗泉寺への分岐をパス   p28-分岐を右へ     p29-堆積した瓦礫を越える


 登山道の上り勾配が一気に厳しくなり、鬱蒼としたスギの植林帯を抜ける木組みの階段道
(p30)が続く。カッターシャツ1枚でも背中に汗が噴き出す。「七曲り」の標識(p31)からは急勾配の階段道(p32)をジグザグに登る。七曲りの終点にはベンチ(p33)が設置されているが、登山道の上り勾配は終わらない。辺りはスギの大木に囲まれて展望は全く無い。


  
p30-木組みの階段道   p31-「七曲り」の標識     p32-急勾配の階段道    p33-七曲り終点のベンチ


 苔生した岩道
(p34)を上る途中で、今日初めて下山途中のハイカー(シニアの男性)とすれ違う。再び瓦礫が堆積したポイントを抜け、広葉樹の落葉が堆積した雰囲気の良い一画(p35)を進むと、「一升坂」の標識(p36)があり、前方に真っ直ぐに延びる木組みの長い階段道(p37)が続いている。
 
p34-苔生した岩道を行く   p35-落葉が堆積した一画   p36 - 一升坂の標識    p37-一升坂の急登


 傍らに立つ解説板によると、高取城築城の際に、この坂が急勾配である故に人夫に対して米一升が加増されたことから「一升坂」と名付けられたようだ。一升坂を登り切り、岩屋不動への分岐をパスすると登山道沿いに石垣
(p38)が現れる。猿石がある「明日香村栢(かや)森」への分岐(p39)をパスして直進すると、二ノ門跡の石垣(p40)の前に出る。石垣の横には山城には珍しい水堀(p41)が設けられている。傍らに立つ解説板によると、この水堀は大和川の支流の高取川の源流になるという。既に高取城跡の領域内に入っているが、ここから本丸までは、さらに距離で872m、標高差で110mあるという。まさに巨大な山城である。
  
p38-道沿いに石垣が現れる  p39-栢森への分岐をパス  p40-二ノ門跡の石垣   p41-石垣の横の水堀


 石垣
(p42)を左手に急勾配を登り、さらに一部が崩れかけた石垣を右手に見上げながらゴロゴロ岩が転がる山道(p43)を進む。ここまで登ると、高取城の規模の壮大さが実感できるようになる。

 この辺りで、昼食を山頂で摂ってから降りてきたらしい下りのハイカー数組とすれ違う。本丸まで520mのポイントに道標が立つ国見櫓(やぐら)跡への分岐があるが、何も考えずに直進してしまう。(これが大失敗だったことを知るのは帰宅後のことでした。国見櫓跡は、このコース随一の展望ポイントで奈良盆地が一望できます)

 矢場門跡から松ノ門跡
(p44)へ進むと本丸跡までは300mほどだ。木組みの階段道(p45)を登り切ると宇陀門跡である。

    
  
p42-石垣脇の急登  p43-石垣を見上げながら・・  p44-松ノ門跡の標識   p45-宇陀門跡へ向かう


 宇陀門跡
(p46)からは、道(p47)が平坦になり、千早門跡を越えると、壺坂寺からの登山道が右手から合流し、前方に紅葉を背景にした大手門跡の高い石垣(p48)が見えてくる。大手門は二ノ丸/本丸への唯一の入り口である。ここからは両脇を石垣(p49)に囲まれた道を進む。人の姿が一遍に増えてくる。


 
p46-宇陀門跡の石垣   p47-平坦になった登山道  p48-紅葉を背にした石垣   p49-石垣の間を抜ける


 十三間多門跡
(p50)を越えると、二ノ丸があったと思われる広い平坦なスペースの向うに高い石垣(p51)が見える。鮮やかな紅葉を載せた石垣(p52)(p53)を眺めながら進むと、いよいよ本丸跡である。


             
p50 - 十三間多門跡


             
p51 - 二ノ丸跡の広場と本丸跡の石垣

    
    
p52-石垣と紅葉T       p53-石垣と紅葉U



【 本丸跡 】
 十五間多門跡を抜け、周囲を石垣に囲まれた平坦な一画(p54)で見事な紅葉を眺めながら一息入れる。スーツ型ジャケットを着込んだ父さんから「壺坂山から歩いて来なさった?」と声を掛けられる。毎度のことだが、ここで初めて山頂まで車でアクセスできることを知る。

 高い石垣
(p55)を東方向に回り込んで進むと東西75m、南北60mといわれる広いスペースを有する本丸跡(p56)に至る。壷阪山駅から休憩やルート探索時間を含めて丁度100分である。山頂スペースには、車で来たらしい高級カメラを肩に掛けて三脚を抱えた観光客など数人が先着している。本丸跡の中央付近のカエデは未だ紅葉前だが、周囲を囲む高さ8mにも達するという石垣の近くのカエデ(p57)は見事に紅葉している。

      
   
p54-石垣に囲まれた一画    p56-山頂スペース(本丸跡)    p57-石垣沿いの紅葉


              
p55 - 本丸跡の石垣


 山頂スペースの南側には方位盤
(p58)が置かれていて、このポイントから南方向が開けて吉野山方面の山塊が見える(p59)。石垣の上から眺める紅葉(p60)(p61)も素晴らしい。ここで大休止して昼食とする。


  
p58-山頂の方位盤    p59-吉野山方面の山塊   p60-石垣の周囲の紅葉T  p61-石垣の周囲の紅葉U



< ゴーイングダウン >

【 壺坂寺へ 】

 山頂からは、来た道(p62)を壺坂寺からの登山道との合流ポイントまで戻る。道標(p63)の「壺坂寺方面」の指示に従って、合流ポイントで左折して、木造りの階段(p64)を降りる。

      
    
p62-来た道を戻る     p63-道標が立つポイントで左折   p64-木製の階段を下る


 石垣を左手にして急勾配の小道
(p65)を下ると、道(p66)は植林帯に入り、やがて林道(p67)に合流する。山頂の本丸跡にいた観光客のものと思われる車(p68)が林道脇に駐められている。


  
p65-石垣脇を下る     p66-植林帯を下る     p67-林道に合流する   p68-林道に駐車した車輌


 林道脇にある八幡神社への階段の登り口
(p69)に道標が置かれているので、「←壺坂寺」の指示に従って小道に入る。小道(p70)はスギの植林帯を抜けた後、林道(p71)に合流してから「←五百羅漢を経て壺坂寺」と記載された道標に従って再び小道(p72)に入る。


 
p69-道標に従って小道へ  p70-植林帯の小道を行く   p71-林道に合流する    p72-右手の小道に入る


 小道は植林帯を抜け、さらに右手が斜面の下り勾配になる。ホイホイ気分で降りたいところだが、崩落箇所を仮復旧したままの区間
(p73)などもあるので注意が必要だ。ロープが張られた急坂の一画(p74)を抜けると、岩に多数の仏像が彫られた「阿羅漢」(p75)の前に出る。阿羅漢の隣にも無数の仏像(p76)が並んでいる。ここが道標にあった「五百羅漢」のようだ。山頂から丁度30分である。


 
p73-仮復旧した登山道   p74- ロープを張った急阪     p75 - 阿羅漢        p76-仏像群


 五百羅漢からは雰囲気の良い小道
(p77)を下る。右手遠くに二上山から大和葛城山に延びる稜線(p78)が見えると、小道は舗装された車道(p79)に合流する。

   
 
p77-雰囲気の良い小道を行く   p78-二上山から葛城山への稜線      p79-舗装道路に合流する


 車道
(p80)を下ると右手に大和葛城山をバックにした壺坂寺(p81)が見えてくる。ここから眺める二上山(p82)は美しい。山頂から丁度40分で紅葉が見頃になった壷阪寺(p83)の南側の車道上に出る。


p80-舗装道路(車道)を下る p81-右手に壺阪寺が見える   p82-二上山が見える     p83-壺阪寺の紅葉


 ガイドブック(注1)によると、この辺り
(p84)から壺坂寺の玄関口側に降りる「急階段」があるはずなのだが・・、見つからない。右手に降りる階段があったので降りてみるが、太陽電池パネルが敷き詰められた駐車場跡に出てしまい失敗。10分以上時間をロスする。結局、車道(p85)を壺坂寺の大駐車場まで降りてから寺の玄関口(p86)まで車道を登り返す羽目になる。結果、山頂から壺坂寺の玄関口まで55分を要してしまう。

      
  
p84-車道(舗装道路)を直進     p85-車道を下る       p86-壺阪寺の玄関口



【 壺坂山駅へ 】
 壺坂寺からの下山道の入り口は、壺阪寺の玄関口の向かい側(西側)の「壺坂寺前バス停」(p87)の横にある。綺麗に紅葉したカエデの脇の道(p88)を下り、金属製のパイプで組み上げた手摺りの急階段(p89)を降りると、良く踏まれて歩き易い昔ながらの壺坂寺への参道(p90)になる。


 
p87-下山道の入り口    p88-下山道沿いの紅葉    p89-階段道を下る     p90-壺阪寺の参道


 壺坂寺から参道を15分ほど歩くと車道に合流する
(p91)。車道(p92)を道なりに下って、国道169号のバイパスになる右手への分岐をパスして直進すると、再び右方向への分岐(p93)があり、分岐のコーナーに建つ民家の生け垣に「城下町 壷阪山駅→」の標識(p94)がある。ここで右折する。


 
p91-車道に合流する   p92-車道を道なりに下る   p93-三叉路を右折する  p94-「壷阪山駅」への道標


 下小島地区の民家の間を抜ける狭い舗装道路
(p95)を北上すると、土佐街道の松ノ門(p96)の横に出る。ここから駅までは午前中に歩いた道だ。ルート探索時間/道迷いロス時間を含めて壺坂寺から55分、山頂からは1時間50分で壺坂山駅に到着する。

      
   
p95-狭い舗装路を北上する    p96-「松ノ門」の横に出る


< エピローグ >
 好い山です。国見櫓跡からの眺望を楽しめなかったのが残念ですが、本丸跡での「石垣」と「紅葉」のコトラストは、意外に厳しい登りを経たあとだけに一際美しく感じられました。25,000石の城下町の雰囲気が残る土佐街道もなかなかの風情です。「桜」と「紅葉」の時季の登山がお薦めです。


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