厳しかった残暑も
ようやくおさまってすっかり秋の様相となったある日
ここは香川県高松市の
とある町にある「どんぐり山」と言うハイキングコースにもなっている
自然いっぱいの景勝地!この日も連休を利用して広島から1組の夫婦がハイキングに 訪れていた
「ノブちゃ〜ん 遅いよ 早く!早く!
・・・置いてくよ」 「ちょっと待ってくれよ
俺もう歳なんだからそんな早くは歩けないよ
ここらでちょっと休憩しないか?」 「さっき休憩したばかりじゃないの
しょうがないわね〜」 「そう言うなよ ほら! 美味しいお酒もあるし
一休みして一杯やろよ」 「あれ?ノブちゃん
お酒飲めないのに何でそんなの持って来たの?」 「大自然の中だと気分も変わるし 美味しく感じるんじゃないかと思ってね」 「知らないよ
酔っ払って動けなくなっても・・・。」 「何言ってんだい
大丈夫だよっ!」 ・・・と そんな会話をしていた時 突然
妻の美紗枝が大声を上げた。
「きゃぁ〜〜〜!!」 「おいおい
一体どうしたんだ?
ビックリするじゃないか」 「トッ・・・ トッ・・・
トカゲがぁ〜〜」 見れば目の前を一匹のトカゲが横切っていった
・・・美紗枝はトカゲが大の苦手だった 「大丈夫だよ 毒も無いし何もしやしないよ
それよりお前の声でビックリして折角のお酒が
台無しだよ〜」
美紗枝の声に驚いた拍子に 夫
信道は手に持っていた酒瓶を落としてしまったのだった 落ちた場所が
これまた運悪く岩の上!瓶は粉々になり
中のお酒は岩肌を伝って 土の上へと流れ
すべて地中へと染み込んでいった
「ごめ〜ん
脅かすつもりじゃ無かったのよ」
そんな美紗枝の言葉に軽く舌打ちをして信道は・・・ 「仕方ない あきらめるとしよう! その代わり
おやつの“こんにゃくゼリー”は
全部俺が食べるからね!」 「ええぇぇぇ〜
そんなぁぁぁ〜」 楽しみにしている
おやつのこんにゃくゼリーを独り占めにされて泣きそうな美紗枝に
信道は・・・ 「ハハハハッ ウソだよ
でもおにぎりだけは余分に頂くからね」 「もう
ノブちゃんったら〜」 そんなこんなで仲のいい二人は楽しげな笑い声と共にまた山頂を目指して登って行った
事件は
その日の夜に起こった
所は変わって ここは
どんぐり山のふもとに一人で暮らす多西時子(68歳)の家! この日は連休と言うことで
東京に住む小学校6年生で双子の孫娘すずとこけが泊まりに
来ていた
すっかり日も暮れて夕食も済ませた午後8時頃のことだった 「ガルルルルルル〜 ガルルルルルル〜」と何処からともなく不気味な声が聞こえて 来たのだ
「ねぇ おばあちゃん
あの声は一体何なの?」
と双子の姉すずが聞いて来た お風呂に入っていた妹のこけも
「なんか変な声がする〜」
と言って慌ててあがって来た 耳を澄ますと確かに
「ガルルルルルル〜 ガルルルルルル〜」
と言う何とも気味の悪い 鳴き声のようなものが聞こえてくる 外へ出てよく聞いてみると
それはどんぐり山の方から 聞こえて来た・・・その声を聞きながら
しばらく黙って考え込んでいた時子が突然思い 出したように声を発した
「二人とも早く家の中へ入るんじゃ」
そう叫ぶと台所にあったお酒やビールなどのアルコール類をすべて玄関の外へ出し
裏口やすべての窓にカギをかけ雨戸も閉じて電気まで消した
「ねぇ おばあちゃん
あの声は一体何なの?」 すずは再び同じ質問をした
すると時子は
「あれは“ジュンババ”じゃ」
「ジュンババ?」 すずとこけは
目を合わせて思わずそう叫んだ
「おばあちゃんが子供の頃に聞いた話なんじゃが その昔
ここの町に“じゅん”と言う
それはそれは美人の女が何処からともなくやって来て住みついたんじゃそうな
そして
町の若い衆たちは すっかり じゅんの虜になってしまったんじゃよ ある日
若者たちが
そのじゅんを囲んで酒盛りをしていた時のことじゃ それまで上品でおとなしかった
じゅんが
お酒を飲み出したとたんに突然 豹変して男たちに襲いかかったんじゃよ」
「ひょっとして じゅんは化け物だったの?」 ・・・と 今度は妹のこけが尋ねた すると時子は・・・
「そうじゃ
じゅんの正体は酒飲み妖怪ジュンババだったんじゃよ その後 偉い
お坊さんによって
どんぐり山の下に封じ込められたと聞いていたんじゃが何でまた
出て来たんじゃろう?」
説明しておこう!昼間
どんぐり山を訪れた信道と美紗枝の夫婦が休憩中に割って こぼしてしまったお酒が地中に染み込み
それがどんぐり山の地中深くに眠る
ジュンババの所まで届いた
そしてそれを口にしたジュンババが蘇ってしまったのである 「ガルルルルルル〜
ガルルルルルル〜」その声は だんだんと時子の家に近づいて来た そして
しばらくすると玄関の外で「グビッ!グビッ!」と
ノドを鳴らして酒をあおる音が 聞こえてきた「怖いよぉ〜 おばあちゃん!」恐怖に震える二人の姉妹は時子に
しがみついてジュンババが立ち去るのを静かに待った この「ジュンババ出現!」のニュースは あくる朝には全国に向けて報道された ここは大阪の とある15階建てマンションの最上階! ここに住む西田真美と娘で 小学校5年生の樹(いつき)
弟で小学校3年生の健太の三人も朝食を摂りながら このニュースを見ていた
すると母親の真美が・・・。 「これは大変だわ
すぐに行かなきゃ!」それを聞いた健太が・・・。 「ダメだよママ 僕 きょう野球の試合があるし・・・。」すると今度は樹が・・・。 「私も きょうピアノのレッスンが・・・。」これを聞いた 母親真美は激怒した 「何言ってんのあんた達!私達が行かなきゃ誰があのジュンババを倒すの?
ブツブツ言ってないで早く変身するのよ!」 説明しなければならない
西田真美とその子供達は3年前の夏にキャンプへ行った時
地球征服をたくらむ悪の秘密組織「ザリガニ団」によってさらわれ改造人間にされて
しまったのだった・・・ところが悪人回路を埋め込まれる寸前に運良く逃げ出し
それ以来「仮面ライダーマナミンズ」としてその能力を活かし日夜 世界平和の為に
戦っているのだ しかしこの事実は 夫啓輔も知らなかった 「さぁ
変身するわよっ」そう言うと真美はベランダからハイポネックスを取り出すと キャプ一杯を飲んだ 「仮面ライダーマナミン
見参!」仮面ライダーマナミンズは
ハイポネックスを飲むことによって変身するのだった 「さぁ あんた達も早く変身しなさい! あんた達は子供だからキャップ半分で大丈夫よ」 マナミンに促されて
まずは樹が先に変身した 「仮面ライダーメイ
見参!」
続いて 健太も・・・ 「仮面ライダーケビン
見参!」 ・・・とその時 変身したはずのケビンが またハイポネックスを飲もうとした
それを見たマナミンが・・・
「あんた何やってんの?飲みすぎでしょ!」 「たくさん飲んだら仮面ライダースーパーケビンになれるかも知れないと思って・・・。」 「あほかっ!そんなもん
なれる訳ないやろ」
・・・マナミンは軽くつっこんだ・・・。 そんなこんなで
ようやく二人が変身したのを確認したマナミンは・・・ 「揃ったわね
それじゃ行くよ」 「行くよって ママ
どーやって四国まで行くの?」 ・・・と メイが聞いてきた
するとマナミンは・・・ 「四国までは自転車で行くのよ
それと変身した時はママじゃなくて “仮面ライダーマナミン”と呼びなさい
いいわね」 「ええぇ〜 自転車で行くのぉ〜 仮面ライダーと言えばオートバイじゃないの?」 「何言ってんの あんた達まだオートバイに乗れる年齢じゃないでしょ
心配しなくても
大丈夫よ 仮面ライダーに変身すれば自転車もひとこぎで300メートル走れるのよ さぁ ぐずぐずしてると置いてくわよ」そう言うが早いか
仮面ライダーマナミンは
物凄いスピードで消えていった
「待ってよママ〜」 二人のその声を聞いたマナミンは また猛スピードで引き返してきたそして・・・ 「何回言わせるの ママじゃなくて“仮面ライダーマナミン”と呼びなさいって言ったでしょ
・・・こんなことをやってる暇はないわ
さぁ行くよ」
かくして ようやく3人の仮面ライダー達は高松へと向ったのだった 三人のライダー達が到着すると ジュンババは栗林公園の池で捕まえた鯉をかじりながら
一升瓶をあおり すっかり出来上がっていた
「ガルルルルルル〜 ガルルルルルル〜」 それを見た
メイが・・・ 「あかん! 怖すぎるぅ〜
帰ろう〜」
すると マナミンが・・・ 「あなた
それでも仮面ライダーなの?
あきらめちゃダメ!」 「ダメ!って言われても
ママ・・・。」 「ママじゃないでしょ
私は仮面ライダーマナミンよ」
二人がそんな会話をしているところへ多西時子がやって来て・・・ 「仮面ライダーさん 聞いておくれ ジュンババは音楽を聴くとおとなしくなるんじゃ」
それを聞いたマナミンは・・・ 「ありがとう おばあさん おかげで
いい方法を思いついたわ! ねぇおばあさん
この近くに学校はありますか?」 「学校なら ほらっ
そこに・・・。」 それを聞いたマナミンは 猛ダッシュでその学校へ向うと音楽室に置いてあった
グランドピアノを軽々と小脇に抱えて帰って来た 「さぁ あんた達 ここで日頃練習した“エリーゼのために”を弾くのよ」 「ええぇ〜
そんなこと急に言われても・・・。」 二人は抵抗してみたが
仮面ライダーマナミンの目からほとばしる言いようの無い
威圧感にそれ以上抵抗できなかった ♪ポロポロポロポロリン〜 ポロリン〜
ポロリン〜♪ メイとケビンはマナミンに促されるままに“エリーゼのために”を弾きはじめた そして それを聴いたジュンババは
やがてコックリ・・・コックリ・・・と居眠りをしはじめたのである 「二人とも
その調子よ」 しかし
しばらくすると・・・ 「もうダメぇ〜
指が動かない〜」
「何言っての!今やめたら何にもならないわ もう少し頑張って」 ・・・しかし メイとケビンはもう限界だった これを見たマナミンはポケットから
携帯電話を取り出すと
何処かへ電話をし始めた 「もしもし マナミンです〜
助けて欲しいの・・・高松まで来てもらえない」 「ひょっとして
例のジュンババね?」 「その通りよ
どうしてもあなたの腕が必要なの!」 「そう言われても
きょう5時から阪神優勝記念のタイムサービスがあって 玉子が1パック77円なのよ〜
どうしてもそれ買いに行きたの・・・。」 「それなら私も今朝 広告で見たわ
大丈夫!5時までには片付くから」 「分かったわ じぁ
直ぐに行くから・・・。」 仮面ライダーマナミンは 一体誰に電話をしたのか? 実は仮面ライダーマナミンズには
もう一人仲間がいたのだ それは3年前に西田親子と
一緒にキャンプに来ていて 同じようにザリガニ団によってさらわれ改造人間にされてしまった 瀧真由美こと“仮面ライダーマァ”であった 彼女も普段は極普通の主婦なのだが
マナミン達がピンチに陥ると現れ一緒に戦ってくれる心強い助っ人だったのだ 「遅いなぁ〜 マァったら〜
何やってんだろう?」 電話をしてから
もう一時間近く経つと言うのに仮面ライダーマァはなかなか現れなかった
「何かあったのかしら?」 マナミンがそう思いかけた時 ようやく東の方から猛スピードで自転車をこいで
仮面ライダーマァがやって来た! 「お待たせしました 仮面ライダーマァ
参上!」 「遅かったじゃないのマァ!
一体何やってたの?」 「ごめ〜ん
きょうはお天気も良さそうだし紫外線もキツイんじゃないかと思って
UVカットを塗って念入りにお化粧してたら時間経っちゃて・・・。」 それを聞いたマナミンは笑いながらズッコケてみせたが 目は笑っていなかった・・・ 気を取り直したマナミンは
事の一部始終を簡単に説明すると・・・。 「・・・と言う訳で
早速だけど“エリーゼのために”を弾いてほしいの」 「お易い御用よ メイちゃんもケビンくんも良く頑張ったわね 後は私に任せて」 そう言うとマァは
白魚のような指先で可憐に鍵盤を叩きはじめた
♪ポロポロポロポロリン〜 ポロリン〜
ポロリン〜♪
仮面ライダーマァの奏でる心地よい音色にジュンババは
すっかり寝息をたてて
寝入ってしまった それを確認するとマナミンは
傍にいた多西にこう尋ねた 「すみませんおばあさん
この近くにリヤカーのあるお宅はありませんか」 「リヤカーなら
うちの納屋にあるから使いなされ」 そう言われてマナミンは早速 多西の家の納屋からリヤカーを持ち出すと・・・ 「さぁ みんなジュンババを早く
このリヤカーの上に・・・。」
そう叫ぶマナミンにケビンが尋ねた 「ねぇ
一体どこへ運ぶの?」
するとマナミンは・・・ 「鳴門海峡よ!
鳴門海峡まで運んで渦潮の中に沈めるの・・・。」 「なるほど〜
さすがはマナミン!」 ・・・と
一同は大きくうなづいた そして4人のライダー達は 目を覚まさないよう静かにジュンババをリヤカーに乗せると
自転車でそれを引いて高松自動車道を鳴門海峡へと向った
10kmくらい走っただろうか
後ろを振り返ったケビンが突然叫んだ 「大変だぁ
ジュンババがいないよ!」 見れば
リヤカーの上に乗ってるはずのジュンババの姿が消えていた あまりにも早いスピードで走ったため その勢いについて行けず何処かで落して来たのだった 「何処に落としたんだろう?もし目を覚ませば また大変なことになるわね 早く探さなきゃ」 仮面ライダーマァのその言葉に一同うなずくと今来た道をまた引き返した
しばらくすると
道路の真ん中で食べかけの鯉を大事そうに抱えたまま寝ているジュンババを発見した 「やれやれ 心配したけどグッスリ眠ってるわね 今度は落ちないようにロープで縛りましょう」 マナミンがそう言うと またみんなでジュンババをリヤカーに乗せ
今度は落ちないように
しっかりとロープで固定した
そんなこんなでハプニングは
あったものの何とか鳴門海峡までたどり着いた
「さぁ 着いたわ
目を覚まさないうちに早く沈めるわよ」 マナミンのその言葉に4人のライダー達はジュンババを静かに持ち上げると
鳴門海峡大橋の上から海の中へと投げ込んだ 「ドッボッォ〜〜〜ン! ブク ブク
ブク〜〜」 大きな水しぶきをあげて哀れジュンババは鳴門の渦潮の中へと消えていった・・・。
「やったわね マナミン」 「ありがとう マァ!あなたが来てくれたおかげよ!
さぁ
事件は無事に解決したしみんな帰るわよ」 「ねぇ マナミン!
今からならタイムサービスに間に合うわね」 「そうね またお互い主婦に戻って新たな戦いに挑むとするか メイ!
ケビン!
あなた達もスーパーに来るのよ」 「ええぇ〜〜
なんでぇ〜」 「玉子は一人一パックなの!
だからあなた達も頭数なのよ・・・。」
「・・・なんで主婦の戦いにまで自分達が・・・。」 メイとケビンは心の中で そうつぶやきつつも それぞれに玉子のパックを持たされて
家路に着くのであった
かくして
仮面ライダーマナミンズらの働きによって また一つ地球の平和が守られた 戦え
仮面ライダーマナミンズ!
地球の平和は君達の活躍にかかっている
〜完〜
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