夏の暑さもようやく終わりを告げようとしていたある日・・・。 この日
こけらったの父は相撲見物へと出かけていた このお話はその日の夜から始まる・・・。
「ただいま〜」 「お帰りなさ〜い
楽しかった?」 「あぁ とっても楽しかったよ」 こけらったと そんな会話を交わした父は玄関の扉を閉めようとしてもう一度 外を確認した 「どーしたの?」 「誰かいたような気がしたんだが・・・どうやら気のせいみたいだ」 そう言って中に入ると 早速リビングでおみやげの店開きが始まった 「見て おかあさん!このチョコ 力士の形してるよ!」 「ほんとだ面白いチョコね!」 そう言うと母とこけの二人は早速
熱いお茶をすすりながらそのチョコを一個ずつ
口の中へと入れた・・・
父はと言うと・・・。 「お〜い 俺の酒はどうなってんだ?」 「アッ しまった!お酒無くなってたんだ・・・。」 「こけちゃん ごめん 下のコンビニ行って買ってきて・・・。」 「ハイハイ!」 「ハイは一回でいいの!」 「はぁ〜〜〜〜〜い」 そんなこんなで
その日の夜は何事もなく終ったかのように思えた
そして次の朝
「あれぇ〜?」 朝から疑問げにそう言う母に こけらったの父は 「どーしたんだ!」 「チョコが一個足りないのよ
きのう私とこけちゃんが一個ずつ食べたから二個だけ
減ってるはずなのに 三個も無くなってるのよ
しかも残ってるチョコが全部二つに
割れてるし・・・あなた食べた?」 「いいや 俺は食べてないぞ」 「こけの仕業じゃないのか?」 二人の会話を聞いていた こけが起きてきて 「私じゃないよ」 「丁度
いいじゃない!きょう明智さんが来られるんだったら推理してもらいましょうよ」 そう話す母に
こけは・・・。 「エッ!きょう明智さんが来られるの?」 「何言ってんのよ こけちゃんがきのう そう言ったんじゃないの」
紹介しよう!明智ザリ郎(39歳)私立探偵!こけらったのネット仲間でこの日 こけの家を訪問することになっていた
「ピンポぉ〜ン」 「はぁ〜い」 こけらったが玄関のドアを開けるとそこには明智が立っていた 「こんにちは こけさん!」 「こんにちは 遠い所をようこそ どうぞ上がってください」 「おじゃまします」 座敷に通された明智は 暫くこけらったと取りとめもない会話をしていた するとそこへ母がやって来て・・・。 「明智さんは探偵さんなんだそうですね 実は今朝から我が家で事件が起こりまして・・・。」 母は事の一部始終を明智に話した そしてそのチョコの箱を明智に差し出した 「・・・なるほど これがそのチョコですね」 そう言うと明智は早速 箱の蓋を開けてみた 確かに三つ無くなっている
しかも
残されたチョコは すべて真っ二つに割れている・・・暫く眺めた明智は
おもむろに
箱の蓋を閉じたそして蓋の上に付いた丸いシミに気が付く・・・。
「この丸いシミは 何ですか?」 「あぁ これは多分 きのうこのチョコを食べた時に飲んだお茶のシミだと思います お湯のみを
この蓋の上に置いたんですよ」 明智は これを聞いてピンと来た 「なるほど!」 そう言うと明智は
もう一度そのチョコの蓋を開け裏返してみた するとそこには
消えた謎のチョコが一個くっついていたのだった
つまり母の置いた湯飲みの熱で
その下にあったチョコの表面が溶けて箱の裏にくっついていたのだった 「なぁ〜んだ バカバカしい 大恥もいい所ね」 こけらったが大笑いでそう言うと・・・ 母が・・・。 「でも明智さん 消えたチョコの謎は解りましたが
この二つに割れているのは
どう言うことなんでしょう?」 「それなんですよねぇ〜 私もそれが気になってるんですが・・・。」 母は突然思い出したように・・・。 「すみません お茶も出さずに・・・。」 「いえ どうぞ おかまいなく・・・。」
しばらくして
母はジュースを持って来た 「おぉ〜 これは今 巷で人気のマスカットカルピスですね」 「私 飲むの初めてなんですよ マスカットのほのなか香りがして甘すぎず美味しいですね〜」 母は明智の満足げな顔をみると うれしそうに台所へと下がっていった 「あれッ?こけさんは飲まないんですか?」 「私ちょっとカルピスは苦手なんですよ 良かったら私のも どうぞ!」 「エッ?」
「ところでこけさん!先日
月樹の掲示板に讃岐純子さんが来てましたね
みささんもいたずら好きですよね だって月樹の常連じゃないと 讃岐純子の正体が
みささんだってこともわかりませんからね」 「うん 確かにそうですよね」
「・・・? すみません ちょっと電話させてもらっていいですか?」 「そちらにありますからどうぞ・・・。」 「いや携帯持ってますから・・・ あれ?電波状態が悪いぞ ちょっと失礼!」
そう言うと明智は玄関の外へと出た・・・しばらくして戻ってくる・・・。
「すみません話の途中で・・・
連絡事項を思い出して・・・。」 「探偵さんて言う仕事も大変ですね」 「いやいや貧乏暇なし・・・ってやつですよ あっ そうだっ! きょう実は すず之介もこちらに来ることになってるんですよ」
紹介しておこう!すず之介こと基喜すず
年齢(知ってるけど言えない) こけらったの幼馴染でもあり 現在 明智ザリ郎の助手でもある 「エッ すずさんも来るの?」
・・・と 次の瞬間 明智の携帯が鳴る
「やはりそうか ご苦労だった
君も直ぐにこっちに来てくれ」 「すずさんですか?」 そう問いかける こけらったに明智は・・・。 「フフフフ・・・。」 「どーしたんですか 明智さん?」 「そろそろ正体を現したらどうです こけさん! いや
怪人コケ面相!」 「明智さんたら何を言い出すかと思ったら・・・なんで私がコケ面相なの?」 「私と
こけさんはネットだけのお付き合いなので知らないことはたくさんあります
でもネットだからこそ知っていることもたくさんあるんですよ あなたはマスカットカルピスが 苦手だとおっしゃいましたよね それを聞いて私は変だと思ったんですよ
本物のこけさんは 子供の頃から大のカルピスファンなんです そこで私はもう一度 君を試してみたんですよ 讃岐純子の正体はみささんではなく じゅんさんです
これをこけさんが知らない訳がない
それにすず之介とこけさんは幼馴染なので”すずさん”なんて他人行儀な呼び方はしませんよ」 「この人が怪人コケ面相だとしたら うちの娘は何処に・・・。」
そう言って心配する母に明智は・・・。
「心配はいりませんよ おかあさん!こけさんは
私の優秀な助手が身柄を確保しましたから」 「こけさんの車のトランクの中に閉じ込められていたそうです 車のトランクに閉じ込めるのは
コケ面相のいつもの手口なんです 「さぁ コケ面相 これでもまだしらを切る気か?」 「そこまで知られては仕方がない」
チャァ〜ン チャチャチャ
チャァ〜ン(←仮面を剥ぐ時の音楽)
「とうとう姿を現したなコケ面相!さぁ
聞かせてもらおうここに進入した訳を・・・。」
ガチャ! ・・・とその時
玄関のドアが開いて本物のこけらったとすず之介が入ってきた 「先生! こけちゃんは
この通り無事に・・・。」 「ご苦労だったね すず之介」 「あっ!あなたはコケ面相!やはりこの人の仕業だったんですね先生!」 「そうさ! さぁ 聞かせてもらおうコケ面相 ここに潜入した訳を・・・。」 「明智さん あなたは”マナミンの涙”と言うのをご存知ですか?」 「マナミンの涙と言えば 3年前にアラブの大富豪アブドラ・ヘリウム氏の豪邸から盗まれた
時価1億4千万円すると言われているダイヤのことかね?」 「さすがは明智ザリ郎ね 博学だこと・・・。」 「そのマナミンの涙が きのう両国国技館で取引されると言う情報が入ったの その情報に よるとダイヤは お土産の相撲チョコの中に隠されていると言うことだったわ
だから私は きのう密かに そのダイヤを狙っていた そしたら情報通り彼らはやって来た
ところがその ダイヤが隠されたチョコの箱が こともあろうか間違って隣に座っていた
ここの主人の袋に 入れられるのをハッキリと見たのよ 何とか奪おうとしたけど人が多くて出来ず
そうこう
しているうちに主人は家へたどり着いてしまった・・・家の中へ潜入しなければと思っていたら
そこのお嬢さんが家から出てきたの・・・。」 「そうなんです 父のお酒を買いに行こうと思って外に出たら 突然 後ろからハンカチで 口と鼻を塞がれて・・・その後
意識が無くなったんです」 「多分 クロロホルムを嗅がされたんですね」 「その通りよ!そしてこの家に潜入した私は 夜 家人が寝静まってからチョコを割って 調べたけどマナミンの涙は見つからず とりあえず朝まで様子を伺ってたら
母親の方が ”一個足りない”と言い出したので
恐らくマナミンの涙はその中に隠されていると思い探さば ・・・と思っていたら 明智さん
あなたがそのチョコを見つけてくれたと言う訳なの 「ありがとう 明智さん」そう言うと次の瞬間
コケ面相は明智が見つけたチョコを右手で つかむとベランダの雨どいを伝って下へと
まるで軽業師のように逃げていった 「待て コケ面相!」 明智は追おうとしたが 既にその姿は消えていた 「くそぉ〜 コケ面相〜」 この騒ぎで 昼寝をしていた こけらったの父が目を覚まし起きてきた 「何を騒いでるんだ」 「あなたこそ何のんきなこと言ってるの 大変だったんだから・・・。」 「おやっ すずちゃん 久し振りだねぇ」 「ご無沙汰しています」 「ところで
こけ!こちらは何方だ?」 「お友だちの明智さんよ」 「明智です おじゃましています」 「あなたが明智さんですかぁ 娘がいつもお世話になってます」 「こちらこそ ご挨拶が遅れて申し訳ありません」 明智がそう言うと父は こけらったに向って・・・。 「おまえたち 客人が来られているというのに こんな所でつっ立って何やってんだっ」 「だから それどころじゃなかったって言ってるじゃない」 「ゴチャゴチャ言ってないで私の机の上にきのうの相撲チョコがあるから早くお出ししなさい」 「相撲チョコですってぇ〜〜!あれって一箱じゃなかったの?」 「多分 係りの人が間違ったんだと思うんだけど2箱入っていたんだよ 我が家では2箱もいらないだろうと思って 明日 会社に持って行こうと横によけてたんだが
それがどうかしたのか?」 「ひょっとしたら・・・? みんなで手分けしてこのチョコを割るんだ」
明智のその言葉に
みんな手分けしてチョコを割り始めた
しばらくすると すず之介が・・・。 「先生 ありました!」 「おぉ〜
やはりあったか」 「なるほど〜
これがマナミンの涙かぁ〜 さすがは時価1億4千万円と言うだけのことは
あって素晴らしく美しい!」
「こけ面相は さぞや今頃悔しがってることだろう
アハハハハ・・・。
かくして事件は思わぬ展開で解決した だがしかし
またコケ面相は何時何処に現れるやも 知れません
ひょっとしたら今あなたの隣にいる人がそうかもしれませんよ
〜完〜
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