蒸し暑い夜

(令和2年8月20日 ブログ「平平凡凡」にて掲載!)




 ・・・蒸し暑い夜だった
 ジッとしていても体から汗が噴き出す

 男は二階の自室でパソコンに向かい 明日の会議の
 資料作りをしていたが あまりの暑さに頭が回らず
 仕事は一向に はかどらなかった

 「そーだッ!」
 男は冷蔵庫に缶ビールがあったのを思い出し
 それを取り出すと栓を開けて一気に喉へと注ぎ込んだ
 体の内部から冷やされた細胞たちは正気を取り戻し
 暫し 暑さからも解放される

 ・・・とその時 階段の下で何やら物音がした
 「誰かいるのか?」 ・・・いや そんなはずはない
 何故なら今夜はみんな出かけて
 家の中には彼しかいないからだ・・・。

 不思議に思った男は 恐る恐る部屋のふすまを開けると
 階段へと目をやった・・・誰もいない!

 男は階段を一段ずつ下へと降りてみた
 古い木の板が張られた階段は ひんやりとして心地いい
 男の足元は裸足だったので そのひんやり感は
 足の裏を通してダイレクトに伝わってくる

 下から二段目まで下りた時 男の身体は思わず固まった
 その段の板だけが他の段と違い何故か温かかったのだ
 今まで そこに誰かが座っていたかのように・・・。

                          〜完〜





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