ある青春の1ページの物語である。

 

夏の終わりの思ひ出(後編)

俺はモーテルの部屋のドアを開けボロボロの靴を脱ぎ捨て部屋に上がった、女はその靴を揃えて部屋に入ってきた。

「おまえ えらい行儀ええな」女は「当たり前でしょう、靴はちゃんと揃えて上がらないといけませんよ」
「いけませんよ!ってなー おまえ年上や思って偉そうに言うな!オマエ年なんぼや?」女は微笑みながら「16よ」     「・・・じゅじゅーろく?ほんまに16才か?」
 「そっ 大塚山女子高2年2組 坂本 美紀 16才でーす、ねぇねぇ 貴方の歳当てましょう か!えーっとねー 19才? どう あたり?」
女はまるで舞台の上で演技をしてるような身振り手振りをしながら喋る 「そ そうや19や おおまえ16でこんなとこいつも来てんのか」

女は身振り手振りをやめ部屋の隅にある安っぽい三面鏡のいすに腰をかけながら「ううん は じめて ・・・です・・・」「あ!それからわたしの名前は美紀です「オマエ」じゃありませ ん!」「貴方の名前も教えてください!」急に怒った口調で言った。俺は少し戸惑いながら「 何怒ってんねん、忙しい奴やなー、どない呼んだらええんや、美紀ちゃんか?」 女は「美紀」でいいよ

モーテルの電話が鳴った、受話器から「お泊りですか、ご休憩ですか?」
俺はジーパンの後ろポケットに手を突っ込みながら「休憩です」
「2時間で3,600円になります、今から御伺い致します」

電話が切れた、ジーパンの後ろポケットから出てきた金は、クシャクシャになった千円札一枚 と小銭が少し「しもた!今日ガソリン満タンにしたんや!」俺は心の中でつぶやいた「どうし たの で・す・か?」美紀がいきなり後ろから話しかけた。
「いや 別になんでもない」 美紀は俺の顔を下から覗き込むようなかっこうで「お金少しなら持ってるよ」と言いながら バッグから猫の絵を描いた財布を取り出し、小さく折りたたんだ1万円札を差し出した。

「ええのんか」  「いいよ」 チャイムがなった、 俺は小窓をあけ金を払い、お釣りと自分の持っていた金を美紀に手渡そうと差し出した 美紀は「いいよ 1万円の貸しデース、今度会う時に返して、そうーねー来週の日曜日!」
 「ああ わかった」と俺は言いながらも、2度と会うこともないかもと思っていた。
俺はソファーに腰を下ろしタバコに火をつけた、美紀が横に座ってきた、両手をソファーにつ いて下を向き自分の足のつま先を見ている、俺がタバコを消し振り向くと、美紀の体がピクリ と動いた、そしてこっちを見て急に喋り出した。

「マリちゃん、車の運転巧いよ、赤い車乗っているんだけど、休みの日によくドライブに連れて 行ってくれるの」
「マリちゃん一緒にいた娘か、赤い車?なんて車駆ってんのんや?」 「えーっと シビック、 マリちゃんは私より3才上で小さいころからよく遊んでもらっている の、知佳ちゃんはマリちゃんと同じ会社の人で、マリちゃんよりもひとつ年上って言ってた、 怒ったら怖いよーーそれから・・・・」彼女はいろんなことをしゃべり続ける、俺は彼女の肩 に手をかけた彼女は話を途中で止め下を向き体をこわばらせた。

出会った時とは別人のように今は16才少女に戻っていた。