四国八十八ヵ所《土佐の国》歩き遍路の旅
空海の史跡と自然を訪ねて

第5回 38番〜39番

 3月27日 土佐くろしお鉄道中村駅〜土佐清水市久百々(宿)  歩行距離19.5km
 昨夜に湊町を発った夜行バスが中村駅に7時過ぎ到着、前回サイクリングした後川左岸を春の芽吹きを見ながらゆっくりと歩く、冷え込んではいるが好天、遍路2回目の方と暫し同行、8時半、四万十大橋のたもとでみかんの接待を受ける。
 川辺を撮影しながら歩を進め、川と別れて321号線へ、500年前に京都から中村に下向した関白一条が京の都にちなんで始めた大文字を過ぎ、全長1620mの伊豆田トンネル内で土佐清水市に入る、トンネルを過ぎて直ぐの真念庵を訪ねる、四国遍路隆盛の基礎を作った真念法師が建立した庵で、落ち椿の石段を登る小さな庵だが歴史を感じる雰囲気、今回はデジタル一眼を持参したので久し振りに撮影感覚を味わう。
 ルート321号に戻りドライブイン水車で昼食、鮎が産卵する市野瀬川を過ぎ水量豊かな下ノ加江川沿いの足摺サニーロードを歩く、桜並木は2〜3分咲、桜木の根元の対の石仏ももう直ぐ花見が出来そう。
 海亀が産卵する下ノ加江海岸でゆっくり休息し今宵の宿「いさりび」さんに3時半着、新しい桧風呂が気持良かったし「土佐清水さば」のお造りは油がよく乗っているのにねちっこく無く少し甘みが有り美味しく頂いた。同宿者のお遍路さん4名、北海道や静岡の方々、春は出会うお遍路さんが多く賑やかでいい。

 3月28日 宿〜38番 金剛福寺(宿)  歩行距離20.7km
 
5時30分部屋の窓を開けて日の出を待つ、日の出を見るのが好きで拝すると新しい活力が漲ってくる、それが部屋の中から見れるのはすこぶる贅沢。海のブルー、水平線の白、赤から青へのグラデーションが美しい空、そして水平線の雲間から淡い紅の太陽を拝することが出来た。
 宿で頂いた弁当を背に7時半に出発、約1時間で大岐の浜に到着、砂浜が遍路道
(写真)、砂浜をなめる様に打ち寄せる白波の音を聞き、日光を浴び砂の感覚を確かめながらもくもくと歩く。歩き遍路の醍醐味。
 以布利港でシマガツオを捌いておられるおじいさんと立ち話、又、10数人が作業中なので覘いてみると沢山な10cm程の赤黒い干し魚、宗田カツオ(メジカ)で蕎麦やうどんの出汁に使われる宗田ぶしに加工されると聞かせて貰った。
 12時に窪津魚港の
見える高台で弁当を頂く、この陽気、景色も上等だが一人ではなんとなく淋しい。
 足摺岬に向けてひたすら歩く、途中で歩き遍路9回目の73歳男性に追いつかれる、軽やかな足取りで経験談もユニーク、お陰で疲れも感じずに2時半に足摺岬の金剛福寺前に着く。
 岬展望台、天狗の鼻、白山洞門を見学し38番金剛福寺を参拝、経内はお堂や塔、仏像が多く池も配し庭石も立派。小学生二人を伴った一家四人の参拝姿には感動、休みを利用しての遍路で5年目になるとの事ただ頭の下がる思い、宿坊で同宿となる。
 本堂でお札を納めると其処に錦のお札が ・・・ 納経所の方にお伺いした上で頂く、大事にしたい。
 37番岩本寺から80.7km、札所間の間隔が一番長い所,しかも我が家から一番遠い所だが、室戸岬で青年大師像を目にした時の、良く何処こまで歩いてきたという感動は無い、歩き慣れたということか?明朝にもう一度岬展望台に立ってみよう。

 3月29日 38番 金剛福寺〜土佐清水市久百々(宿)  歩行距離27.7km
 朝5時に展望台へ、満天の星空、東南の上空には下弦の三日月、暗闇を想像していたが湾曲している水平線が僅かに見える。灯台の明かりが水平線の僅か上と我を規則正しく照らしていく、海面には月光が走り多くの漁火が灯っている。波の音のみの静かな世界を眺めながら、この岬から小船に乗って船出して行った捕陀落渡海の人々の信じる力の偉大さを計りかねる。
 夜明けを待ちたかったが朝の勤行に遅れるので急ぎ戻る。勤行では孤独と慈愛について話された。
 7時半に打ち戻しに出発、途中の昨日より咲いている桜を愛でたり鰹節工場を見学したりしながらも同じ道は足取りも速く今宵の宿「久百々」さんに1時半到着、早過ぎるので荷物を置き明朝歩く予定の市野瀬まで8kmを歩き宿のご親切で迎えに来て貰い明日朝にはこの地点まで送って頂くことに。
 夕食はお遍路さん5人、金剛福寺への行き帰りで顔見知りの方もあり皆さん打ち解けてユニークな経験談など話が弾む、宿の女将がサッパリしてしかも気配り上手。

3月30日 宿〜39番 延光寺〜宿毛市平田(宿)  歩行距離19.3km
 
お接待といって「久百々」さんに頂いたお弁当は、おにぎり、果物、飲み物、お菓子と至れり尽くせりに感謝し同宿の女性と昨日歩いた市野瀬まで送って頂く、7時20分から歩き出し今宵の宿まで約20kmなので今日もゆっくりペースで女性との二人旅となった。途中で顔見知りになったお遍路さんとも合流したり賑やかな道中、桜、コブシ、桃の花など咲き出した田園をゆっくり歩く。
 9時40分には上長谷集会所、文旦を頂き一息、傍の天満宮には珍しく双対の狛犬が鳥居に陣取っている。三原村展示館で地元出身の写真家「野町和嘉」の写真展を見、美味しそうなので「ゆず茶」をお土産に。
 2時半には宿「鶴の屋」さんに、時間が早いので自転車を借り3.8km先の39番延光寺へ明日歩くが参拝しておけば落ち着いて帰路につける。多くのお遍路さんで賑わっている、心を落ち着け集中させて心身健全を旅の安全をそして妻の菩提を願う。
 経内で9人の顔見知りお遍路さんと挨拶を交わしたり納札を交換したりして、互いの旅の無事を願い合い宿に戻る。

 3月31日 宿〜39番延光寺〜土佐くろしお鉄道宿毛駅  歩行距離11.6km
 
宿「鶴の屋」さんに4畳半の大きな祝い凧、長男誕生の祝いで今も風習として宿毛に根付いている。「寿」と書かれた特別な土佐和紙と竹の手作り、2000メートルの魚網糸で作ったロープを使い20人掛かりで春3月頃に揚げられる(田植えが始まる前)。
 7時過ぎに出発、昨日自転車で参拝した39番延光寺へ、遍路道を歩き門前で、此れまで数々の修行を積ませてもらった修行の道場への別れとお礼に心を込めた。此処までの修行がどれだけ自分の身に着いているかは判らないが、変わったなと意識できることがある、今迄は何事にも先を急ぎ追い越すことに快感を得ていたが今は、人に出会えば道を譲りにこやかに挨拶をし、ゆったりリズムに心地良さを感じている自分に気が付いた。
 この四国を遍路道を歩く事で自然と身に着いてきたのではないか。少しは我慢強く成ったとも思う。
 延光寺から遍路道を歩み宿毛駅まで7.8km、時間に余裕が有ったので宿毛歴史館を見学、縄文時代から明治維新に至る宿毛の歴史を学んだ。
 此れにて土佐の国「修行の道場」16札所、約384kmを打ち終えることが出来た。18泊(車中3泊)20日間を5回に区切った旅であった。高知の自然や風土は自分の五感を揺さぶり、結果として心を豊かにしてくれた、大自然に融け込み弧の世界に浸ることも出来た。次回はいよいよ菩提の道場に入る。

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27日の歩行地図  (赤色表示)
真念庵へ
 
28日の歩行地図  (赤色表示) 昇陽の海

   
29日の歩行地図  (赤色表示)
             鰹節工場
 
30日の歩行地図  (赤色表示)  延光寺

   
31日の歩行地図  (赤色表示) 土佐しまんと鉄道