夢大和フォトギャラリー



四国八十八ヵ所《讃岐の国》歩き遍路の旅
空海の史跡と自然を訪ねて

第2回 78番〜88番

     
79番 高照院

      
         24年3月25日 JR丸亀〜78番郷照寺〜79高照院〜81番白峯寺〜宿(坂出市)   歩行距離 17.4km
       大阪湊町を7時15分に出発した高速バスは、予定より20分遅れてJR丸亀駅に到着。本日の行程時間に余裕が無く、準備運動
      もせずにペースを速めて歩き出す。78番郷照寺に12時半到着(4.1kmを40分)。
       参拝は手が抜けない、今回の旅で結願が無事成就出来るよう心を込めて願う。本堂の花のモチーフがとても綺麗。
       休息も取らずに79番高照院へ、途中の「弥蘇場の泉」を参拝、にわか雨に打たれるも14時10分に到着(5.9kmを70分) 赤い
      「三輪鳥居」と満開の彼岸桜が迎えてくれる(写真)
       次の順番は80番だが宿の都合で81番白峯寺を目指す。納経所で道を尋ねると横目で時計を見られる、泊まりを説明すると「頑
      張って」と教えていただく、少し不安がよぎったが80番から81番へは遍路ころがしの行程と聞いているのでこちらもきついとは思っ
      てはいるが、6.5kmだし2時間あればと歩き出す。4km程歩いた所で宿泊するかんぽの宿まで6kmの表示に驚く、だが遍路道は途
      中で車道から逸れて残り1kmの表示に胸を撫で下ろす。その1kmが全て石の階段、上を見てガックリ、途中で上を見てもまだ続く、
      10数段を区切りに登り終えては一息、此れを何度となく繰り返して山門へ16時20分に着く。
       やれやれも束の間、本堂への階段で両足が突っ張って痛む、この痛さは無理が出来ない、そろりそろりと登りやっとの思いで参拝
      を終える。無理をしたら足に来るとはこの事か。
       「かんぽの宿坂出」は標高300m、冷たさを堪え瀬戸内の夕景を写す(写真)、手がはじかんでフロントでの署名に苦労。それも天
      然温泉に浸かって癒し、瀬戸内海を橙色に染める落陽が見られるご馳走が頂けたので今日の苦労は帳消しだ。

             
       3月26日 宿〜82番根香寺〜80番国分寺〜83番一宮寺〜宿(高松市)   歩行距離21.1km
       雪の花が舞う冷たい朝、同宿の方と一緒になり82番根香寺へ7時40分出発。多少の登り下りはあるものの山道で歩き易い、
      十九丁分岐に8時40分根香寺へは9時10分に着く(5kmを1時間20分)、牛鬼の像もながめ十九丁分岐まで折り返す。
       80番国分寺へは下りの行程となる、遍路ころがしといわれている階段は登るにしろ下るにしろきつい。
       途中で珍しい岩石の勉強、@カンカン石、讃岐の名石で木づちで叩くと美しい音色を響かせる、一千万年前の火山活動の溶岩で
      奈良・大阪の境にそびえる二上山にも在るとは勉強不足。Aギョウカイカクレキ岩、これも火山活動の溶岩に火山灰が積もって出来
      た岩石、白く崖になって露出している(写真)
       12時に国分寺着(6.6kmを2時間)、境内は広く大きな松が目立つ風格漂う寺院、100円納めて奈良時代の梵鐘を打つ、
      ボワ〜ンと体内に沁みる音色に聞き惚れる。
       近くの「手打ちうどん三嶋」で昼食、しっぽくうどん定食をいただく、大根が美味しい聞くと当地の土壌にミネラルが豊富で美味しいと
      仰る。ゆっくりとさせて頂き83番一宮寺へ。
       この遍路道には遍路マークが無く心細いが、地図では東方に一直線で迷うことも無く15時半に着く(8.7kmを2時間)。
       今宵の宿「天然温泉きらら」へ、曽爾三山の一つ兜山に似た丸くて可愛い山容の山に真っ赤な夕日が沈む。2日続けて天然温泉
       で癒せる幸せ、夕食後、西の空に珍しく三日月を挟んで金星・木星が縦一直線に並んでいる、明日も天気が良さそうだ。
                   
       3月27日 宿〜84番屋島寺〜85番番八栗寺〜86番志度寺〜宿(さぬき市)  歩行距離26km
     
  今日は二つの山越えがあり所要時間が読にくいので6時半に出発、193号線を北へ朝日を右手に受けて何故か嬉しくなっている
      自分、朝の空気が気持ち良く歩も軽い。御坊川に沿って歩く途中、犬の散歩のご婦人に声をかけられ暫し遍路の話などしながら同
      行する、山容が平たく見えるのが屋島で隣が八栗山と教えていただく。
       屋島小学校辺りから急な登りに、地元の散歩の方々が屋島から降りてこられる、皆さんにこやかに挨拶していただく、自分はフウ
      フ云いながら「屋島御加持水」「食わずの梨」を過ぎ、高松市街を一望し9時半に屋島寺に着いた(14.1kmを3時間)。地元の方が
      仁王像や屋根瓦の仁王さんを誇らしげに教えてくださる。立派な風格のある寺院だ。大三郎狸にも挨拶し「獅子の霊厳」へ、晴れ渡 
      る空を映して小さな島を散りばめた瀬戸内海が眼下に、今読んでいる「平家物語」の壇ノ浦合戦場だ。れんがい茶屋でイイダコの
      煮物を食し10時40分85番八栗寺へ出発、直ぐに壇ノ浦の向こうに五剣山と庵治石採石場が見える、下ってあそこまで登るのか
      ・・・。
       屋島からの下りがまるで真っ逆さま、佐藤信継の墓まで25分間、足へのダメージが大きい。
       石の町牟礼に入り五剣山(八栗山)の麓に着く、「石の民族資料館」で採掘方法等見学、昼食を逆打ちお遍路さんとうどん屋でとり
       標高230mの八栗寺に登る、ケーブルもあるが歩き通したい。約20分、五剣山の峰を背に本堂が荘厳な佇まいだ。
       13時50分には打ち終えて(屋島寺から5.4km)出発、6.5km先の86番志度寺へ15時20分着、ユニホーム姿(野球)の小学生
      からお菓子のお接待を頂いてびっくり、母親と一緒の様子、お礼を述べる。
       今宵は「旅館栄荘」9人のお遍路さんと賑やかに食事を頂く、明日の88番へのルートを話し合う、女体山ルートは自分ひとりのみ、
      大丈夫かな?今まで大勢の方が通っているのだから大丈夫、何度と無く難所と言われる所を越えてきたじゃないかと自分にいい聞
      かせる。
       いよいよ後一日か札所にして2ヶ所、通し打ちの方が仰った「淋しい」と。

       3月28日 宿〜87番長尾寺〜88番大窪寺〜宿(さぬき市)  歩行距離22km
      
 宿で頂いた弁当を背に6時40分出発、今日の天候は変わりが早そうだ、84番〜86番まで海辺を歩いて来たがここから88番に向
      けて内陸部に向かう、先ずは87番長尾寺へ。
       一人で歩いていると色んな事を思う、その思いに何時か浸っているいる事がある、今迄の遍路道でお会いし又お世話になった地元
      の方々、お遍路仲間、皆な一期一会だがそのときの風景と共に懐かしく思い出している。
       8時15分に到着、短い7.0kmだった。何時もよりゆったりと参拝させていただく、境内の伽藍は質素な感じ、納経所の方が「いよい
      よだね」と仰っていただく。
       88番大窪寺へ8時50分に出発、南に向かって3号線に沿った遍路道を進む、途中の休憩所でで4人のご婦人遍路さんから草もち
      を頂き談笑。5.3km地点の前山お遍路交流サロンに10時10分着、思わぬ歓待を受ける、お茶、コーヒー、茶菓子に遍路歩き1200
      km完歩の証明となる「四国八十八ヵ所遍路大使任命書」を頂く。多くの遍路資料の中に中務茂兵衛の写真があった髭を蓄えた精悍
      な顔であった。奈良観光の話も出て楽しく40分程休憩させていただいた。
       栗栖神社を過ぎ栗栖渓谷を渡って山道へ、標高415mで休憩、風に打たれて汗が引きすっきりと、標高100m程下って車道に出
      た、女体山に取りついたのが12時35分、頂上まで1138mの案内あり暫くの後、女体山の岩場(写真)を登り頂上へは13時10分。此
      処からの下りが長かった、標高776mから大窪寺まで標高330mを下る。
       88番大窪寺へ14時に着くと同時ににわか雨が洗礼してくれた。流石に結願の札所、本堂の後背に女体山の峰がそびえ立つ尊厳
      な雰囲気。本堂天井に「いざリ車」が吊ってある(足の不自由なお遍路さんが乗ってお参りされた二輪の箱車)、架かっている大きな
      木の札が変わっている、「薬師如来本願功徳」の「薬」の字に右側の「く」が抜けている、「苦」が無いという意味か。納経所では奉納
      された方の思いだと教えていただいた。
       大師堂で最後の般若心経を唱えていて胸が詰まる、感情が込み上げてきている、一呼吸置いて慎重に参拝を終える。83番一宮寺
      から後になり先になりながら励ましあってきた倉敷のお遍路さんと記念写真を撮り合って結願成就となった。
       88番を終えた時に おみくじ を引こうと決めていた。『 吉 』 ・・・雪解け。ようやく草木の芽がでて春が訪れた運気です〜 と。
      《八十あまり 寺をめぐりて 大窪寺 このまま大師に帰依しまつらむ》覚次。
       時間的に帰れるが、ゆっくりと結願成就を味わいたく「八十窪」旅館で宿泊、夕食に赤飯で祝っていただいた。
       結願された方、逆打ちを始められる方と賑やかだ。「八十窪」の女将さん、花遍路 を経験されている、物資が不足していた昭和24
      年に3ヶ月かけて歩き終えられた。当時嫁入り前の娘がグループで遍路に出る風習があったそうで、又 口減らしの為に少しの米と
      水筒に藁草履を下げての遍路旅もあり< 私は花遍路でなく乞食遍路だった >と笑われた 80歳を越えて尚元気に旅館を切り盛
      りされている。最後に元気を頂いた。

       此れにて讃岐の国「涅槃の道場」23札所、約152kmを打ち終えることが出来た。6泊7日を2回に区切った旅であった。悟りの境地
      に至らなくとも起伏の多い遍路道は気力・体力を鍛えてくれたはずだ。
       
       同時に、四国八十八ヵ所遍路歩きが結願成就出来た。後日、東寺に1番霊山寺と高野山奥の院へのお礼参りとなる。
       約1年半前迷いに迷ったが、友人の後押しも頂いて自分を見つめ直す為にもと不安な気持ちで始めた歩き遍路、旅を続けるほどに
      歩き遍路の魅力に嵌り込んで行く、その魅力とは、非日常の世界に浸りきる。
      この世界は、永年守り継がれてきた弘法大師への憧れが息づく、四国の大らかで親切な人々と自然、そして遍路仲間達がおりなす
      風土が自分に語りかけてくる。
      時には優しく時には厳しく、為に自然と自分の五感(聲香味觸法)が全開する。この空気感の中に時として孤に浸りきっている自分
      を発見する。成るがままに任せている自分、成るがままに有るがままに委ねてしまう心地良さを何度となく体験させてもらえた。 
       自分を見つめ直すと言う事は自分を確認する事ではないか、歩き遍路の過程で体験への対処、感じ方に自分の本質が現れる。
      これが歩き遍路を続けているうちに、本質を知って悪しきことは薄められ鍛え直されていく。
       四国遍路は弘法大師に出会う旅と言われる、私ごときに出会うことは出来ないが、感動を受けた事象や受けた親切に喜びが込み
      上げてきたこと等は、弘法大師のプレゼントだと思う。
       弘法大師が招待していただいた今回の歩き遍路、何時の日か又招待状が届くだろうか。
      
           
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瀬戸内夕景  白い崖  85番八栗寺本堂と五剣山
                   
 女体山岩場
            
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