おちょくってんのか。
本気だったのによ・・・。
胸クソ悪ぃぐらい良い天気だ。
おまけに、さっきから鳴りっぱなしの鐘の音もまったくもって気に入らねえ。
「何をブツブツ言っているんだ。もうすぐ式が始まるぞ。」
「うるせえよ。」
肩に乗せられたシュラの手を振り切って、俺は指定された席についた。
パイプオルガンの音が静かに流れ始める。
ベタにワーグナーの『婚礼の合唱』なんか演奏するんじゃねえよ。
いっそ『葬送行進曲』にしてもらいてぇぐらいだ。
心の中でブツブツ言っていると、扉が開いた。
ああ畜生、見たくねえよ!!
俺の願いも空しく、花婿と花嫁がご入場してきやがった。
ウェディングドレスを着て、しずしずとヴァージンロードを歩く。
フン、ドレスは綺麗だな。
よくも笑顔で俺の横を通り過ぎれるもんだ。
んで、こいつか。
この俺を振ってまでお前が惚れ込んだ奴は。
初めて見・・・
市かよ!!!
こいつより俺の方がよっぽどイケてるだろ!?
それにこいつ未成年だぞ!?
大体俺は前から思ってたんだ!!
なんだよ、このモヒカンは!?この年齢不詳なツラは!?
、お前の趣味がマジ分からねえ。
そうだよ。
まったく全然これっぽっちも焦っちゃいなかったが、いつかお前と腕を組んであの祭壇に上がるのは俺だと思ってたんだ。
なのに、なのにだ!
その俺をよりによって教会の一番後ろの席に一人ぼっちで座らせて、ワケ分かんねぇ奴とイチャコラしてるとこ見せつけやがって。
一言言ってもいいか?
くたばっちまえ。
愛の誓いなんざ聞きたかねえ。耳を塞いでやる。
指輪の交換も見たくねえ。目を閉じてやる。
それからお前もう黙れ、サガ。
なんなんだ、その神父ルックは。
『夫』とか『妻』とか連呼するな!
眩暈がしそうだぜ。
そうだよ。
まったく全然これっぽっちも焦っちゃいなかったが、お前に指輪を贈る日をいつにしようか、密かに考えてたんだよ。
プロポーズの言葉もな。
お前と付き合いだしてから鏡に映る自分の顔が柔らかくなって、『俺もヤキが回ったな』なんて呟いてみたりもしたもんだ。
でもそんな自分が満更でもなかったんだよ。
『怖い顔しないで、笑って』なんて、あの優しい瞳はなんだったんだよ。
もう一度言ってもいいか?
くたばっちまえ。
式が終了して、野郎共が浮かれて拍手の嵐を送ってやがる。
バカかお前ら。
何がそんなにめでたいんだよ。俺はしねぇぞ。
市とがヴァージンロードを引き返してくる。
皆に笑顔を振りまきながら。
、俺はここにいるぞ!シカトすんじゃねえぞ!!
祝福の言葉に感動して、が涙を零す。
綺麗な涙だこって。
その喜びの涙が悲しみの涙にならなきゃいいけどな。
いや、マジで。
そうだよ。
もうすぐお前は俺の姿を見つけて、無邪気に微笑んで見せるんだろうな。
何て言おう?
『久しぶりだな。』
・・・いやおかしいか。
『おめでとう、なかなか男前な奴じゃねえか。』
・・・おめでとうはともかくとして、『男前』は無理があるな。
ああ、何て言やぁいいんだよ・・・。
「デス、来てくれてありがとう!」
「お、おう。あー・・・、その、おめでとう、。」
「っ、ありがとう・・・!」
「チッ、泣くんじゃねえよ。化粧が剥げるだろが。」
「だって、こんなに皆に祝福されて、嬉しくて・・・!」
そうだよな。
やっぱり幸せなんだよな、お前は。
祝福、しなきゃな。
「幸せになれよ、。」
「ん・・・」
これが最後だ。
せめて最後の涙ぐらい、俺に拭わせてくれよ。
「任せておくザンス!さんはこのヒドラ市が必ず幸せにするザンス!!」
・・・・・・。
待てコラ。
何普通に俺のハンカチで涙を拭いてやがるんだ。
テメェの為に出したんじゃねえよ!
おまけにハナまでかみやがったな!!!
・・・・・駄目だ。
やっぱり我慢できねえ!
「市、・・・。招待状、どうもありがとうよ。俺様のお祝いの言葉を受け取れ!
くたばれや!!積尸気冥界波ーー!!!」
「デス!デスってば!!」
「はっっ!!」
ん?ここは俺の部屋??
「どうしたの?うなされてたよ。」
「なんだ・・・、夢か・・・・。」
「大丈夫?はい、お水。」
「おうサンキュ・・・」
水を差し出してきたは、ウェディングドレス姿じゃなくていつも通りのパジャマ姿だ。
昨夜俺と一緒にベッドに入った時のままの。
「ちょっ、どうしたの!?」
「ビビッた〜〜・・・!!」
「何が!?ちょっと苦しいよ、離して・・・!」
「、お前は俺のもんだからな!」
「な、何、急に・・・。恥ずかしいこと言っちゃって・・・」
安心した途端、照れて頬を染めるに欲情しちまった。
あんな夢を見たせいか?
「ちょっとデス!!朝っぱらから止めてよ!!」
「ちょっとだけ、な?」
「執務に遅れるから!駄目っ・・・あっ!」
他の野郎なんかにはぜってー渡さねえ。
勿論、市なんざ論外だ。
、お前は俺のもんだからな。
覚悟しとけ、コラ。