Sweet Valentine




今日はバレンタイン。
女性から男性へ愛を告白する日。



 は、昨日大奮闘して作り上げたチョコの箱を持ち、教皇の間へと向かった。
定例の会議の後、12宮を守る黄金聖闘士達に配る為である。



「おはようございます!」
会議室へと到着し、颯爽と中へ入る。

「ああ、おはよう。」
「おはよーっす!!」
「おはようございます。」

既に到着していたサガ・ミロ・ムウが、に声を掛ける。


「あれ、?その袋は何だ?」
の荷物にいち早く目をつけたミロが尋ねる。

「これ?ふふふ、今は内緒。会議の後でね。」
「何だよー!!教えてくれてもいいじゃねーかー!!」
「だめーー!!」
「こら止めないかお前達!」
「その辺にしておきなさい。」
子供のように室内を走り回る二人を窘めるサガとムウ。


そうこうしているうちに、他の黄金聖闘士達も続々とやって来た。

「はよーっす。お?にミロ、テメェら何暴れてんだ?」
「全く朝から元気な奴らだな・・・。」
「子供じゃあるまいし、いい加減にしたまえ君達。」

追いかけっこをしているミロとに、デスマスク・シュラ・シャカが呆れたように声を掛ける。



「さぁ、そろそろ会議を始めるぞ!!全員席について!!!」
サガが手を叩いて全員に呼びかける。
全員席について落ち着いたところで、定例会議が始まった。






「・・・・以上だ。何か他に連絡事項のある者は?・・・、よし、なければこれで会議を終了する。ご苦労であった。」


会議が終り、皆思い思いに伸びをしたり肩を鳴らしたりしながら席を立つ。
ミロがの方へ歩み寄り、さっきの続きを持ち掛けた。

「なぁ。さっきの荷物なんだよ?会議終わったぞ。」
「そうね。じゃあ、はい、ミロ。」

そう言って手渡されたのは、赤い包装紙の小さな箱であった。

「これ俺にくれるのか?」
「そうよ。どうぞお納め下さいませ。」
「やっほー!!ありがと〜!」

ミロは大喜びで包みを解く。
他の聖闘士達も何事かと寄って来る。

「なんだそれ?ミロにだけかよ!?」
デスマスクが不満そうに言う。

「ちゃんと皆の分もあるわよー。はい、どうぞ。」

皆にミロと同じ包みを一つずつ手渡す
皆、他の連中と同じなのかと少々がっかりするも、やはり喜びが勝ったようで、嬉しそうに顔が綻ぶ。
ミロと同じくその場で包装を解く者、大事そうに懐にしまい込む者、様々である。


「おおー!美味そうなチョコだなーー!!」
箱の中身は、お手製の生チョコであった。
箱を開けた者は皆その場で食べ始める。

「うん!美味い美味い!!」
「甘過ぎない味がいいな。」
「とても美味しいよ、ありがとう。」
「そう?気に入ってもらえて良かった〜!作った甲斐があるわ。」
皆に口々に褒められて、照れながらも嬉しそうに笑う


「そうか、今日はバレンタインだったな。」
とアルデバランが今更のように言う。

「そうよー。だからいつもお世話になってる皆へ感謝と親愛の情を込めて、ね。皆私にとってかけがえのない人達だから。」
が返答する。


自分一人へ向けられた特別な愛でないのは少々残念だが、それでもが自分を好いてくれていることは分かった。
皆同じような気持ちであるのだろう、全員の顔が柔らかくなる。


、バレンタインの由来は知っているか?」
とサガが尋ねる。

「ううん。何?何かあるの?」
と訊き返す

「いや、知らないならいい。ちょっと聞いてみただけだ。」
「そう?なんか気になるな〜。まぁいいか、じゃあ私急ぎの仕事があるからこれで!」
は皆より一足先に会議室を出て行った。






「バレンタインの由来、か。」
カノンが意味ありげに兄の顔を見る。

「本当は確かこんな浮かれた日じゃなかったよな?」
「ああ。」



3世紀のローマ帝国の皇帝が、愛を説いた司祭を処刑した日。
愛する者を持つと戦闘意識が低下するからと、兵士達の結婚を禁止した皇帝に逆らって、密かに彼らの愛の成就に手を貸した司祭の命日。


「ローマの兵士達と我ら、似ていると思わんか?」
「へっ、昔はそうだったかもしれねぇがな。今は違うぜ。一人守れねぇで何が黄金聖闘士だ。」
「ふむ、蟹にしては珍しく良い事を言うではないか。私も同感だ。」
「ふっ、しかし君達では力不足だ。は私が守る。」
「それは私の台詞だ。」



確かに自分達はその兵士達のように生きてきた。
愛する者を持てず、人間の当たり前の悦びに背を向けて。
しかし今は違う。
の存在は決して弱点になるだけではない。
の為に今よりもっと強くなれる。なってみせる。



「ひとまず今年の勝負は引き分けだな。」
「来年に持ち越しってわけか。」
「来年は俺様の一人勝ちだな。」
「ほざけ蟹。」
「あなた方には渡しません。」


そこかしこでバチバチと火花が飛び散る。
来年のバレンタインまでにはの全てを独占してみせると、その場の男達は全員心に誓った。




back



後書き

やってみました、バレンタイン(ヘボヘボ)夢。
出る人数が多くなると難しいですね。管理人の好みで蟹の台詞が多くなってしまいました(笑)。
んー、逆ハーは難しい!!精進いたします。