SECOND LOVE




穏やかな声も、温かな笑顔も、全てを包み込んでくれるような優しさも、全部大好き。
でも、それだけじゃ満たされない。
私は貴方が思う程、何も知らない子供じゃない。
この身体に触れて欲しい。貴方の温もりを肌で感じたい。
貴方が優しければ優しい程、私は本当に愛されているのかどうか分からなくなる。




真夜中過ぎの聖域はひっそりと静まり返っている。
数週間の任務をようやく終えた童虎は、久しぶりに聖域へと戻って来ていた。
の顔を見たいが、もう時間が時間である。
諦めようとしたその時、童虎の目に信じ難い光景が飛び込んできた。

灯りの消えているの家から、デスマスクが出てきたのだ。
着崩したシャツを整えながら。

強烈な衝撃が童虎を襲う。

― まさか、に限って。あの娘はそのような娘ではない!

しかしこの状況で何をどう信じろというのか。
とめどなく湧き上がる猜疑心に、今まで抑え込んできた想いが音を立てて崩れ落ちる。

― こうも簡単に他の男に奪われるくらいなら・・・


童虎は思い詰めた表情での家のドアを開けた。




暗い室内を通り過ぎ、童虎は静かに寝室の扉を開いた。
カーテンから漏れる月光がの寝顔を柔らかく照らしている。
童虎は固く拳を握り締め、に近付くと聖衣を脱ぎ捨てた。
その音でが薄らと目を開く。

「んん・・・・、あれ?童虎?どうし・・・んっ!!」

突然噛み付くような口付けを与えられ、は完全に覚醒した。
童虎は逃れようともがくに圧し掛かり、ベッドに押さえ込む。

「ちょっと!やっ・・・!んぅ!」

上掛けを引き剥がし、唇を貪りながらパジャマを乱す。
眼前に初めて晒された白い肌に既に他の男が触れたかと思うと、気が狂いそうになる。
童虎は、もはや己でも止めることの出来ない欲望のままにその肌を味わった。

「はっあぁ、んっ!」

男の痕跡の残っていない胸を、苛立ちをぶつけるかのように愛撫する。
まるで潔白を証明しているかのように綺麗な身体が腹立たしく、
そしてどうしようもなく愛しい。

「んぁっ・・・、ふっ、ぅ、あぁ!」

胸の先端に与えられた強い刺激に、が甘い声を上げる。
他の誰でもない、お前はこの儂のものなのだと言わんがばかりに、童虎はその突起を執拗に攻め立てた。
舌で強く押し潰し転がす度に、其処は固く尖っていく。
ふんわりと温かかったの身体が、急速に熱を帯びてしっとりと汗ばんでくるのが己の肌を通して分かる。

「はっあ・・・、童虎・・・!」

己の胸に顔を埋める童虎を、は潤んだ瞳で見つめた。
その瞳に益々劣情を覚え、童虎は淡い茂みに手を這わせる。

「やぅっ!あぁん!!」

既に潤っている秘部を弄り、小さな肉芽に蜜を擦り付けて刺激を与える。
それに同調するようにの嬌声が上がる。
撫で上げる度に跳ね上がる腰を押さえ付けて、童虎はただひたすら敏感な核を苛んだ。

「あうっ!んっく・・・、はっ、あっ!」

戦慄く太腿は、その中心に刺激を受ける度ゆるゆると開かれていく。
小刻みに震える膝を抱え上げて秘部を露にすると、先程の執拗な愛撫ですっかり濡れそぼった中心に口付けた。

「ふぁっ!!んう・・・、くぅっ、あっあぁん!!」

吸い尽くしきれない蜜が唾液と混ざって下方へ流れ落ちていく。
物欲しげに蠢く中心に栓をするように己の舌を差し込み、内壁を舐め上げる。
熱い内壁が己の舌を締め上げる感触に酔いしれ、童虎は舌を抜き去ると代わりに己の無骨な指を2本挿入した。

「はぅ!うっん・・・あぁっ!!ハァァ・・・!!」

淫らな水音がいやに耳を打つ。
指を根元まで捻じ込んだ後そのまま規則正しく奥を突いていると、の声に益々艶が出る。
その甘い声をもっと引き出そうと激しく内部を掻き回しているうちに、は一際細く高い声を上げて絶頂に達した。


肩で息をするの身体から指を抜き去ると、童虎は己も一糸纏わぬ姿になり、ぐったりと俯せるに再び覆い被さった。
の腰を高く持ち上げて、既に先走る欲望に濡れた己の分身をその花弁に押し付け、一つになろうと試みる。
しかしはそれを拒んだ。

「待って、待って童虎!!」
「何故じゃ、儂を受け入れるのは嫌か?」

― もはや儂など愛してはおらぬのか!他の男が良いと言うのか!!

非難の言葉が喉まで出掛かる。
しかし童虎はの意外な言葉でそれを飲み込むこととなった。

「違う、童虎の顔が見たいの!ちゃんと私の顔を見て抱いて欲しいの・・・!」
・・・・」

感情が昂ったせいで、の両方の瞳から涙が一粒、また一粒と零れ落ちていく。
その表情に後ろめたさはない。

― 何故だ、では何故デスマスクなどに・・・

混乱する童虎の様子に気付くことなく、はその身体を童虎の胸板に投げ出した。

「ずっと、言い出せなかった・・・。童虎、私のこと・・・、嫌い、なんじゃ、ないかって・・・!」
「そんなわけがなかろう。何故そのような・・・」
「ひっ・・・、だって・・・、童虎、いっつも、優しくて・・・、でもっ、っく・・、それだけで・・・・」

童虎に優しく背中を摩られて、の嗚咽が激しくなる。
感情的になっているせいか、いつになく子供じみたその様子にますます愛しさがこみ上げてくる。

「それだけじゃ、ヒック、嫌なのに・・・、でもそんな事、言ったら・・・、厭らしいって、グスッ、言われるんじゃ、ないか、って・・・!」
「そんな事を言うわけがなかろう・・・。だが儂が悪かったな。お前にそんな思いをさせていたとは知らなんだ。許してくれるか?」
「ん・・・・」

童虎は涙に濡れたの頬に軽く唇を押し当てた。
啜り上げながらもくすぐったそうに笑うに、一旦治まった熱が再び頭をもたげてくる。

、どうやらもう抑えきれんようだ。抱いても・・・良いか?」
「ん、抱いて・・・」



お互いの顔を見つめ合って一つになる。
これ程自然で素晴らしい愛の行為を、何故今まで退けていたのだろう。
童虎は自分の下で喘ぐの顔を見ながら、己の浅はかさを後悔していた。

何を躊躇う事があろう。
儂はを愛している。そしても儂を愛している。
それ以上に必要な理由など無いではないか。

己の持ち合わせている愛を全て与えるように、深く強くを貫く。
身体を開いて全てを受け入れてくれるを慈しむように、何度も何度も接吻を与える。

「あん、あぁん!んぅ・・・、童、虎・・・!」
・・・・・・!」

うわ言のように互いの名を呼び合い、言葉では伝えきれないもどかしい気持ちを互いの身体にぶつけ合う。
愛しさと快感が相乗し、急速に高みへと昇りつめる。
そして一際最奥を激しく突き上げた後、二人して絶頂の彼方に溶けていった。




「儂が何故今までお前を抱こうとしなかったか、聞いてくれるか?」
「うん。」
「儂はな、臆病になっとった。肉体の年齢こそお前より下だが、儂はもう気の遠くなるような年月を生きて来た。愛し合う悦びもとうに忘れたものと思っていた。」

を胸に抱きながら、童虎は罪の懺悔をするように語って聞かせた。

「それを思い出させてくれたのが、お前だ。だが心の何処かで儂はお前に相応しくないと、そう思っておったのだ。」
「そんな事思ってたの・・・」
「儂と違い、お前は普通の娘だ。相応しい男が幾らでも居る。そう思ったらお前に軽々しく触れることが出来なかったのだ。」

じっと見つめてくるに柔らかく微笑んで、童虎は話を続けた。

「ところが、さっきここからデスマスクが出てくるのを見て、儂は頭に血が昇った。ホッホ、年甲斐もなく恥ずかしいわい。」
「それってまさか・・・」
「そうじゃ、嫉妬などという感情がまだ己の中に残っていたとは知らなんだわ。おまけにそれにすっかり流されてしもうた。」
「あのね、その事なんだけど・・・」
「まあ最後まで聞いてくれ。儂はそれを見て、己の守ってきたものが儚く消えてしまった気がしたのじゃ。簡単に他の男に攫われるくらいなら、己の下らない道徳心などいっそ捨ててやる、そう思ったらもう自分を抑えきれんかった。」
「童虎・・・」
「済まんな、己の欲望のままに狼藉をはたらいてしもうた。愚かな儂を許してくれるか?」

罪を乞うような童虎の眼差しに、は不謹慎だと思いつつも嬉しさを覚えた。

「許すも許さないもないわよ。私がもっと早くに自分の気持ちをちゃんと伝えればよかったのにね。私こそごめん。」
・・・・」
「それにね、童虎誤解してるわ。デスとは何でもないのよ?」
「何だと?」
「寝てたら急に来てね、風呂が壊れたから貸してくれって言われて、バスルームを貸しただけよ?」
「何と!?それはまことか!?」
「うん。信じて貰えないかも知れないけど、本当なの!」
「・・・・プッ、はっははは!!」

突然大声で笑い出した童虎を見て、は不安そうに首を傾げた。

「あの、童虎?どうしたの?」
「はははは!!・・・いや、何でもない、・・・わっはははは!!」
「ねえ、怒ってるの?やっぱり信じられ・・・ない?」

不安そうに見上げてくるの頭を軽く叩いて、童虎はようやく笑いを引っ込めた。

「いやいや、そうではない。お前の顔を見れば分かる。その目は嘘などついてはおらん。それより儂の馬鹿さ加減が我ながらおかしくてのう。」
「そう・・・かな?」
「ああ。あのような小僧に一瞬でも本気になった儂もまだまだ青いのう。」
「そんなに嫉妬してくれたなんてちょっと嬉しいな。あ、ごめん・・・」

失言だったかと口籠るの額に口付けて、童虎は大らかな笑みを浮かべた。

「良い良い。これからは儂も己にもっと正直に生きるとしよう。もう二度と寂しい思いはさせんと約束する。」
「童虎・・・・」


心の底に押し込めていた想いを打ち明けあい、これでようやく真の恋人同士になれた気がする。
同じ気持ちで接吻を交わし、二人は再びシーツの波に沈んでいった。




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後書き

『童虎が嫉妬する』話でお送りいたしました。
友情出演はデスマスク。どこでも出てますデスマスク。だって使い易いんだもの。
『嫉妬』に思わず我を忘れた童虎を書いてみたつもりなのですが、
ヒロインの不満を絡めてみたので、イマイチ味が薄めになりました(汗)。
おまけに本番シーン短か!!
ノン様、リクエスト有難うございました!!