ノックは無用




やれやれと一息つく休日。
そんな日、最近の俺は自分の部屋に居る事が多い。
一人で?そんな訳ないだろう。
これでも部屋に遊びに来る恋人ぐらい居る。



「お邪魔〜♪」
「邪魔するなら帰れ。」

自分で言うのも何だが、俺も素直とはかけ離れた性分をしている。
これは只のジョークだ。歓迎の裏返しのな。
も分かってはいるようだが。

「まあ適当に寛げ。」
「うん。もうそうしてる。」

早々とクッションを背中に敷き、俺の寝そべっているベッドに凭れてリラックスしたように座るに少し苦笑して、俺はが来るまで読んでいた本を放り出した。
続きはまた今度だ。

折角の休日に大人しく部屋にすっこんでいられるのも、いわばのお陰。
気を悪くした様子もなく、休日毎にせっせと訪ねて来てくれるに感謝だ。
何?失礼な。俺にだって感謝の気持ち位はあるんだぞ。








、どこか出かけたいか?」
「う〜〜ん・・・・、今日は別に良いよ。買い物も必要ないし、外暑いし。」
「そうか。」

引き篭もりか何かのように思われているかも知れないが、俺達は外にもそれなりには出かける。
ただ・・・・・・


「サガは?」
「居たよ〜。忙しそうだったけど。何か調べ物があるとか言って、テーブルの上書類だらけだった。」
「フン、休日だというのに呆れた奴だな。」

ただ、問題は部屋の内外ではなく、俺の同居人なのだ。
身体の中に鉄骨でも通ってるんじゃないかと思う位の堅物な双子の我が兄。
こいつがとてつもない邪魔者なのだ。

奴は俺がの家に行こうとすれば、必ず邪魔をする。
俺がふしだらな行いをに施すと決め付けて、か弱い女を悪漢から守る正義の味方よろしく、それはもうえげつないやり方で俺の邪魔をする。
俺達二人の関係を知っての上でだぞ。

だから泊りなんて以ての外、俺の苛々は募るばかり。
百歩譲ってこの双児宮で会うのは構わんと、それだけは認めやがったが、それは己が目を光らせていられるからという理由なのだ。
大体、何故俺がと会うのに、いちいち奴の許可と指示を得ねばならんだ。


ならばとことん対峙すれば良いだろう、だと?
フフン、甘いな。俺は別の方法を取る事にしたのだ。
俺は何故奴がそこまで俺達の邪魔をするのか、その理由を知っている。

何も力で渡り合うだけが術ではないのだ、ククク。







ふと見れば、は俺の放り出した本をパラパラと捲っている。
俺はに分からないように口元を吊り上げると、何気なくその髪の一房を手に取った。

手に取って、軽く口付けてみる。
は気付いているが、擽ったそうに目を細めるだけで本から目を離さない。
このまま戯れ続けていれば、その内は笑って窘めて来る筈だ。
今までの何回かがそうだったからな。

だが、今日という今日は俺も少しばかり本気だ。
が俺に注意を払わない内に、俺はのTシャツの襟元からそっと手を差し入れた。


「ちょっ・・・・、何してるのカノン!?」
「皆まで言って欲しいのか?」
「そ、そうじゃなくて!」

がうろたえている隙に、俺はをベッドの上に引きずり上げた。

「大声を出すとサガに気付かれるぞ。」
「じゃあ止め・・・んんっ!?」

つれない事を言う唇をキスで塞ぎながら、俺は確実にを捉えていった。
身体のラインをなぞるように撫で上げ、キスを深いものに変えていけば。

もうは抗わない。





「あ・・・・ん・・・・・・」

服の上から胸を弄り、首筋にキスの雨を降らせてやると、段々その気になってきたのか、は俺の下でくぐもった声を上げている。
それでもとにかく声が外に漏れないようにと、それだけに気を集中させているのが分かる。
気持ちは分かるが、もう少しこっちにも集中してくれ。
そう言わんばかりに、俺はの服を脱がせようとした。


「駄目っ・・・・・!」
「何故だ?」
「だってサガが居るんだよ!?」

サガなど関係ない。奴がその気なら、こちらも受けて立ってやる。
別に見られたい訳ではないが、最悪見られたら見られたで、奴に思い知らせる事が出来る。
どんなに邪魔をしても無駄だと。
そうだ、奴が俺達の邪魔をするのは私怨、を俺に取られて面白くないと思っているからだ。
流石に横槍を入れる度胸はないようだが、内心悔しがっているのは確かだろう。

だが問題は
俺のこんな思惑を知れば、は烈火の如く激怒する。
となれば・・・・・・。


「なら、こうすれば良いだろう?」

暫く考えて、俺はその考えを実行した。
Tシャツを胸の上まで捲り上げ、ブラジャーのホックを外し、シャツ同様上に捲り上げてやる。
胸だけを大きく露出させられた格好に、は恥ずかしそうな声を小さく上げたが、それがより俺を煽る事を知らないのか。

「なかなか良い格好だぞ。全裸よりある意味そそるな。」
「馬鹿っ!何が『こうすれば』よ!そうじゃなくて・・・」
「最初に断っておくがな、俺は止めんぞ。これならサガがやって来ても、すぐ服を下ろせば誤魔化せるだろう?」

俺の自信に満ちた笑みを見て、はわなわなと口元を震わせた。
呆れて物も言えんといった顔だな。それは光栄だ。
俺は気にせず、触れてと誘うように屹立したその先端に吸い付いた。


「ふっ・・・あ・・・・・!」

びくんとの肩が強張る。
その反応に気を良くして、俺は更に其処を刺激し続けた。

「あっ・・・ん、あっ、ぃ、やぁ・・・・・!」
「嫌がってるようには見えんがな。」
「やんッ!」

対象を反対側の突起に変えて、俺はを攻め立てていった。
痛そうな程に固く立ち上がった突起が、俺の舌に何とも言えない感触を与える。

その内に、がしきりと身を捩るようになった。
そろそろ本格的に火がついてきたようだ。
さあここからが本番だと、俺はふわりとベッドに広がっているのスカートの中に手を入れ、下着だけを脚から引き抜いてやった。



「あ・・・・・やぁ・・・・・・・」

つ、と触れた其処は、既にとろりとした滑りを帯び始めていた。
秘裂の間に指を滑り込ませると、俺を迎え入れる部分が意思を持っているようにひくりと蠢く。
スカートが邪魔だ。
すっかり剥ぎ取ってしまいたい衝動に一瞬駆られたが、ここは我慢しておく方が得策だろう。

羞恥も過ぎれば頭が冷える。
ここでを正気に戻させるような真似をすれば、もう二度とこういう状況では抱かせてくれなくなるだろう。
それどころか、ヘソを曲げて当分触れさせてくれなくなるやも知れん。
だから、今日のところは控えめに。

一瞬でそういう答えを出した俺は、あくまで紳士的にに触れた。






「は・・・・、あぁん・・・・・・」

俺の指を二本根元まで飲み込んで、が甘い声で喘いでいる。
大きな声が出ないように、俺の胸に顔を押し付けているのが何ともいじらしい。
そんなささやかな努力に協力してやるように、緩やかな動きで内部を掻き回しながら、ふっと笑みを漏らしたその時だった。


コンコン、と俺の部屋のドアがノックされた。



「!!!」

お前は野良猫かと思う程俊敏な動作で身を引き、瞬く間にTシャツを下ろすに呆れながら、俺もの中から指を引き抜いた。
その途端は床に滑り下り、座った姿勢を取る。
俺は寝そべったままだから楽で良いが、は何やら忙しそうだ。
とにかく、俺達が一連の動作を終えるまでに要した時間、およそ三秒。

その更に一秒後、開いたドアからサガが顔を出した。



「サガ。どうしたの?調べ物は終わり?」
「いや、まだ途中なのだが、コーヒーでも淹れようかと思ってな。お前達はどうだ?」
「ありがとう〜!頂きま〜す♪」
「何が良い?」
「じゃあカフェオレで!」

おいおい、そんなに早く素に戻られてもな。
そうぼやきたくなる程、は恐ろしい位普段通りの態度を取った。

「カノン、お前はブラックで良いのか?」
「・・・・・・ああ。」

まさか、これで終わりか?
ちょっと待て、俺はまだ何もしていないんだぞ。
猛烈な不愉快さを必死で押し込めながら、仏頂面で返事をした。

だが、まだそう捨てたものでもなかったようだ。




「サガ様ーーーっ!!!」

玄関の方から、馬鹿でかい声が飛んで来た。
多分雑兵の誰かだと思う。
そう広くはない我が家、そんなにデカい声を出さなくても聞こえるのだがな。

「何だ!?」
「お休みのところ申し訳ありません!!大至急お聞きしたい事がございまして!!」
「分かった、すぐに行く!!」

それでまたサガも釣られて大声で返事をするものだから、五月蝿くて敵わん。
おい、どうでも良いが俺達は忙しいんだ。
馬鹿でかい男共のダミ声で邪魔をするな。

「済まんな、。コーヒーは少し待っててくれ。」
「良いのよ、気にしないで!」

に手を振られながら、サガは忙しげに行ってしまった。
全く、見ている方が疲れる男だ。
だが、とにかくこれで邪魔者は消えた。
でかしたぞ、雑兵。何の用か知らないが、精々時間を稼いでくれ。

俺は勝者の笑みを浮かべると、ベッドサイドのボードから避妊具をそっと取り出した。







、こっちに来い。」
「え?ちょっと・・・・・、待って。まさかまだする気!?」
「『まだ』ではなくて、今からが本番だ。」
「サガがいつ戻って来るか分からないのよ!?」
「大丈夫だ、そうすぐには戻って来ないだろう。休みのところわざわざ呼びに来たのだ。それなりに緊急で重要な用だと思わんか?」
「それは・・・・、そうかも知れないけど・・・・」
「ゴタゴタ言わずに上がれ。」

俺は力にものを言わせてをベッドの上に連れ戻すと、逃げられないようにその両脚を開き、身体を滑り込ませてから避妊具を着けた。


「ちょっと・・・・、本気!?」
「本気だ。このまま終わっても、お前もすっきりしないだろう?」

再び触れたの秘所は、まだ幾分潤いが残ったままだった。
また元の通りに服を捲り上げ、もう一度火をつけてやるように花芽を擦ってやると、が小さく声を詰まらせる。
消えかけた火を燃え上がらせるのは容易い事だ。
幾度か繰り返す内にあっという間に元の通り蜜が溢れ出したのを確認して、俺は一息にを貫いた。


「んああッ・・・・・!」
「シッ、大きな声を出すな。」
「だって・・・・・ああッ・・・・・・・・!」

は俺の下で、尚も切なげな喘ぎ声を上げた。
まあ、この状態で声を出すなという方が無理な相談なのだが。

「あっん・・・・、あっ、はぁッ!んくっ・・・・・!」
「そうだ、声を抑えていろよ。大きな声を出すと、サガが何事かと飛んで来るぞ。」
「馬鹿・・・ぁ・・・・・!そんな事・・・・・、言わな・・・・うっ・・・・・」

静かにしろと諭すより黙らせた方が早いと踏み、俺はの唇に深く吸い付いた。
顔の角度を少しずつ変えて口内を弄るように口付けてやれば、はもう声など出せない。

「んぅ・・・・・っ・・・・・、ふっ・・・・・・・・!」

とろんと閉じた瞼がやけに色っぽい。
上半身を包むように強く抱いてやれば、の腕が縋り付いて来るように俺の背中に回る。
例えばこれが行きずりの女だったとしよう。
そうしたら、こんな抱擁は邪魔なだけだ。

だが・・・・・、いや、皆まで言うのは止そう。のろける事になるからな。
とにかくまあ・・・・・、何と言うか。

俺達は愛し合っているのだ。



「はっ・・・・・・、あっ、あぁんっ・・・・・・・・!」

だからつい俺も加減を忘れて、を激しく揺さぶってしまう。
一ミリでも深く繋がりたいと腰を突き出し、目についた肌のあちこちに口付けて。

もっと乱れた姿が見たい。
俺以外に何も感じられなくなったが見たい。

次第に焦げるように強くなって来た快感と劣情に任せて、俺はの身体をぐいと抱き起こした。



「きゃっ・・・・、あっ!!」

それと入れ替わりに、今度は俺がベッドに仰向けになる。
は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに強い衝撃に負けて背筋を反らせた。

「あぁぁっ!やっ・・・あんんっ・・・・・!」

引力の法則に従って沈んだ腰の奥には、俺の楔が深々と突き立てられている。
こうして下から突いてやると、俺好みの良い声で鳴くのだ、は。

「あっん、駄目・・・ぇ・・・・・!やぁぁッ!」
「シッ・・・・、静かにしろと、言っただろう・・・・・?」
「ぅッ・・・・、く・・・・・・・・」

しかし残念なのは、それを存分に聞けない事だな。
慌てて自分の手で口を覆ったを見て、安心するやらガッカリするやら。
だが、これも仕方あるまい。
サガに見られても良いとは思ったが、今は流石に宜しくない。
男とは、こう見えてナイーブな生き物なのだ。



「はっ・・・・う・・・・・・!ううっ・・・・・!」

俺がの腰を掴んで揺さぶりをかけてやる度に、の手にどんどん力が篭っていく。
苦しげに寄せた眉とくねる腰、揺れる胸に目を奪われて堪らなくなった俺は、鋭くを突き上げた。


「ひっ・・・・・・・・!」

その瞬間、は裏返った小さな悲鳴を上げて身を竦ませた。
この細い腰の何処にこんな力があるのか不思議になる程、の内部が俺を強く締め上げてくる。

「ぅっ・・・・・・・・!」

それに僅かばかりの抵抗を何度か繰り返して、から少し遅れて俺も絶頂を味わった。






とくん、とくん、と己が脈打っているのが分かる。
こんなに無心になれる瞬間も、こんな時位しかあるまい。
時折小刻みに痙攣するの中に温かく包まれて、俺は満ち足りた瞬間を過ごしていた。

そんな時だった。


コンコン、と俺の部屋のドアがノックされた。
またしてもだ。



「!!!」

は顔面を蒼白にしてオタオタとうろたえているが、今は先程とは状況が違う。
無闇に身体を離す事も出来ず、取り敢えずまた服と乱れた髪を整えて。
俺はやはり寝そべったままだから楽で良いが、は相変わらず一人で大変そうだ。

とにかく、が一連の動作を終えるまでに要した時間、またもやおよそ三秒。

その更に一秒後、開いたドアからサガが顔を出した。



「済まなかったな、思ったより長引いてしまった。」
「ああ、良いのよそんなの!」
「それより・・・・・・、何をしているのだ、お前達?」

至って普段通りのに、サガは訝しそうな目線を投げ掛けた。
それはそうだろうな。
俺の上に跨ったままなのだから。

「えっ?別に何でもないよ〜。」

この状況ですっ呆けるとはやるじゃないか、
スカートで隠せているとはいえ、俺達はまだ繋がったままなんだぞ。
何かにつけてすぐにビビる癖に、意外と肝っ玉が座っている所もあるんだな。


「あのね、カノンがね・・・・・」
「うむ、カノンがどうした?」
「カノンが・・・・・、その・・・・・・、あ、脚が攣ったって。」
「脚?」
「そう!脚が攣って痛い痛いって騒ぐから、私がマッサージしてたの!ねっ、カノン!?」
「ああ。」

笑い出したいのをどうにか堪えて、俺はひとまず調子を合わせておいた。
度胸は認めてやるが、は嘘が下手だからな。やはり感付いたか?
しかしサガは、怪訝そうな顔をしながらも渋々納得したように頷き、リビングへ来るよう言い残して去って行った。




サガが行ってしまった後、は安堵したように深呼吸をした。

「・・・・焦った〜〜!!どうしようかと思っちゃった!!」
「ククッ、まさかお前に本当の事は言えんだろうからな。」
「当たり前でしょ!?」
「しかもまだこんな状態だという事がバレていたら・・・・・、大変だったな?」

他人事のように笑って言って、俺はまた少しだけの腰を揺すってみた。

「んっ!」

はまたあられもない声を小さく上げたが、やがて顔を真っ赤にして・・・・・。




どうなった、だと?皆まで言わせる気か?



とにかくまあ・・・・・、何と言うか。




その後頬の痛みを堪えて、リビングで何食わぬ顔をしてコーヒーを飲むのに一苦労だったというところだ。
それから、のご機嫌取りにもな。




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後書き

『ギャグ色も有り、甘い話』というリクエストでお届けいたしました。
何一つお応え出来ていない感じに仕上がったような気がするのですが・・・・。
タイトル共々馬鹿さにだけは自信があるんですけれども、ええ。
リクエスト下さったカナル様、有難うございました。
こんなので申し訳ありません(謝)。