男が年中発情している動物なら、女は月の満ち欠けに左右される動物。
そんな話を聞いたことがある。
「今日は泊って行くのか?」
「うん、でも・・・・・するの?」
「いけないか?」
「いけなくはないけど・・・・・、ちょっと今日は気分が乗らないかも。」
「・・・・そうか。じゃあ今夜は大人しく寝よう。」
「ごめんね?」
「構わんさ。そういう時もあるだろう。別に一緒に眠るだけでも俺は満足だからな。」
「ありがと。私もシュラと一緒に居られるだけで満足よ。」
俺の隣で幸せそうに眠る。
誰かの温もりを感じながら眠る、それだけでも十分幸せなのは本当だ。
けれどこれが男の性の哀しさか、身体が少々言うことを聞かない。
だが俺は鬼ではない。己の欲だけで眠るをどうにかしようなんて事は考えない。
今夜は俺とのサイクルが合わなかった。それだけだ。
・・・・・少々残念だがな。
サイクルが合わない時は見事にすれ違う。
だが、ぴったり重なった時は、これ以上ない程の満足感を得られる。
「まだ寝ないの?」
「もう眠いのか?」
「そういう訳じゃないけど・・・・。」
が気恥ずかしそうに口篭る。
今までの付き合いで、これが流のサインなのは分かっている。
『月が満ちている』というサインの。
だからこんな夜は少々意地悪をしたくなる。
俺を求めているという事を、その口ではっきりと告げて欲しくて。
「なら別にいいじゃないか。何も急ぐことないだろう?」
「それはそうだけど・・・・・」
段々ふくれっ面になってきた。これ以上ヘソを曲げさせると全てが台無しになるからな。
そろそろ手を打ってやるか。
ソファの上で膝を抱えて座るの肩を抱き寄せる。
「何を膨れてるんだ?」
「膨れてない!」
「フッ、分かった分かった。そう怒るな。」
「怒ってない!!」
「分かった分かった。・・・・ベッドに行くか?」
「っ!!」
不意をついて耳朶を甘く噛む。
途端に反応を示す。
「どうする?」
「・・・・行く。」
「まだ寝るには早いが・・・・、もう寝るか?」
「嫌・・・・」
「じゃあどうする?」
「・・・・・しよ?」
随分素直だな。
どうやら今夜は楽しめそうだ。
ベッドに崩れ落ちると、待ちきれないかのようにキスをせがむ。
それに応えるように、普段よりも激しく唇を重ねる。
「んぅ・・・・、ふ・・・・、ぅ」
舌を絡め取り強く吸い上げながら腰や太腿を撫で擦ると、もどかしそうにの身体が揺れる。
首筋に音を立てて吸い付き、パジャマのボタンを一つずつ外して下着を取り払うと、白い肌と滑らかな曲線が露になる。
何度見ても見飽きない、愛しい身体。
「あっ、ん・・・・・」
胸の柔らかさを手の平で堪能しながらその頂に軽く舌を這わせると、の肩が震える。
もっと乱れて欲しくて、固さを増した其処を更に刺激する。
「んっ、あぅっ!あ・・・、あっ!」
強めに舌で転がし、甘く歯を立てると、の声が次第に大きくなり始める。
頂はこれ以上ない程固く尖り、肌が熱く火照ってくる。
「あっん・・・・、シュラ・・・・」
俺の肩を掴んで、潤んだ瞳で何かを訴えてくる。
心得ているとばかりにキスを一つ贈り、腰から下の衣類も全て取り払ってやる。
滑らかな太腿に手を触れると、待ちきれないといった風に自ら片脚を立てた。
「ああっ!!んっ!く・・・、ぅ、はっ、あん!!」
柔らかな茂みの奥に舌を這わせると、とめどなく蜜が溢れ出てくる。
少し触れただけでも敏感に反応を返してくる。
どうやら今夜は余程身体が疼いているようだ。
抑えきれない艶声は、止むことなくの唇から漏れている。
その声に益々己が昂るのが分かる。
「やぁっ!!あぁん!!!」
わざと音を立てて蜜を飲み干してやると、触覚と聴覚両方からの刺激のせいか、の声が一段高くなる。
戦慄く両脚を立て広げ、にも見えるように腰を抱え上げて再び舌で攻め立てる。
窓から入る月明かりのせいではっきりと見えるのか、が恥ずかしそうに顔を背ける。
「あぁっ!!んあっっ!!あうっっ!!」
固い小さな核を強く舐め上げ、ひくひくと物欲しげに蠢く口に指を銜え込ませると、の乱れが激しくなる。
ずり落ちそうになる腰を片手で支え、執拗にその二箇所を攻め続ける。
「あん!ああっ・・・んん!!シュ・・ラぁ、も、ダメぇ・・・・!イッちゃ・・・・!!あああーーーー!!!!」
届く限り奥まで指を捻じ込み、突起を強く吸い上げると、悲鳴のような嬌声を上げてが絶頂に達した。
小刻みに締め付けてくる中からゆっくりと指を引き抜くと、溢れた蜜が糸を引いて垂れた。
「今夜は普段以上に感じやすいな?」
「んぅ・・・・、そんな事、言わない、で・・・・」
からかうような囁きを耳元に感じ、絶頂を迎えたばかりのは力なく抗議する。
そんなが愛しくて、欲しくて欲しくてたまらない。
性急に服を脱ぎ去り、手早く避妊具を装着して、ぐったりと横たわるを抱きかかえる。
「まだイケるだろ?」
「ん・・・・。来て・・・・。」
座り込んだ膝の上に、をゆっくりと下ろす。
猛り狂った己自身がの中心を貫くようにして。
「ん・・・・あ、あああぁ・・・・!!」
背を仰け反らせて俺を迎え入れるをしっかりと抱きしめ、ゆっくりと深く繋がっていく。
隙間もない程根元まで俺を銜え込んだは、荒い息を吐いて俺にしがみつく。
「大丈夫か?」
「う・・・ん、平気・・・・。」
「自分で動けるか?」
「ん。・・・んっ・・・・、はっ、あ・・・・」
俺の首に腕を回したまま、ぎこちなく腰を動かす。
目の前で揺れる胸と切なげに眉を寄せて喘ぐの顔が、俺の欲に更に火を注ぐ。
首に回された腕や揺れる胸、思いつく限りの場所に唇を押し当てて、愛を伝える。
のまどろっこしい動きに焦らされ、快感が二倍にも三倍にも高まる。
「あぁ、ん・・・・、くっ、う・・・・」
疲れたのか、深い挿入感のせいか、の動きが弱まってくる。
段々と浅くなってきた律動を、の不意をついて深く激しいものに変える。
「やぁぁ!!!」
再び最奥を抉られ、の腰が跳ね上がる。
涙の滲む目尻にキスをして、を腰を掴み、激しく自分に打ち付ける。
「あああっ!!やっん!!深・・・・!!」
「痛いか?」
「んんっ、あ、ん・・・、ううん・・・・、気持ち、いっ・・・!ああっ!!」
やはり今夜はとことん二人のサイクルが噛み合っている。
突き破りそうな程奥まで貫いても、痛みなどより快感が遥かに勝っているらしい。
「すまんな、もう限界だ。いくぞ・・・・」
「え?あっ・・・!あああーー!!」
膝の上に座らせたを繋がったままベッドへ押し倒して、一層激しく貫いた。
深く強く、我を忘れてひたすらの身体を貪る。
「あぅ!!んっあああ!ひっ、あぁん!!」
あられもない声をもはや抑えようともせず、全身で俺を感じるがたまらなく愛しい。
何もかもどうでもよくなる程の快楽の波に呑まれ、俺達二人はひたすら互いを求め合う。
「最高だ、っ・・・・!」
「はぁぁっ!!ああっん!!シュ、ラ・・・!!あ、も、っと・・・・!」
の求めるまま、その身体に狂ったように己を刻み込む。
本能と力のままに最奥を突き上げた直後、の唇から声にならない悲鳴が上がった。
激しい収縮を繰り返す内壁の締め付けに、俺も限界まで昂った激情を解き放った。
今夜は格別の夜だった。
勿論との夜はいつでも最高だが、今夜は別格だ。
これ程我を忘れて激しく求め合える夜はそうそうない。
行為の後、そのまま眠ってしまったに触れるだけのキスをして、俺も目を閉じる。
次にの月が満ちる時はいつだろうか。
早くも次のサイクルが巡って来るのを心待ちにしながら。