聖域小咄




ギリシャの聖域という所に、キャンサーのデスマスクという男がいました。
ある日デスマスクは、お友達のシュラの所に遊びに行こうと、十二宮を上っていました。
その途中、獅子宮に差し掛かった時、中から誰かの話し声が微かに聞こえてきました。


「アイオリアの、大っきい・・・・!」

デスマスクは、『なぬ?』と足を止めました。


「フフ、そうだろう?俺のは特大サイズだからな。」

デスマスクの目は、点になりました。
話しているのは、この獅子宮の主でもある『特大サイズ』とやらの持ち主・アイオリア。
そして、この聖域で唯一の一般人にして妙齢の女性である、です。


「美味しそう・・・・・・・」
「フフフ・・・・・・」

がうっとりと呟くと、アイオリアは意味深な含み笑いを返しました。


「・・・味見をしてみるか?」
「えっ・・・・?でも・・・・・・」
「欲しいのだろう?」
「そ、そんな・・・・」
「顔に書いてあるぞ、俺のが欲しい、とな。」

デスマスクの顎が、『ガボーン!!』と音が鳴りそうなぐらい落ちました。
しかし、デスマスクがこれ程驚いてしまったのも無理はありません。
デスマスクが知る限り、この二人は、確かに仲良くはありますが、ごくごく健全な関係のお友達同士なのですから。
がアイオリアのを欲しがるような関係に発展している素振りなど、微塵も見せた事がなかったのですから。
この二人は一体いつの間に、こんなに親密な間柄になっていたのでしょうか。


「やだ・・・・・!」
「フフ・・・・。」

恥ずかしそうなの声は、しかし満更でもなさそうに聞こえます。
アイオリアの含み笑いも、益々愉しげに聞こえます。
きっと雄の欲望にぎらつき始めたに違いないと、デスマスクは直感しました。男の勘というやつです。
デスマスクはドキドキハァハァしながら、二人に気付かれないように、そっと中を覗いてみました。
外は良い天気ですが獅子宮の中は暗く、二人の姿はおぼろげにしか見えません。
それでもよく目を凝らして見てみると、二人が重なり合って見える位に接近しているのが分かりました。


「遠慮する事はない。さあ・・・・・・」
「う・・・・ん・・・・・・。」

デスマスクは、『するんかよ!!』というツッコミを慌てて飲み込みました。
確かに、この十二宮は基本的には人気がない場所です。
ですが、無人の廃墟ではないのです。日に何度かは誰かが通ります。
現にデスマスクだって、たった今まで通り過ぎようとしていたところです。
そんな所で公開プレイに及ぼうとするなんて、アイオリアはいつの間にそんな無分別のドスケベになってしまったのでしょうか。
です。
誰かに見られるかも知れないのに、こんな所でアイオリアの特大サイズを味見だなんて、いつの間にそんなふしだらになってしまったのでしょうか。
デスマスクの知る限り、アイオリアは実直でシャイな男でした。
も、少しからかっただけですぐ恥ずかしがる娘でした。
デスマスクが挨拶代わりに後ろから抱きついて胸を揉みくちゃにする時など、はそれはそれは怒るのです。
そんな二人が、こんな誰に見られるとも知れない場所でおっ始めるだなんて、デスマスクには信じられませんでした。


「じゃあ、ちょっとだけね・・・・・、ん・・・・・・・」

しかし、いくら信じられなくても、これは紛れもなく現実でした。
遂に、遂に、コトが始まってしまったのです。


「んっ・・・・・・!すご・・・・、硬い・・・・・・・!」
「カチカチになっているからな。そんな上品に舐めてたって、味見にならんだろう。遠慮なくもっと大きく口を開けろ。」
「あ・・・ん・・・・・・、待って、口に・・・・、入りきらな・・・・・」
「フフ・・・・、美味いか?」
「んん・・・・・・、おいひぃ・・・・・」

の恍惚とした声と、ナニやらいやらしく濡れた響きの微かな音が、デスマスクを否応なしに刺激します。
他人の道徳観をとやかく言えた義理ではありませんが、全くこの二人は、真っ昼間からお外で何をやっているのでしょう。
最近ご無沙汰気味の寂しい男の目の前で、実にけしからんカップルです。


「ね・・・・、私のも味見する・・・・・?」
「良いのか?」
「垂れてきちゃうから、早く・・・・・」
「ああ・・・・・・」

いけません、いけません、これ以上はいけません、奥さま。
これ以上は放送禁止です。
分別のある大人なら、こんな所でそんなコトをしてはいけません。
本当に、何という呆れたド変態カップルでしょう。


ですが、デスマスクも決して嫌いな方ではありませんでした。



ちょっと待てオラアァァ!俺様も交ぜろやあぁぁーッ!!

分別のある大人なら、何も見なかった事にして即刻立ち去らなければならないというのに、
あろう事かデスマスクは、濡れ場に乱入していってしまいました。
生憎とデスマスクは、分別のある大人ではなかったのです。

ところが。


「きゃっ!何!?」
「デスマスク!どうしたんだいきなり?」

二人を見て、デスマスクは唖然としました。
何故なら二人は、痴態を演じるどころか服のボタン1つ外してはおらず、仲良く並んでアイスキャンディーを食べていたのです。
アイオリアが手に持っているのは、ぶどう色をしたアイスキャンディー、
そしてが齧っているのは、その2倍の太さはあろうかという、オレンジ色の特大アイスキャンディーでした。
どうやらが咥えていた『アイオリアの特大サイズ』とは、これの事だったようです。
この分では、『の・・・』というのも、間違いなくアイスキャンディーの事でしょう。


「何?デスも欲しいの?これしかないんだけど、食べかけで良かったら食べる?これオレンジよ。」
「こっちも食うか?やはり食べかけだが。これはブドウ味だ。」

そんな事は説明されるまでもなく、色で見て分かります。
そんな事はどうでも良いのです。
人をソノ気にさせるだけさせておいて、のほほんとアイスを食べているなんて、あんまりです。
この空回りした欲望と、地面にめり込みたい位の屈辱感をどうしろというのでしょうか。



いらねーよバッカヤロー!!!紛らわしい事してんじゃねーぞクソッタレェェェーーー!!!

居た堪れなくなったデスマスクは、叫びながら走り去ってしまいました。


「な、何なの・・・・?どうしたんだろうね?」
「さあ・・・・・。何を怒ってるんだ、あの男?」

残ったとアイオリアは、首を傾げつつまたアイスキャンディーに齧りつきましたとさ。
めでたし、めでたし。(←めでたくねーよ! BY デスマスク)




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後書き

煮詰まっている時に限って、くっだらない小ネタを思いついたりする事がありませんか?
私はあります。
すいません、言い訳です(笑)。
キャンプ夢の続き書かずにこんなベッタベタの下ネタ小咄書いてしまってすいません!!