「じゃあな、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
黄金聖衣を纏った恋人の姿は、やはり眩しい。
普段はヘラヘラしているが、やるべき時はやる男なのだ。
聖闘士としてこれから任務に赴こうとしているデスマスクの立派な姿を誇らしく思いながら、
は別れのキスを微笑んで受け入れた。
「俺の留守の間、浮気すんじゃねぇぞ?」
「それはこっちの台詞でしょ。浮気したらタダじゃおかないからね?」
「おお怖ぇ。」
デスマスクは冗談めかして肩を竦めて見せたが、すぐに眩しそうに目を細めた。
「・・・ひと月で戻る。ちょっとの間だけだ。」
「・・・うん。」
「帰って来たら1ケ月分・・・・・覚悟しとけよ?」
「ばか・・・・・、ふふっ。気を付けてね。」
「おう。」
セクシーなウインクをひとつ残して、デスマスクは出掛けて行った。
丸々1ケ月の間、全く会えなくなるのは寂しいが、しかし束の間のその寂しさは、
次に会えた時の喜びを何倍にもかき立てるエッセンスになる。
幸い、そう危険な任務でもないから、彼が帰って来る日を、ただ楽しみに待っていれば良いのだ。
味にうるさい彼を唸らせるような新メニューを覚えて、
可愛くてちょっとセクシーなランジェリーを買って、
ひと月後に帰ってくる彼を出迎える日を、ただ楽しみに。
そして、一月後。
「やあ。お帰り、デスマスク。」
任務を終え、1ケ月ぶりに巨蟹宮に戻ってきたデスマスクを出迎えたのは、
満面の笑みを浮かべたアフロディーテと、その無愛想ぶりも相変わらずなシュラだった。
ここに居るのは、本来、こいつ等ではない筈なのだが。
デスマスクはうんざりと溜息を吐いた。
「何だテメェら、何で居んだよ。」
「何だ、帰った早々ご機嫌斜めだな?」
「帰った早々お前らに待ち構えられてりゃあ、ご機嫌斜めにもなるだろうよ。は?」
デスマスクがその名を口にした途端、アフロディーテは更に微笑みを強調した。
何か裏があるような、取り繕うような、何だか嫌な予感のする作り笑いだった。
「ああ・・・・、そう、実はその事なのだが。その、は・・・」
「は居ない。仕事で暫く留守だ。いつ帰って来るかは分からん。」
はっきり言えないアフロディーテの言葉尻を奪って、シュラがきっぱり、はっきり、要点だけを告げた。
「・・・あぁ?」
だがその話は、デスマスクにとっては決して楽しいものではなく、また、
最低限の要点だけ聞ければ十分というものでもなかった。
「おい、何だそりゃあ。どういう事か、俺に分かるように説明しろよ。」
「サガの頼みで、アテネの教会でのボランティア活動に駆り出されたのだ。」
「ほら、彼にも司祭としての『顔』があるだろう?だから、その辺の兼ね合いでやむを得ず。
もう一週間位になるが、まだ帰れる目途はついていなさそうだ。」
シュラとアフロディーテが口々に説明を接ぎ足すのを、デスマスクは明らかに不愉快な顔で聞いていた。
今にも噛みつきそうなその表情が気になったのか、シュラが咎めるようにデスマスクを睨んだ。
「おい、大人げない事は考えるなよ。これは仕事なんだからな。
大体、サガに怒鳴り込んでいったところで、返り討ちに遭うのがオチだぞ。」
「シュラの言う通りだ。それにサガだって、何も好き好んでを派遣したのではないのだ。
むしろ、ひと月ぶりの君達の逢瀬を邪魔するのは非常に心苦しいと、気に病んでいた。
そこのところを分かってやって欲しい。」
分かってはいた。
シュラとアフロディーテが気を遣ってくれているのも、
サガに怒鳴り込む筋合いの話ではない事も、
そして、の邪魔をしに行ってはいけない事も。
デスマスクには全て、腹立たしい程に分かっていた。
「出掛ける前に、から預かった。」
そう言って、シュラは一通の手紙をデスマスクに差し出した。
デスマスクはそれを、すぐさま開いて読んだ。
そこには、暫くの間、教会のボランティア活動に従事する事、
そこで寝泊まりするので、終わるまで聖域には帰って来ない事、
活動期間は定まっていないが、多分、そんなに長くはかからないだろうという事が書かれてあった。
そして、出迎えられなくてごめんね、とも。
「・・・・・・・・・」
手紙を封筒に戻したデスマスクは、そのままシュラとアフロディーテの前を通り過ぎて行こうとした。
それをシュラが呼び止めた。
「おい待て、どこへ行く気だ。」
「任務完了の報告に決まってんだろ。」
そんな手紙を残されて、どうして大人げない真似など出来るだろうか。
出迎えられる側だった筈が、何故だか出迎える側に回ってはや何日。
その間、デスマスクはこれまでと同じように過ごした。
太陽が空高く昇る頃にモーニングコーヒーを飲み、これでもかと照りつける太陽を
部屋に篭ってやり過ごし、日が暮れ始めてから町へ出掛け、鳥の囀りを聞くまで酒に酔う。
執務当番に当たっている時以外は、そんな風にして過ごしていた。
仲間と一緒の時もあれば、一人の時もあった。
近くの田舎町の酒場で飲む日もあれば、異国の大都会のバーで飲む日もあった。
だがひとつ、アテネにだけは決して行かなかった。
行かないようにしていたのだ。
もう何日かすればはどうせ帰って来るのだからと自分に言い聞かせて、
ガキじゃねえんだからと宥めすかして、の事は考えないようにしていた。
だが皮肉なもので、そうすればする程、に会いたいという思いは募る一方だった。
待てど暮らせど、は一向に帰って来ず、連絡も入らない。
そうして更に何日かが過ぎたある日、デスマスクの我慢は遂に限界を突破した。
― とうとう来ちまったぜ・・・・・・・。
ある日の午後、デスマスクはアテネ市街にやって来た。
目的は勿論、に会う事である。
事と次第によっては、そのまま強引に聖域に連れ帰る事も辞さないつもりだった。
「えーと、アイツのいる教会は・・・・・」
のいる教会の名前と所在地は、事前に探り出してきてある。
そのメモを開き、ルートを確認して、さあ行くぞと一歩踏み出したその瞬間、
誰かがデスマスクの肩をポンポンと叩いた。
「あぁ?・・・・・あっ・・・・・!」
「ハァイ!やっぱりあなただった!」
そこに居たのは、人懐っこい笑顔を浮かべた女だった。
フワフワした長い赤毛が妙にセクシーなその女は、デスマスクがよく行くバーの女主人だった。
「もうっ、最近ちっとも来てくれないから、寂しかったのよ!」
「あ、あぁ、悪ぃ悪ぃ・・・・・、ちょっと忙しくてな。」
デスマスクは女をハグして、取り繕うような愛想笑いを浮かべた。
こんな所で他の女のご機嫌取りをしている場合ではないのだが、女にはついつい甘い顔をしてしまう。
もう身に染みついてしまっている、習慣なのだ。
それにこの女とは、多少なりとも『関わり』がある。
「今日は来れるんでしょ?」
「え・・・・・?」
「来てくれるわよね?」
艶然と微笑んで誘うその女をきっぱり拒絶する事は、デスマスクには出来なかった。
「嬉しいわ!さっ、行きましょ!」
「あ、ああ・・・・・」
こんな事をしている場合でないのは分かっているが、それでもなお。
そう。
愛だけでは埋められないものが、男にはあるのだ。
「あぁ、重い・・・・・!」
腕に限界がきていたは、重い荷物を地面に下ろし、一息ついた。
食料や日用品を持てる限りに買い込んだ帰りである。
教会でのボランティア活動には、近くの孤児院の子供達の世話も含まれており、
毎日朝から晩までやる事がいっぱいあって、なかなかの重労働だった。
だが、大変な分、やり甲斐はある。
孤児院の子供達も、昔の自分や星矢や、星の子学園の子供達みたいで、何だか他人だとは思えない。
つまり、決して嫌々やらされている訳ではないのだが、それでも毎日、あと何日で帰れるのだろうと考えてしまう。
デスマスクはもう聖域に戻っている筈だ。
連絡は無いが、どうしているだろうか。
サボらずにちゃんと執務当番をこなしているだろうか。
昼に起きて夜通し飲んで朝帰り、なんて事ばかりしてはいないだろうか。
出迎えられなかった事を、怒っていないだろうか。
「・・・・・・・・・あれ?」
そんな事を考えていたら、ふと向こうに、デスマスクの姿が見えた。
幻かと思ったが、違う。
何度瞬きしても、それはデスマスクその人であり、そしてその隣には。
「誰・・・・・?あの女の人・・・・・・・」
赤毛のセクシーな女性の姿があった。
二人は連れ立って親しげに会話をしながら、のいる方に向かって歩いて来ていた。
デスマスクは大きな買い物袋を抱えていて、袋の口からリンゴやオレンジがちらりと見えていた。
「え・・・・・・・?」
二人の様子は、の目には、とても親密そうに見えた。
呆然と立ち尽くしていると、やがてデスマスクの方もの姿を目に留めて、あからさまに驚き、足を止めた。
「デ、ス・・・・・・」
「・・・・・・!」
「あら、なぁに?知り合い?」
女の質問に、デスマスクは薄く笑って言葉を濁した。
限りなく消極的な、辛うじて肯定と分かるような分からないような、はっきりしない返事だった。
仮にも恋人を紹介するのに、そんな返事の仕方があるだろうか。
あるとすればそれは、知られたくない相手の場合だけだ。
恋人なんだと紹介すれば何か不都合のある相手だから、だからデスマスクは、はっきりと答えないのだろうか。
「・・・・・・・」
食料品の買い物袋を抱えて連れ立って歩く女は、自分だけだと思っていた。
軽いところが多分にある不埒な男だが、だからこそ、深入りはしない筈だった。
自分と付き合うようになってからは、それまで自堕落なワンナイト・ラブを繰り返していたのが
嘘のように、他の女性を相手にしなくなった。
調子の良いリップサービスやおちゃらけ半分の色目で喜ばせる事はあっても、
本当に疑ってしまうような、二人の関係が壊れてしまうような言動には及ばなかった。
だが、今は。
「じ・・・、じゃあ・・・、さよなら・・・・・・」
には、作り笑いを浮かべてその場を立ち去る事しか出来なかった。
が聖域に戻ったのは、それから数日しての事だった。
そして、帰宅した早々、デスマスクがすっ飛んで来た。
「・・・・何の用?」
いつもならすぐに部屋に通すのだが、今日は流石にそうする気になれず、
は玄関先で応対した。
「そ、そう怒るなよ、な?取り敢えず、中に入れてくれよ。
こんな所で色々喋ってたら、人に聞かれて恥ずかしいだろ?な?」
その言い分自体は納得がいくが、だからと言って、足元にスリッパを差し出してやる気にはなれない。
入りたければ勝手に入れば良いのだ。
宥めすかすような微笑みを顔に張り付けて猫撫で声を出すデスマスクに、
は無言で背を向け、先に部屋の中へ戻って行った。
「こないだは悪かった。けど、あれはそういうんじゃねぇんだって。」
すぐに追いかけて来たデスマスクは、リビングに入るや否や、を背後から抱きしめた。
しかしはまだ、許す気にはなれなかった。
「じゃあどういうものなの」
「あの女は、馴染みのバーの女でよ・・」
「へぇ、そうなんだ。それで、その人に心を移したって事なんでしょ。」
「だから違ぇんだって!!」
「違わなくないでしょ。あの時、追いかけて来てくれなかったし、電話の1本もくれなかった。」
「それは・・・・・!」
一瞬言葉に詰まってから、デスマスクは急に声を荒げた。
「つーかなぁ!電話の1本も寄越さなかったのはテメェも同じだろ!」
「呆れた、逆ギレ!?私はちゃんとシュラに手紙を預けていったでしょ!?読まなかったの!?」
気が付けば、いつの間にか激しい罵り合いになっていた。
「読んだけどよ!それっきりなしのつぶてたぁ、そっちこそどういう了見なんだよ!」
「何度も電話しようと思ったわよ!だけど結構重労働で、夜は疲れてクタクタになって、すぐ寝ちゃってたの!
悪いとは思ってたわよ!それなのにそっちは・・・・・!」
あの時の光景が、の脳裏に蘇った。
あの時の寂しさと惨めさと悲しみが、涙になって込み上げてきた。
しかしはそれを、歯を食い縛って堪えた。
そして、情けなく泣き崩れる代わりに、デスマスクを睨み上げて胸倉に掴み掛かった。
「出迎えられなかったのは悪かったけど、だからってそんな事位で心変わりするなんて酷い!」
「ぐえっ・・・・!だ、だから、心変わりなんかしてねぇって・・・・!あれは只の・・」
「只の浮気だって言いたいの!?どっちみちサイテーじゃない!!
私がアテネに居るの知ってて、わざわざアテネで浮気するってどういう事!?あてつけのつもり!?
デスが女好きなのは百も承知だけど、幾ら何でもアレは無いんじゃない!?」
「た、確かにソコは否定出来ねぇ!!
けどよ、だから違ぇんだって!あれはあてつけとか浮気とかそういうんじゃねぇんだよ!」
「じゃあ何なのよ!私に分かるように説明しなさいよ!!」
「わ、分かった、分かったから、ちょっ・・・首!首絞めるなって・・・・!話出来ねぇだろ・・・・!」
少し手を緩めてやると、デスマスクは何度か咳払いをしてから、決まりが悪そうに弁解を始めた。
「実は俺、あの女の店で暴れちまったんだよ。」
「・・・・・・・・は?」
「何ヶ月か前の事なんだけどよ、一人で飲んでたら、いけ好かねぇ奴等が横で好き勝手やり始めて、
最初は無視しようと努力してたんだけど、だんだん我慢出来なくなっちまって、で・・・」
「暴れた、の・・・・?」
想定もしていなかった話だった。
一瞬、作り話じゃなかろうかと思ったが、しかしデスマスクの表情は余りにも情けなく、
それが実話であると信じざるを得なかった。
「バッカじゃないの!?何やってんの!?仮にも黄金聖闘士が、一般人相手に!」
「だから一般人レベルのケンカで抑えておいたんだっつーの!
オイ頼むからサガには内緒にしといてくれよ!!頼むぜマジで!!ホントに!!」
「何そんな怯えてんのよ・・・・;」
「こんな事がサガにバレたらマジで殺されちまうだろうが!!」
この期に及んで必死の形相で口止めを頼んでくるところなど、益々もって情けなかった。
「とにかく、そのせいで店ん中が壊滅状態になっちまってよ。
弁償する金もぶっちゃけ無かったんだけど、元々は相手の奴等が悪かったからって、
あの女が金の代わりに実労働を要求してきたんだ。」
「実労働?」
「壊した物の代金分、時々店の手伝いに行ってんだよ。
で、用心棒とかバーテンダーとかパシリとか、色々やらされてた。」
しかしデスマスクは、から一瞬たりとも目を逸らさなかった。
「あん時は勿論、お前に会いに行ったんだ。
そこを運悪くとっ捕まっちまって、そういう理由だから拒む事も出来なくてよ・・・・。」
「・・・・・・それ、信じて良いの?」
調子の良い、女たらしのワルい奴。
まっすぐ目を見て嘘を吐く位、デスマスクにとってはきっと朝飯前だ。
だがそれなら、鉢合わせしたあの時に、もっとうまく立ち回っていたのではないだろうか?
「信じるか信じないかは、お前次第だ。」
こんな風に、苦い顔をして頼りない事を言うのではなく、
甘い微笑みを浮かべて、もっと耳に優しく響く言葉を、囁いてくれるのではないだろうか。
「・・・・も・・・・!大っ嫌いデスなんて・・・・!」
うんざりと目を閉じた瞬間、はデスマスクの腕の中に強く、強く、抱きしめられていた。
もうこれ以上、自分を抑えている事は出来なかった。
任務を終えて聖域に帰ってきた時点で、既に限界を超えつつあったのだ。
それを、当初の予定の倍近くも我慢してきたのだ。とても夜など待てなかった。
「あ・・・ん・・・・」
明るい内に求めると、いつもは恥ずかしがったり嫌がったりするだが、
今日は求められるがままに受け入れ、自らも求めてきていた。
「んん・・・・・・・」
デスマスクの背中に腕を回して、うっとりとキスに応えて。
もきっと、ずっと待ち焦がれていたのだ。
「あっ・・・・・・・!」
優しく這わせた指先に、その証のような熱い蜜がトロリと絡み付いた。
デスマスクは口元を薄らと綻ばせると、そのままの中にゆっくりと指を沈めていった。
「あっ・・・・・、あぁっ・・・・・・・!」
熱く蕩けた内壁がキュンと蠢いて、デスマスクの指を締めつけてくる。
その中のどこが弱いのかは、もう熟知している。
わざと焦らしてを啼かせるのもゾクゾクするのだが、今はそういう気分にはなれなかった。
「あぁんっ・・・・・・・!」
そのポイントを寸分狂わず捉えて指先で突き上げると、の声が一段高くなった。
デスマスクはそこを執拗に攻めながら、ぷっくりと立ち上がった胸の頂を舌で転がした。
「あっ、あっ・・・・・!あ・・・・・!」
今日は思いっきり、を感じさせたかった。
泣かせるのは、きっともう散々させてしまっただろうから。
無用に不安にさせ、悲しませてしまった分、今は快感だけを与えてやりたかった。
「デス・・・・・・、だめ・・・・・・!やっ・・・・、そこ・・・・・・!」
「好きだろ?ココ・・・・・」
「あっ、やだ、ぁっ・・・・・・!っちゃうぅ・・・・・・!」
「いいぜ、イけよ・・・・」
「あんんっ・・・・・・・!」
はあっという間に身体を震わせて達してしまった。
だが、まだ足りない。
デスマスクはの中からゆっくりと指を引き抜くと、蜜の糸を引いている其処に、今度は舌を這わせた。
「やぁぁんっ・・・・・!」
溢れる蜜を舐め取り、紅く色付いた花芽を舌先で擽り、を再び追い立てていく。
眩暈のするような快感の絶頂へと。
「あぁっ・・・・・・・!あっ・・・・・・・・!んんっ・・・・・・・・!」
やがて、は再び達した。
全身に汗をかいて、力尽きたようにぐったりと目を閉じている。
一旦解放して避妊具を装着すると、デスマスクは改めてを組み敷いた。
「いくぜ・・・・・・・」
「ん・・・・・・、あ、ぁっ・・・・・・・・!」
の中に、侵入り込んでいく。
もう何度も、何度も、そうしてきたというのにいつになく腰が甘く痺れる。
程なくして先端が最奥に当たると、は肌を粟立たせて震えた。
「あぁ、ん・・・・!デ、ス・・・・・・・!」
肌と肌が出来るだけ多く触れ合うようにをしっかりと抱きしめて、デスマスクは律動を始めた。
の中を突き上げる度に胸と胸が擦れ合い、固くしこった宝珠に胸板を擽られる感触が、じわじわとした快感を生む。
「気持ち良いか、・・・・・?」
「あ、んっ・・・・!んあぁっ・・・・!い・・・ぃ・・・・・・!」
こんな事を言うと、はきっと怒るだろう。
さっき、他の女に心を移したと詰ってきたの顔が、可愛いと思った。
目付きは般若のようだったし、口元も歪んでいたが、それでもそう思った。
あの凄まじい怒りっぷりは、そっくりそのまま、愛されている証になるのだから。
「なあ・・・・、俺の事、好きか・・・・・・・?」
「ぁっ・・・んっ・・・・・・・・!」
頬を薔薇色に火照らせて感じながら、それでもは、思い出したようにプイと顔を背けた。
「・・・らい・・・・・・」
「ん・・・・・・・?」
「嫌いよ・・・・・、大っ嫌い、デスなんて・・・・・・」
はか細い声でそう呟いた。
そっぽを向いて、今にも泣きそうな声で、艶めかしい吐息の合間に。
「そうか、大っ嫌いか・・・・・・・」
デスマスクはやんわりとの顔を引き戻し、目と目を合わさせた。
「でも俺は好きだぜ・・・・・・?」
「っ・・・・・・・!」
「お前だけだ」
の顔色が、面白い位に一瞬で真っ赤になった。
愛おしい。
そう思った瞬間、デスマスクの顔に知らず知らず、微笑みが浮かんだ。
手も勝手に動いて、真っ赤なその頬を包み込む。
そして、引き寄せられるようにして、唇を重ね合わせた。
「お前を一番、愛してる・・・・・」
心のままに囁くと、の潤んだ瞳が揺らめいて、綺麗な涙の粒が一粒、音も無く零れ落ちた。