「大体ねぇ、そのふてぶてしい態度は何なの!?元はと言えば自分が悪い癖に、反省の色が全く見えないんだけど!?」
「だから謝っただろうが!しつこいぞお前!」
「そういう開き直る態度がふてぶてしいって言ってるの!!お詫びっていうのはもっと平身低頭、誠意を込めてするべきでしょうが!」
「へーへーどうもすんませんっしたぁ〜!!どうかお許し下さいさまぁ〜!!!」
は目を吊り上げてキーキーと怒りながら、デスマスクはわざと馬鹿ヅラを下げてそんなを挑発しながらも、どちらからともなく無意識的にドアノブを回し、巨蟹宮の居住区へと雪崩れ込んで行った。
そこにあるのは、デスマスクのプライベートな空間。
そこに当たり前のように入って行き、当たり前のように迎え入れている今の状況が、この一見蒸し返したかのように見える派手な口喧嘩が実は単なるコミュニケーションである事を、暗に物語っている。
「なーにその謝り方!?っていうかその顔!バッカじゃないの!?」
「バカって言う方がバカなんだよ、バーカ!」
「じゃあアンタの方がバカじゃないのよ!バーカバーカ、ぶわぁ〜〜か!!」
「うっせ!バーカバーカ、べぁ〜〜〜か!!!」
これが本気の喧嘩なら、大人として恥ずべきレベルの低さだ。
しかしこれは、前述の通りのコミュニケーションである。
何しろ、何日にも渡る長い冷戦の間、お互いに意地を張ってろくに口も利いていなかったのだ。
その反動で、今度は堰を切ったように止まらなくなるのも無理はなかった。
「バッカバッカ、ッバ〜〜〜カ!!!!」
「バッカバッカ、んバ〜〜〜カッ!!!」
最後に渾身の力を込めて低レベルな悪口を吐き捨ててから、二人は揃ってようやく一息ついた。
ハッと我に返ると馬鹿馬鹿しい事この上ないやり取りだったが、お陰で胸に支えていた重苦しい塊は、いつの間にか消えている。
本当はずっと、いつものように他愛ない会話を交わしたかったのだ。
本当はずっと、こうやってふざけ合いたかったのだ。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
さっきの喧騒とは打って変わって、今度は静か過ぎる程の沈黙が二人の間を流れた。
この沈黙を笑いで破るべきか、それとも。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
いや、それは無粋というものだ。
ふざけ合いよりも何よりも、本当はずっと、こうやって。
「ぁ・・・・・・・・」
抱き合いたかったのだから。
「ん・・・・・・、ん・・・・・・・・」
ドアを潜ったばかりの短い廊下で、二人は絡み合うような熱いキスを交わした。
最初に求めていったのはデスマスクの方だった。
「はぁッ・・・・・・、あ・・・・・ッ・・・・・・!」
デスマスクは、すぐに蕩けて腰の砕けたを支えながら、迷わずその場に押し倒した。
「駄目、デス・・・・・・、こんなとこで・・・・・・」
「良いじゃねぇか。こんな時間に誰も来やしねぇし、ドアもちゃんと閉まってるって。」
「でも・・・・・・、ここ・・・・・廊下・・・・・・」
は行為自体には嬉々として応じながらも、微かに不満の声を上げた。
寝室ならすぐそこだ。
そこへ行けば、もっと快適に落ち着いて出来るが、僅かな手間を惜しまずにそうした方が後々楽のも分かっているが、今のデスマスクにはその僅かな手間と時間さえも惜しかった。
「悪いけどもう止まらねぇ。痛くねぇようにちゃんとしてやっから。」
「そんなぁ・・・・・・・!」
「俺がどんだけ我慢してたと思ってんだ・・・・・・・・?」
「やっ・・・・・・!」
低い声と熱く滑った舌が耳の穴に入り込んで来て、はビクリと身体を震わせた。
「お前も・・・・・・、だろ?」
黒い瞳が泣き出しそうに潤んだ意味は、肯定。
そう受け取ったデスマスクは、にんまりと微笑んで、廊下に無造作に脚を投げ出して座り込んだ。
「来いよ。」
「あっ・・・・・・」
そして、を膝の上に引っ張り上げ、片腕に抱きかかえた。
ちょっと視線を落とせば、黒く潤んだ瞳と簡単に目が合う。
その瞳にまた微笑み掛けてから、デスマスクはの着ていたシャツを胸の上まで捲り上げ、白いブラジャーをずらした。
「あっ、やだっ・・・・・!」
露出した突起は、指で摘んだだけでみるみる内に硬くしこった。
「あっ、あっ、あっ・・・・・・!」
親指と人差し指で擦り合せたり、指先で軽く引っ掻くように転がす度に、がもどかしそうに身を捩る。
デスマスクはその様子を堪能してから、のジーンズに手を掛けた。
片手でベルトを外し、硬くごわごわしたジーンズを下ろし、ブラジャーと揃いのデザインの白いショーツも引き下げる。
「あっ・・・・・・・・!」
ジーンズも下着も、まだ膝の辺りに纏わりついたままなのに、デスマスクは早々との秘裂に指を滑り込ませた。
大きく脚を開けないので、不自由極まりない。
硬いジーンズが憎らしい。
なのに、その邪魔な障害物を完全に取り払うほんの少しの時間が、何故だかどうしても惜しかった。
「あっん・・・・・、あっ・・・・・!」
デスマスクの指は、僅かな隙間で器用に蠢き続けた。
花芽を擦り、中に侵入し、奥深くを掻き回す。
は、焦燥感さえ感じさせるような性急かつ激しい愛撫に瞬く間に翻弄され、デスマスクの腕の中に崩れ落ちていった。
「あぁっ・・・・!はっ・・・・!」
二人はもつれ合うようにして廊下に倒れ込みながら、何度も唇を重ねた。
何度も、何度も。
深く、深く。
舌を絡め合い、肌に触れ合って、互いを高め合っていった。
もう1分1秒たりとも待てないのは、お互い様だった。
「ね・・・・・、デス・・・・・・・」
「ああ・・・・・・・、俺ももう、我慢できね・・・・・・」
が甘い声でデスマスクを求めると、デスマスクは吐息混じりの熱い囁きをの耳に吹き込んだ。
そして、いよいよ本格的に邪魔になってきたジーンズとショーツを一思いに脱がせて、自分もズボンの前を寛げた。
「いくぜ・・・・・」
「あ・・・・あぁ・・・・・・・っ!」
熱く、硬く、猛り狂ったデスマスクの分身が、の中に沈んでいった。
の秘部はすっかり柔らかく解れ、濃厚な蜜をたっぷりと湛えており、いつにもましてボリュームを増しているそれを難なく迎え入れ、容易く飲み込んでいった。
「すっげ・・・・・濡れてる・・・・・・・・」
「やぁっ・・・・・!言わないでよ・・・・・・・!」
赤くなった顔を背けるを、デスマスクは愛しげに見下ろした。
下らない喧嘩でいがみ合った分、普段の何倍にも何十倍にも、が愛しい。
どうしようもなく、もどかしい位に恋しい。
もっと深く、もっと奥まで、一分の隙もなく繋がって、一緒に溶け合ってしまいたい。
そんな自分でも持て余す程の強烈な情欲に駆られて、デスマスクはを激しく揺さぶり始めた。
「あっ、あっ、あぁんっ・・・・・!!」
深く貫いて、奥を何度も突き上げると、既に恥らう余裕も失くしたが上げる甘い嬌声とエロティックな結合音が、デスマスクの耳を蕩かした。
もっと溺れさせたい、もっと溺れてしまいたい。
デスマスクはその一念で、を強く抱きしめた。
耳朶を甘く噛み、首筋や鎖骨、目につく所に唇を押し付け、胸の頂にむしゃぶりついて。
深く穿った自身での中を抉るように掻き回し、蜜が溢れて滴る程、激しく抜き差しを繰り返して。
「ハッ、ハッ・・・・・・・!」
いつになく荒々しいデスマスクのその仕草は、彼も余裕を失くしているという証。
にはそう感じられた。
苦しげに寄せられた眉と荒い息遣いが、そう感じさせた。
圧し掛かられる重さと、デスマスクの分身が身体の中で猛り狂う激しい衝撃に耐えながらも、
は恍惚とした表情で彼に縋りつき、目の眩むような快感に翻弄されていた。
いつになく余裕を失くしているデスマスクが、いつになく愛しかった。
「あっ、はぁッ・・・・・!う・・・・んっ・・・・・!」
貪るような口付けも、見下ろしてくる真剣な眼差しも、我が身を押し潰す逞しい肉体も、何もかもが熱かった。
身も心も溶けてしまいそうな程に。
「あぁんッ・・・・・、デ・・・ス・・・・・・・!」
は堪らず、デスマスクの肩に爪を立ててしまった。
するとデスマスクは、の身体を今一度しっかりと抱きすくめた。
「・・・・・・・・・」
「あうぅっ・・・・・!!」
ググ・・・・、と押し付けられるようにして、デスマスクの全てがの中に入り込んで来た。
根元まで捻じ込まれるその衝撃に、は思わず高らかな悲鳴を上げた。
その直後。
「愛してるぜ・・・・ッ・・・・・!」
熱く濡れた吐息と共に、の耳元に低い囁きが吹き込まれた。
耳に響くその低い声と、身動き出来ない位に強く抱きすくめるその力強い腕に、は貪欲な程の愛情を感じ取った。
その瞬間、頭より先に身体が反応した。
「あぁーーっ・・・・・・・・・!!」
の内壁はデスマスクを深々と咥え込んだまま激しく収縮し、強く抱きしめた。
『決して離さない』と言わんばかりに己をかき抱くデスマスクの腕の強さに負けない程、強く強く。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・・・・・!」
「ハァッ・・・・・、ハッ・・・・・・・!」
汗ばんだ身体をようやく離して、二人は無造作に身を投げ出した。
二人して肩で息をしながら、放心したように天井をただ眺めていた。
あっという間に終わった、慌しく、しかし激しい情事だった。
「ハァッ・・・・・!」
「ハァ・・・・・・」
まるで極限まで喉の乾いた人間が、目の前に差し出された水を一息に飲み干すかのようなセックスだった。
無我夢中で、ただひたすらに潤いを求める、それと同じように、
いがみ合いすれ違ってしまった日々の心の乾きを潤そうと、ただ夢中で、ただ必死に、互いを求めてしまった。
少し落ち着いてみると、ちょっとガツガツしすぎたと恥ずかしくなってしまう位に。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
デスマスクとは、何となく顔を見合わせた。
それぞれの瞳に映るのは、相手のバツの悪そうな顔。
今、何を考えているのだろう。
もう怒ってはいないだろうか。
何故、何日も意地を張って喧嘩を長引かせてしまったのかと、後悔しているだろうか。
「・・・・・フッ・・・・・・」
「・・・・・ぷっ・・・・・・」
暫し互いの瞳の探り合いをしてから、二人はどちらからともなく、小さな苦笑を洩らした。
「ハハハ・・・・・・!」
「ふふふっ・・・・・!」
苦笑はやがて、腹の底から愉快そうな笑いに変わっていった。
何が可笑しいのか、自分でも良く分からなかった。
きっと、何もかもが可笑しかったのだ。
大人げなく意地を張り合った冷戦の日々も、
その原因の下らなさも、
何だかんだで結局は相手に惚れ込んでしまっている自分も。
「ハッハハハ・・・・・!」
「あははは・・・・・・!」
呆れる位に、可笑しかった。
「はぁ〜あ!・・・・・・バッカみてぇ。」
「ふふ・・・・・・、ホント。」
「・・・とりあえず、シャワーでも浴びっか?」
「うん。」
「んじゃ、2回戦はその後、ベッドでゆっくり・・・・って事で。」
「え・・・・まだするの!?」
「んだよ、嫌なのかよ?」
「嫌・・・・じゃないけど・・・・・。あ、でもケーキは?もう誕生日過ぎちゃったみたいだけど、今からでも・・・・・・」
「今はケーキよりお前が喰いてぇ。さんざお預け食った分、これからゆっくりたっぷりと、な・・・・・?」
「っ・・・・・・・・!!」
1日遅れのデスマスクの誕生日パーティー。
ベッドの中での、二人きりのパーティー。
デスマスクは俄然乗り気で、はそんな彼の様子に怯みながらも密かな期待を隠し持ちつつ、
まるで始まりの合図のように唇を触れ合わせた。