は黙々と千堂の部屋の片付けをしている。
千堂は、が片付けた場所の雑巾がけをしたり、集まったゴミをまとめてゴミ袋に入れている。
そして子供達は。
「なぁなぁ、ロッキーこれ何?」
「なぁなぁ、ロッキーこれ誰?」
「がーーーーー!!!おのれ等やかーしゃー!!!」
子供達のやかましさにブチ切れる千堂。
掃除の邪魔をされると困るもキレ始める。
「あんたら騒ぐんやったらもう帰り!!」
「えー嫌やーー!!静かにするからーー!!」
「ほんだら大人しい遊んどき。散らかしなや!」
「「「「はーーーい。」」」」
やっと子供達が静かになった。
さっさと終わらせてしまおうと、千堂とは黙々と掃除を続ける。
しかし、大人しくしているとばかり思っていた子供達は、とんでもないことをしでかし始めていた。
「これ何やろ?」
「開けてみようや。」
「なんやこれ?」
小声で喋る子供達。
掃除に熱中するあまり、千堂とは子供達に全く気がついていなかった。
いや、正確に言えば、子供達がおもちゃにしている「モノ」に。
「風船か?これ。変な形やなー。」
「膨らまそうや〜。」
「口が大きいからでけへん〜。」
「ほなロッキーにやってもらおうや。」
「そやな。」
「なぁロッキー。」
「なんや?」
「これ膨らまして〜。」
「あぁ?どれや??」
「!!!!?!?!?!」
振り返って子供達が差し出すモノを見て、千堂は気絶しそうになった。
「何やねんな、どないして・・・、!!!!?!?!?」
同じく何事かと振り返ったも、次の瞬間目を見開いて卒倒しそうになる。
「早よ〜。これ持って外で遊んでくるさかい。」
「ほんだら掃除の邪魔にならんやろ?」
子供達は口々に「ソレ」を膨らましてくれと頼む。
そう、子供達が手にしているものは、風船などではなく、男性用の避妊具であった。
「おのれら、それは風船ちゃうんじゃ!!あーあ、アホほど開けよってからに!!」
子供達は、自分達の人数分包装を破いて中身を取り出していた。
固まっていたも我に返り、子供達の無謀な行いを阻止しようとする。
「あんたらそんなん外持って行きな!!それはおもちゃとちゃう!!」
「えー、ほんだら何なん??」
また始まった。
千堂とは顔を見合わせて溜息をつく。
「なぁー。風船ちゃうんやったら何なん?」
「さ、さぁなー。私のんちゃうから知らんわ。ロッキーに聞き。」
先手必勝で千堂に話を振る。
「ほんでまたワイかい!」
「当たり前やろ、あんたのやねんから!」
千堂とが小競り合いになる。
「なぁて〜!早よ言うてぇやーー!!」
千堂に群がり、服を引っ張る子供達。
「止めんか!!服伸びるやろ!!」
「早よ教えてーやー!!」
「わーかった!!分かったから服離せ!!!」
「こ、これはやな・・・・。」
「うん、何?」
「・・・・・、大人になったら分かる。」
「そんなん分からんわー!!ちゃんと言うてーやー!!!」
ブーイングの嵐が巻き起こる。
「これロッキーのんやろ?」
「・・・・・そうや。」
横目で睨むに冷や汗を流しながら、千堂はしぶしぶ肯定する。
「何に使うてんの?」
「どうやって使うん?」
口々に質問され、額から汗が噴き出す。
「何にって・・・・・、ナニにやろなぁ、?」
困り果ててに押し付ける千堂。
「あんた・・・!!信じられへんなぁ!!!なんで私やねん!!」
「なぁ、姉ちゃん。何に使うん?」
「えー・・・・・・。何やろ・・・。ロッキーの方が詳しいで。」
「・・・っお前!!!」
折角開放されたと思ったのに、再び話を振られ狼狽する千堂。
「なぁ。何に使うん?」
「・・・・、仲良くする時に使うねん。」
微妙な言い回しをする千堂。これ以上の知恵は彼には浮かばなかった。
が苦い顔で千堂を睨む。
「ほな俺らも使うてええん?仲エエで!」
「ええわけあるかい!!これは子供のんとちゃう!!!」
「ふーん。ほんだらロッキーは姉ちゃんと使うん?」
『『なんですと!?』』
子供の爆弾発言に、思わず顔を見合わせる千堂と。
「「使うわけないやろ!!」」
聞きようによっては違う意味にも取れる発言をする二人。
「だってロッキーと姉ちゃん仲エエから、なー。」
「「「なー。」」」
「恐ろしいこと言いな!うちらがそんなん使うわけないやろ!!」
「、お前それ何気にヤバいぞ・・・。」
これまた聞きようによってはとんでもないの発言に、ひっそり突っ込む千堂。
「ほんでどうやって使うん?」
「どうやって、ってか!?・・・・どうやんの、武士?」
「またワイか!!」
「当たり前やろ。私が答えれるわけないやん。」
子供達の視線が千堂に集中する。
言って楽になれるのならそうしたい。
しかし口が裂けても言ってはいけない。
極限にまで高まった緊張に、とうとう千堂の神経が参ってしまった。
「がーーーーーー!!!!ワイは知らんぞー!何も知らん!!!帰れ!!頼むから帰ってくれ!!!」
怒り狂う千堂に背後から追いかけられ、子供達は蜘蛛の子を散らすように逃げ帰った。
落ち着きを取り戻して部屋へ戻ってきた千堂に、が冷ややかに言う。
「あんたこの散らばったモン、片付けや。」
千堂の顔を一瞥して、掃除用具を手に階段を下りていく。
千堂は一人部屋に残された。
いつの間にかすっかり綺麗になった部屋に散らばる色とりどりのモノ。
がっくりと項垂れて、千堂は再び片付けを始めた。