「〜、蜜柑取って〜。」
「手ェ伸ばしたら届くやろ?」
ここは毎度お馴染み千堂家。
ここの孫息子・千堂武士と幼馴染の は、今日も二人でトドのようにコタツで寝転がっていた。
「なぁ婆ちゃんは?」
「鍼行ってから買い物してくる言うて出てった。しばらく帰ってけぇへんわ。」
「ふ〜ん。」
特に何をするでもなく、ゴロゴロと転がりながらTVを見ていると、これまた毎度の如く近所の子供達が乱入してきた。
「さっぶーーー!!コタツ入れてぇや〜!!」
「またお前らか!何自分んちみたいに寛いどんねん!!」
「ええやんかー。いけずせんといてや〜!!」
「武士ちょっと横詰めたりぃや。」
に言われ、しぶしぶ子供達の為に場所を開けてやる千堂。
コタツに入った子供達は、めいめい蜜柑を食べたりお茶を飲んだりと、好き勝手にやっている。
見ていたドラマが終り、CMが流れ始めた。
すると子供達の一人が、急にある質問を千堂にぶつけてきた。
「なぁなぁロッキー?」
「んぁ?」
「あれ何なん?」
子供が指し示す方に目をやると、TVで生理用品のCMが流れていた。
途端に固まる千堂。
「なぁて!!あれ何なん!?」
「さ、さぁ知らんなあ。」
「姉ちゃんは?知ってる??」
話を振られないようにそっぽを向いていたも固まる。
笑顔を貼り付けて、「し、知らんわ・・・。」と答えた。
気まずい大人二人。
ブーブーと騒ぎ出す子供達。
「やかましいわ!!知らんもんは知らん!!!」
「嘘や!!!絶対知ってんねやろ!!」
大声で言い合う千堂と子供達。
「何でそんなこと聞くん?」
とは聞いてみた。
「だっていっつもTVでやってるやんかー。何なんか気になるねん。」
と答える子供。
まだ性教育を受ける学年ではないのだろう。子供達は純粋に疑問をぶつけてくる。
「お母ちゃんに聞いたら?」
「聞いたらどつかれた。」
「・・・。」
「もうちょっとしたら学校で習うからそれまで待っとれ。」
と千堂は言った。それが地雷を踏むことになったとは知らずに。
「学校で習うん?ほんだらロッキーも姉ちゃんも習ろたん?やっぱり知ってるねんやんかーーー!!」
『アホンダラ!!』という顔で千堂を睨みつける。
千堂は、自分が墓穴を掘ったことにやっとこさ気がついた。
「教えてーなー!ケチー!!」
子供達がワーワーと群がってくる。
「ダーーー!!!分かった!分かったから首絞めるな!!!」
「あれ何に使うん?」
「あれ、は・・・・。何やろな・・・・。オムツ、か、な??」
「ま、まぁそんなようなもん、かな?」
『私に振んな!!』と千堂の肘を小突く。
「誰のオムツなん?」
「ん〜・・・・・。誰のやろ、な?武士。」
『何でワイに言わすんじゃ!!』と小声で抗議する千堂。
「なあ、誰の?」
「お、大人用ちゃうか?」
「ホンマに〜!?めっちゃ小っちゃいやん!!」
「知らんやん、そんなん。」
「ほんだらロッキーも使こてんの?」
「使うか!!!アホ!!!」
思わず大声で叫ぶ千堂。
「姉ちゃんは?使こたことあんの?」
「え??」
嫌な緊張のあまり、満面の笑みが張り付く。
「え〜〜〜〜〜と・・・・」
「あ〜〜、あるある。」
「っっっ!!??!!」
勝手に答える千堂。
即座にの拳が、千堂の太腿にめり込む。
「イっっっ!!??!」
「??どないしたんロッキー?」
「いや・・・・、何もない・・・・。」
涙目になりながら、痛みに耐える千堂。
「ほんだらな、多いとか少ないとかって何なん?」
「オムツやねんから、オシッコのことちゃうん?」
「そっかー!!」
勝手に納得する子供達。
「でもなんで大人がオムツするん?」
「大人もチビるん?」
またもや質問の矛先が向けられる二人。
「そやから使うんちゃう、か?なぁ。」
「そやから私に振るなっちゅーてるんじゃ。そ、そうちゃう?」
「ほんだら姉ちゃん大人になってもチビってるんやーー!!」
「なっっっ!!!!」
不名誉な疑いを掛けられ、狼狽する。
「チビれへんわ!!あんたらと一緒にせんといて!!」
「ほんだら何に使うん??」
また子供達の疑問が振り出しに戻る。
「なぁロッキー、学校で何て習うん?」
「ロッキーは何て習ろたん??」
子供達の目が一斉に千堂に向く。
「なんて、って・・・・」
に目で助けを求めるが、シカトされる。
「わ、忘れたわ・・・・。」
「嘘や!!!」
子供達の好奇心の塊のような目。
助けてくれない。
気まずい空気。
千堂はついにブチ切れた。
「だーーーーーー!!!もう知るか!!!大人になったら分かる!!!もうお前ら帰れ!!帰れ帰れ帰れ!!!!」
子供達を叩き出し、冷蔵庫から冷たいお茶を取り出してラッパ飲みする千堂。
「あんた、私に振りなや!」
「ワイにどうせぇっちゅーんじゃ!お前が教えたれや!!」
「嫌やっちゅーねん!!」
千堂の持っているお茶のペットボトルをひったくり、同じくラッパ飲みする。
「最近の子供らは恐ろしいなぁ。」
「あんたがいらんこと言わんかったら知らん顔出来てん。」
「ワイのせいか!?」
言い合う二人の様子は、子供に都合の悪いことを聞かれた親のようであった。