柔らかい陽の差す午後。
穏やかな風に草木が揺れ、ヤギやニワトリがのんびりと歩き、
畑仕事に精を出す大人達の間を縫うようにして、子供達が走り回っている。
そんな長閑な景色を織り成すこの村は、荒れ狂う乱世に根付いたささやかな、けれどかけがえのない『平和』だった。
やがて、遊び転げる子供達の声に混じるようにして、車の走行音が聞こえてきた。
いち早くそれを聞き取った子が、ピタリと足を止めた。
それに釣られるようにして、一人、また一人と足を止め、音のする方に目を向けた。
向こうから、一台のジープが走ってきていた。
減速しながら村の中へと入って来るそのジープを見て、子供達は目を大きく見開いた。
外から聞こえる子供達の騒ぎ声に、は仕事の手を止めた。
「何だか外が騒がしいわね。」
「本当。どうしたのかしら?」
隣で同じ作業をしていたアイリが立ち上がり、窓の外を覗きに行った。
そして、ハッと息を呑んでを振り返った。
「兄さん達よ!帰って来たわ!」
アイリは顔を輝かせると、居ても立ってもいられないとばかりに外へ駆け出して行った。
村に必要な物資を調達する為、遠くの町へ出掛けて数日留守にしていた兄と恋人が帰って来たのだから、そうなるのも当然だ。
自身も、アイリと全く同じ気持ちだった。
だが、同じように駆け出して行ったところで、生憎と今は『渋滞中』。
は逸る気持ちを抑えると、中途半端なところで止めていた作業に戻り、区切りをつけた。
それから外に出てみると、案の定、人だかりが出来ていた。
数日ぶりに帰って来た男達と、留守番をしていたその家族の輪が。
「ほ〜ら、土産だぞ!」
「うわぁ、チョコレートだぁ!ありがとうお父さん!」
「留守の間、何事も無かったか?」
「ええ、何も!」
「道中、大丈夫だった?」
「勿論、大丈夫なもんかい!行きも帰りも野盗共の襲撃に遭ったに決まってんだろ!」
「けど、何たってこっちにはレイがいるからな!俺達も荷物も、何もかも全部無事さ!」
「全く、南斗水鳥拳伝承者サマサマだよ!足を向けては寝られないねぇ!」
人々の輪の中心にいるのは、アイリの兄であり、の恋人であるレイだった。
この村の平和は、レイの力で成り立っていると言っても過言ではなかった。
銃を持った悪党が群れを成して襲って来ようが、ものともしない。
レイの南斗水鳥拳はそれ程の圧倒的な力を、常人離れした強さを誇っていた。
その気になれば幾らでも私利私欲を追求し、人を服従させられる力がありながら、
しかしレイは、一村人以外の何者にもなろうとはしない。
自分の家族のみならず、この村に住む全ての人を大切に思い、その力はこの村と村人達を護る為にしか使わない。
そんなレイが、には何よりも誇らしかった。
「その言葉が本当なら、今度何か美味いものでも食わせろ。」
村人達の冗談混じりの敬意を涼やかな笑みで返してから、レイは人だかりの中から抜け出て来た。
その瞳は、まっすぐにを見ていた。
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
優しいその瞳に、も微笑みで応えた。
「行きも帰りも野盗に襲われたなんて、大変だったでしょう?お疲れさま。」
「なに、どうという事はない。野盗なぞ、俺にとっては食い物にたかってくるハエみたいなものだからな。
それよりあいつの方がよほど始末が悪いぞ。」
レイは些か大袈裟に溜息を吐いて、向こうにいるアイリの恋人を親指で指した。
「どうして?」
「アイリへの土産ひとつ選ぶのに、あれでもないこれでもないと、何時間付き合わされたか。
何でも良いから適当に選べと言っても聞かんし、全く・・・・・」
うんざりとしたレイの顔と、アイリと幸せそうに笑い合っている彼の顔とを見比べて、は思わず吹き出した。
「でも、何だかんだで付き合ってあげたんでしょう?」
「・・・・・・・・・・仕方がないだろう。
突き放しても、子犬みたいな頼りない目をして離れんのだから。」
その子犬のような少々頼りのない男を、レイは決して嫌ってはいない。
むしろ、何かと目をかけ、可愛がってさえいる。
彼の心根の優しさと、アイリに対するひたむきな愛が、本物だからだ。
その事を、は良く知っていた。
「ふふっ・・・・・、ふふふふっ・・・・・・・」
「・・・何がおかしい?」
「別に。ふふふっ・・・・」
笑っていると、村の女性が一人、忙しげに駆け寄って来た。
「ちゃん、お料理手伝って!長老が、今夜は宴会だってよ!」
「はい。」
「レイ、帰ってきた途端に悪いけど、彼女と妹、借りてくわよ!
その代わり、夕飯は期待しといて!」
「また後でね、レイ。」
その女性に引っ張られるようにしてレイから離れたは、レイが一瞬、何か言いたげな顔をしていた事に気付かなかった。
その夜、村をあげての宴会が開かれた。
これは時々催される村の行事で、女性達が総出で拵えた料理を囲み、老人から子供まで、全員でワイワイと騒ぐのである。
この宴は村人同士の結束を固め、生きる活力を与えるのに重要な役割を果たしていた。
物がなく、かつての常識やルールが通用しなくなったこの乱世において、何より大切なのは、人の絆。
この村の長は常日頃そう説いており、村人達も皆、その考えに心から賛同していた。
宴席に出される料理は、普段の食事と大差ない。
酒も、花もない。
けれど、笑顔はある。溢れんばかりに。
温かく、長く、自由なその夜を、村人達は思い思いに楽しんでいた。
「しっかし、良いよなぁレイは!」
「何がだ。」
「アイリちゃんとちゃん、村で一・二を争う美女が、どっちもお前のものなんだからな〜!」
「本当、羨ましいぜ!俺も両手に花ってのを一度味わってみたいもんだよ!」
「全く、何でお前だけそう女運が良いのかねぇ〜!?
俺なんか、口やかましいカカアしか当たらなかったのによぉ!」
場が盛り上がってくると、側にいた男達が数人、ニヤニヤしながらレイを冷やかし始めた。
レイの隣で食べていたは、恥ずかしくて思わず視線を逸らしたが、
レイは落ち着き払った微笑を浮かべたまま、淡々と食べていた。
「何言ってんだよ!アンタとレイじゃ、ご面相がまるで違うんだよ!ねえちゃん!?
アタシだってどうせならレイみたいな良い男を旦那にしたかったよ!アンタみたいなチビじゃなくてね!」
「何だとぉ〜!?言ったなコイツ〜!」
自分の周りで犬も食わない小競り合いが始まっても、レイの様子は変わらなかった。
涼しい顔で黙々と自分の皿のものを綺麗に食べ尽くしてから、レイはふと思い出したように、
夫婦喧嘩中の妻の方に話し掛けた。
「まあそう怒ってやるな。野盗に襲われた時、こいつ、あんたと子供の名前を呼びながら、必死で闘っていたんだぞ。」
「えっ・・・・!?」
「ちょっ・・・、レイッ!テメェ余計な事喋ってんじゃねーっ!」
「仲が良くて羨ましい限りだな。俺がここにいては邪魔なようだから、場所を代わってやろう。」
レイは夫婦をからかい返すと、スッと立ち上がった。
そして、意味ありげな視線をに向けてから、一人で何処かへ行ってしまった。
その視線の意味は何となく分かるものの、問題はタイミングだ。
いつ、どのタイミングで出るべきかを考えていると、向こうで若い男が一人立ち上がり、よく通る声を張り上げた。
「よーしお前らよく聞けぇいっ!レイからのリクエストだ!
この村の全ての夫婦・カップルに、とびきり甘いラブソングを贈るぜぇっ!」
その途端、歓声が飛び、口笛がそこかしこで鳴らされた。
彼は村で一番歌が巧く、こういう場では、場を盛り上げる演出として、彼の歌がよく披露される。
村人全員の意識が彼に向くこの一時は、抜け出すのに絶好の機会だ。
ハッと気付いてレイを見ると、レイは唇を吊り上げてドアの方を指し示し、
大きな手拍子と気持ちの良さそうな歌声に紛れるようにして、宴会場を出て行った。
もレイの後を追って、近くのドアから抜け出した。
村人達は全員歌の方に気を取られており、誰にも呼び止められる事はなかった。
部屋の外に出ると、レイが待っていた。
レイはの姿を目に留めると、微笑んで歩み寄って来た。
「・・・これで暫くは喉自慢大会だ。さあ、行こう。」
「ふふっ。うまくやったわね。」
「早くお前と二人きりになりたかったんだ。」
「レイ・・・・・・・」
レイのまっすぐな眼差しに、の胸は密かに高鳴った。
村の外れの納屋は、逢引にはうってつけの場所だった。
場所をそこに変えると、レイは懐から小さなものを取り出し、に差し出した。
「土産だ。」
「・・・私に?」
渡されたのは、細かな彫刻が施された木の櫛だった。
「綺麗な櫛・・・・・!」
「気に入ったか?」
「とっても!ありがとうレイ!」
は結っていた髪を解き、その櫛で髪を梳いた。
櫛目から零れ落ちていく自分の髪が、自分の髪とは思えない程綺麗に見えて、はレイを見上げて微笑んだ。
「・・・その顔が見たかった。」
レイはふと目を細めて、の頬に触れた。
「お前の喜ぶ顔を早く見たくて、すっ飛んで帰って来たというのに、
昼間はまともに話す暇も無かっただろう。もう待ちきれなくてな。」
「レイ・・・・・」
村人達は、レイの強さを信じている。少々過信しすぎな程に。
村の存亡は、実質レイ一人の肩に懸かっているようなもので、レイ自身はそれを少しも重荷に感じていないようだが、
はそんなレイに対して、誇らしさと同時に、一抹の不安と罪悪感をも抱えていた。
「私・・・、何も無くて良いの。貴方が無事に帰って来てくれれば、それだけで・・」
続く言葉は、レイの唇に吸い取られた。
「・・・・・そんな事は当たり前だ。俺はいつだって、お前の元に帰って来ているだろう?」
「・・・ええ・・・・・」
「俺は、この村の連中の笑顔が見たいのだ。中でも特に、お前の笑顔がな。
その為なら俺は何だって出来るし、それが俺の生きる力となる。分かるだろう?」
には頷くしかなかった。
文字通り、その身を盾にして護ってくれるレイに対してが出来る事は、
自分の想いの全てを捧げ、自分の全てで彼の愛に応える事だけだった。
「愛してるわ、レイ・・・・・・」
今度はから口付けを求めていった。
唇が触れ合うと、レイの逞しい腕が力強くを抱きしめた。
レイはを乾し草の束の上に横たえると、そっと覆い被さってきた。
「ぁ・・・・・・」
首筋にかかる微かな吐息の温もりが、を甘く擽った。
「ん・・・・・」
村を護るレイの強固な手は、に触れる時はいつも優しい。
丁寧に服を寛げ、素肌の上を固い指先や大きな掌が、しなやかに滑っていく。
「・・・・は・・・・っ・・・・・・・・」
その穏やかな心地良さに浸っていると、おもむろにレイの舌が、の胸の頂を絡め取った。
「あ・・・・、んんっ・・・・・・!」
レイの熱い舌が、敏感な其処を軽やかに擽っては吸い上げる。
その感触に、は堪らず身をくねらせた。
「あっ・・・・・・・、あぁ・・・・・・・!」
肌を弄る手が下りていき、の長いスカートを捲り上げ、ギュッと閉じ合わせていた太腿の間に滑り込んでくる。
指先をほんの少しだけ、僅かに食い込ませて、まるで待っているかのように。
それに気付いたは身体の力を抜き、片足を立ててゆっくりと開いた。
「ぁっ・・・・・・!」
レイの手は、下着越しにの秘部を一撫ですると、すぐに下着の中へと潜り込んできた。
「んんっ・・・・・!」
最も敏感な花芽を優しく摘まれ、は大きく身を震わせた。
レイはそんなを見て、微かに笑った。
早々と悦びに震えてしまっている自分を見透かされて恥ずかしいとは思うが、誤魔化す余裕はもうなかった。
「んっ・・、あぁっ・・・・!あぁんっ・・・・・!」
上半身と下半身、両方の突起を舌と指で同時に弄られて、官能の炎は一気に燃え上がった。
頭の中はレイでいっぱいで、他の事など何も考えられなかった。
「あ、・・・っん、レ、イ・・・・、んんっ・・・・!」
顎を上向けると、深く、甘いキスが与えられた。
レイはこうして、何でも与えてくれる。
安らぎも、喜びも、快楽も。
そんなレイが、堪らなく愛しかった。
「んぅ・・・・、んっ・・・・・!」
蕩けてしまいそうな愛撫に耐えながら、は下方へ手を伸ばした。
自分の太腿に当たっている、熱い塊に。
「っ・・・・・・」
それに触れ、優しく擦り始めると、レイの動きが止まった。
レイは長い睫毛を伏せて、熱い吐息を微かに零して、じっとに身を委ねている。
撫でれば撫でる程、の手に当たる塊は更に硬度と質量を増していき、
たちまちズボンの前がはち切れてしまいそうな程になった。
「レイ、今度は、私が・・・・・・」
がおずおずと身を翻すと、レイとの位置が入れ替わった。
はレイに微笑みかけ、彼の身体の上を滑り下り、ズボンの前を寛げた。
そして、雄々しくそそり立っている楔に口付けた。
「っ・・・・・、・・・・・・」
レイの身体がピクリと跳ね、擦り切れそうな低い声がの名を呼んだ。
その声に自分も身を震わせながら、はゆっくりとレイを咥え込んでいった。
「ぅっ・・・・・・・・!」
可能な限りに深く咥え込んでじわじわと吸い上げると、レイが篭った声を微かに上げた。
感じてくれているのだ。
そう思うと嬉しくて、は一生懸命に舌を這わせてレイを愛撫した。
「ん・・・・・っ・・・・・・ぐっ・・・・・・・」
口中のレイは大きく、硬く、喉の奥まで届いて時折むせそうになるが、
そんな事は、髪を撫でてくれる硬くて優しい手の感触が全て掻き消してくれる。
夢中で愛撫を続けていると、不意に手首をクイと引っ張られた。
「・・・・・・・、こっちへ・・・・・・・」
「え・・・・・・?あっ・・・・・!」
誘われるがままに一度身を起こすとヒョイと抱え上げられ、気が付くとは、レイの上に完全に覆い被さっていた。
それも、尻をレイの顔の前に突き出す格好で。
「あっ、やだっ・・・・・・・!」
再びスカートを捲り上げられ、下着を引き下ろされた。
そして、剥き出された花弁に、熱く滑ったレイの舌が押し当てられた。
「あぁんっ!」
秘裂の間を割るレイの舌使いに、は甘い声を上げた。
「あっ、あっ・・は・・・・、あぁっ・・・・!んっ・・・・・・!」
たちまちの内に、立場はすっかり元通りになった。
レイの舌は淫らな粘着音を立てながらの中心を擽り、時折中まで入り込んでは、蜜を掻き出して啜る。
濃厚なその快感に、は翻弄されるばかりだった。
「あっ、あっ、んんっ・・・・・!ぅっ・・・・、んぁぁっ・・・・!」
握ったままのレイの分身にどうにか舌を這わせてみるが、まるで力が入らない。
レイの腰にしがみ付いて只々喘いでいると、不意を突くようにして、レイの指が入ってきた。
「あぁぁっ・・・・!」
内壁を擦り上げるようにして奥を貫かれた瞬間、腰の奥が痺れて蠢き、はレイの上にぐったりと倒れ込んだ。
「・・・今日は随分と早いな。」
を改めて組み敷きながら、レイは楽しげな笑みを浮かべた。
一度果てて理性が戻ってくると、何だか恥ずかしくて、はプイと顔を背けた。
「・・・・だって・・・・・・・」
自分でも分かっているから、恥ずかしいのだ。
レイが無事に帰って来てくれると、いつも堪らなく彼が欲しくなる。
レイはちゃんとここにいると、自分の全てで感じたくて堪らなくなるのだ。
「・・・寂しい思いをさせて、悪かったな。」
レイの唇が、の頬に柔らかく押し当てられた。
「連れて行ってやれたら良いのだろうが、やはり女を連れて行く訳にはいかんのだ。
外は野盗共がウロウロしている。村にいるのが一番安全だからな。」
「・・・ええ・・・・」
そんな事は分かっている。
野盗などにレイが負ける筈がない事も。
それでも時折、どうしようもなく心配になる。
そして、心配するしか出来ない自分が、堪らなくもどかしくなるのだ。
「・・・・きて、レイ・・・・・・」
はレイの首をかき抱き、そっと引き寄せた。
するとレイは微かに笑い、の脚の間に腰を沈めた。
「ああ・・・・・」
綻んだ花弁の中心に、熱い塊が押し当てられた。
間もなくそれに貫かれ、また目も眩むような絶頂へと流されていくだろう。
その時を予感して、はしっかりとレイにしがみ付いた。
「んっ・・・・・、あぁっ・・・・・・・!」
やがて、ゆっくりとレイが入って来た。
身体の中心をじわじわと割って入ってくるその衝撃に、は震えた。
「はぁっ・・・・、あぁぁっ・・・・・・!」
浅く、深く、身体の中に刻み込まれるそのリズムに翻弄され、あっという間に何も考えられなくなる。
只々、この人が愛おしいという事以外は、何も。
「レイ・・・ッ・・・・、あぁっ・・・!レ・・・イ・・・・・・!」
激しい情熱に浮かされ、うわ言のように名を呼ぶと、
それに応えるように、レイがの耳朶を甘く噛んだ。
「あぁんっ!!」
快感が電流のように、の体内を一気に駆け抜けた。
「・・・・・・っ・・・・・」
「あぁっ、やぁっ・・・・!んぅぅっ・・・・!」
深く重ね合わせた唇から、熱い吐息が吹き込まれる。
子宮に刻まれるリズムも、どんどん激しくなっていく。
「んんんっ・・・・・!は・・ぅぅっ・・・・・・・・!」
「はぁっ・・・・・、・・・・・・・!」
レイの声にも、もう余裕はなかった。
の首筋や、胸元や、至るところに口付けを降らせながら、の腰を抱え込み、激しく打ちつけてくる。
その刺激に涙が自然と滲み、切なげに顰められたレイの顔がぼやけた。
「・・・・・愛している・・・・・・・!」
「あぁぁぁっ・・・・・!!」
吐息の合間に囁かれたその言葉を、レイの愛を、は自分の全てで受け止めた。
熱く激しい情事の余韻は、心地の良い気だるさを含んだ穏やかな空気となって、二人を優しく包んでいた。
堪らなく幸せなこの一時に身を委ねていると、ついつい時が経つのも忘れてしまうが、宴会の方はあれからどうなっただろうか。
「・・・喉自慢大会、もう終わったかしら?」
「さあ・・・、かもな。」
レイはを抱いたまま、気のない返事をした。
「そろそろ戻る?」
「アイリはあいつが責任を持って家まで送り届ける。腹も満たされた。
そして、お前はここにいる。」
「え・・・・?あっ・・・・・」
その言葉の意味を考える暇もなく、は不意打ちのように唇を甘く啄ばまれた。
「・・・つまり、戻る理由がない。」
「あ・・・・・、んんっ・・・・・!」
レイの含み笑いの意味が分かった時には、もう深く口付けられていた。
二人して長く宴席を中座していたらまた色々冷やかされてしまいそうで、
それを考えると気にはなったが、それでもやはり、抗う事は出来なかった。
まだ、離れたくなくて。