頑丈さだけが取り柄のような無骨なテーブルに、今夜も食事が並んだ。
干した野菜が入ったスープと固いパンだけだが、こうして毎日ありつけるだけでも幸せだと思うし、また、大したものだとも思う。
せっせと畑仕事をして作物を育て、拾ってきた木片や端切れで細々とした物を拵えて、
それでも足りない分は、時折町に出向いて子供達に読み書きを教えたり、子守りなどをして賄って。
こんなやり方で、この時代に女一人、よくぞ今まで無事でやってこられたものだ。
向かいの席で食前の祈りを捧げているを見つめながら、リュウガはそんな事を思った。
「神よ、あなたのお恵みに感謝します・・・・・」
神に祈りを捧げないリュウガを、は遂に、窘める事はなかった。
最後まで、何も要求しなかった。
信仰も、感謝も、そして救いも。
「・・・・リュウガ様?どうかなさいましたか?」
見られている視線に気付いたのか、は祈りを中断させた。
「どうぞ、私にはお構いなく、先に召し上がって下さいね。」
「・・・・・ああ」
勧められて、形ばかり水の入ったコップに口を付けて見せると、
は安心したようにまた瞳を閉じ、祈りの言葉を唱え始めた。
これが最後の晩餐だと告げれば、はどんな反応を返すだろうか。
明日、ここを発つと言えば、はどんな顔をするだろうか。
「・・・・・・・」
リュウガは一瞬、口を開きかけたが、声を出す事は出来なかった。
無遠慮に窓を叩く冷たい夜風のように、の祈りを邪魔する事は出来なかった。
その清らかな声を、今はただ、静かに聴いていたかった。
食事が済むと、リュウガは早々に貸し与えられている部屋に戻った。
夜が更けて、部屋の中は外との区別が付かない程、深い闇に閉ざされていた。
灯りなら机の上にランプがある。遠慮なく自由に使ってくれとも言われている。
しかしリュウガはこれまで、極力それを使わずに過ごしてきた。
油は貴重品、フラリと転がり込んできた居候が、無遠慮に消費して良い物ではないからだ。
いや、油だけではない。
食料も、水も、あらゆる物資が、今は手に入り難い。
の暮らしぶりを見る限り、そういった生活必需品を必要最低限手に入れるのにも四苦八苦している筈だった。
そうやって四苦八苦してでも、今までどうにかやってきたのは大したものだと思うし、
また、運が良かったからこそ無事でやってこられたのだとも思う。それこそ神の加護だったのかも知れない。
だが、それもそういつまでもは続かない。
いや、もう間もなく終わってしまうのだ。拳王軍の侵攻と共に。
「・・・・・・・・」
闇の中、リュウガはの姿を思い浮かべた。
真っ先に浮かんできたのは、忙しく立ち働く後ろ姿だった。
の行動はいつも、何かしら働いているか礼拝堂で祈りを捧げているかのどちらかで、
腰を落ち着けて寛いでいるところは見た事がなかった。
差し向かいでゆっくり語らう事も、結局一度もなかった。
が常に何かしら忙しそうにしているからか、が聖職者だからか、
それとも、私は聖職者であるという自意識が、から隙を無くしていたのか。
ともかく踏み込めず、必要以上にと同じ空間に居合わせる事は、これまでしてこなかった。
常に一定の距離を空け、必要以上に話さず、顔を合わせず、勿論、指一本触れず。
だからはきっと、気付いていないだろう。
― もし貴方さえ宜しければ・・・・、ずっとここに居ませんか?
だが、あの時、は初めて隙を見せた。
あれは、数日前のあの言葉は、どういうつもりだったのだろうか。
あれっきり、はその事に触れようともしないが、リュウガはまだ忘れられなかった。
修道女としての博愛心からの言葉なのか、それとも、女としての気持ちなのか。
あの時はどちらなのか判断に迷ったが、それから数日、の様子は全く変わりなく、
この寂れた修道院を出るかどうか、考えている節すら見当たらない。
の中に恋心かあろうがなかろうが、いずれにせよ今の生活を変える気は、には一片たりともないのだろう。
つまりは、修道女として在る事を選ぼうとしているのだ。
同じ気持ちを、リュウガもまた密かに抱いている事に全く気付いていないまま。
出来る事なら、の心を手に入れたい。
戒めの鎖のようにその心をがんじがらめに縛っている『神』を少しずつ解きほぐしてやり、
自由になった心をが自ら望んで差し出してくるようにしてやりたい。
そして、この想いを、心を、受け入れて貰いたい。
だが、それをするには時間がなさすぎた。
これ以上消息を絶ったままでいれば何かしら面倒な事になりそうだし、そもそも今はまだ、拳王軍を離脱する気はない。
かと言って、拳王の元に戻れば、すぐさまこの地区への侵攻が始まる。
をこのまま見捨てて行けば、どうなるかは目に見えている。
― 最早悠長な事は言っておれんな・・・・
リュウガは静かに立ち上がった。
この深い闇の中にを一人残していく事など、どうして出来ようか。
必ず連れ出してみせる。
― たとえどんな手を使っても、必ず・・・・・
残酷な決意を胸に秘め、リュウガは部屋を出て行った。
礼拝堂にの姿はなかった。
既に蝋燭も吹き消されており、そこはリュウガの部屋と同じ位の濃さの闇に塗り潰されていた。
その深い深い闇の中、十字架に磔にされた神の偶像だけが、ぼんやりと白く浮かび上がっていた。
「・・・・・・・俺は、お前など信じてはおらぬ。」
リュウガは『神』を仰ぎ、話し掛けた。
こんな事をするのは、ここへ来て初めてだった。
「俺が信じるのは、我が天狼の眼。そして、この眼で見極めた救世主だ。
乱世を鎮め、世を平和へと導くのは、この天狼の眼に見定められし救世主のみ。
お前の如き無力な木偶の坊では、断じてない。お前の力では、この乱世は治まらぬ。」
もしも今、ここにが現れたら、はどれ程怒るだろうか。
これ程の暴言を吐き、神を侮辱する俺を見たら、どれ程。
ふとそんな事を考えたら、乾いた笑いが小さく洩れた。
「は俺が貰い受ける。指一本触れる事も出来ない石膏の像に、生身の花嫁など必要あるまい。」
リュウガはまるで恋敵に向けるような挑戦的な笑みを浮かべて『神』に一瞥をくれると、礼拝堂を後にした。
礼拝堂にいなければ、残る心当たりは私室しかない。
今までは一度たりとも訪ねた事のなかった、の部屋だ。
リュウガはの部屋の前まで来ると、粗末な木のドアを軽く叩いた。
「はい?」
ややあって、中からが顔を出した。
「リュウガ様。こんな夜更けにどうかなさいましたか?」
はまだ法衣姿のままで、少し驚いたような表情をしていた。
「話がある。」
「・・・そうですか。どうぞ中へ。」
驚き、戸惑いながらも、はすんなりとリュウガを招き入れた。
その部屋は、他のどの部屋よりも質素だった。
何種類かの板切れをどうにか寄せて作ったらしいベッドと机がある他は何もない。
リュウガはひとまず、そのベッドに腰を下ろす事にした。
「明日、ここを発つ事にした。今まで世話になった。」
単刀直入にそう告げると、は暫し、言葉に詰まった。
「・・・・・・そう・・・ですか。随分急ですね・・・・」
「遅すぎるぐらいだ。少々長居をしすぎた。」
「・・・・寂しくなりますね。どうかお気をつけて。旅のご無事を・・・・、お祈りしています。」
の微笑みは、リュウガの目には無理をしているように見えた。
今にも涙ぐみそうなその瞳を、リュウガは歯痒い思いで見つめていた。
「あの、もし時間の融通が利くのなら、出発の時刻を少しだけ遅らせて頂けますか?
また旅に出るとなると、それなりの準備が必要でしょう?ましてリュウガ様は病み上がりですし。
私、明日の朝一番で町に行ってきますから、何か食料と、出来たら薬を・・・・・・・」
無理やり微笑む位なら、どうしてこの胸に縋って泣かないのか。
そうしてくれたら、『恋』から始められたのに。
「ああそれから、馬の餌も必要ですわね。他に何かご入り用な物はありますか?」
女としての自分を押し殺して、慈悲深い修道女の顔で別れようとするを前に、リュウガは腹を括った。
「リュウガ様?」
甘い恋から始めて、愛し愛されたかった、などとはもう思わない。
考えてみれば、孤高の星の下に生まれついた男が、人並みに誰かの温もりを求めようとする事自体、滑稽だったのだ。
悪と罵られようが、神から罰を下されようが構わない。
を救うには、もうこれしか方法はないのだから。
「あの・・・・、リュウガ様・・・・?」
リュウガは立ち尽くすの細い手首を掴み、自分の方に引き寄せた。
そして、行為の意図が掴めず戸惑うを胸に抱き入れ、その頭部を覆う黒い布を取り払った。
「リュウガ様、何を・・・・」
「・・・・・美しい。」
不格好な黒頭巾が隠していたのは、艶やかな亜麻色の長い髪であった。
そして、その眩い髪を露にしたは、正しく今が盛りの花のようであった。
「リュウガ様・・・・、一体どうなされたと・・・」
「。今宵、お前を俺のものにする。そうして、俺の旅に連れて行く。」
「なっ・・・・!?」
リュウガの行為の意味が分かり、狼狽し始めたを、リュウガはベッドに組み敷いた。
「リュウガ様!?お戯れは・・・・」
「戯れではない。俺はお前に惚れた。何が何でも俺のものにし、共に連れて行く。」
「リュウガ様、私は神に仕える身!神に嫁いだ身なのです!」
ここまでされれば、流石にも平静ではいられないようだった。
はいつになく大きな声を出し、毅然とリュウガを拒絶した。
「貴方のお気持ちを受け入れる事は・・・」
「神がどうした。お前の気持ちはどうなのだ?」
だが、にしてみれば精一杯の抵抗でも、リュウガにとっては無きに等しいものだった。
いや、むしろ。
「姿形のない幻に、お前はこの先ずっと支配されていくつもりか?」
「っ・・・・・・・・・!」
気丈に見開かれた瞳も、微かに震えている唇も、リュウガの劣情を一層煽るだけだった。
「私は・・・・・、リュウガ様、私はやはり・・・・・。どうか後生ですから・・・・・」
「・・・・言っても分からんか。ならば力ずくで神から奪い取るまで。
男に抱かれ、堕落した花嫁ならば、神の方から見放すだろうて。」
を見下ろす顔に冷たい笑みが浮かぶのが、リュウガ自身にも分かった。
およそ惚れた女を抱こうとする男の顔ではない、これではまるで獲物を追い詰めた獣だ。
野に生きる気高き獣ではなく、卑しい劣情に囚われた『ケダモノ』だ。
だが、もう後戻りは出来ない。
「そんな・・・・!」
「お前を救うのは、何の役にも立たぬ『神』などではない。このリュウガだ。」
「リュウガ様・・・・、いけません!」
明らかに怯えて震えているの両手首を、リュウガはしっかりと掴んで捕らえた。
逃げられないように。抵抗出来ないように。
嫌だろうが何だろうが、この『ケダモノ』を受け入れるしかないように。
「敢えて詫びはせぬぞ、・・・・・!」
「リュ・・・、あぁっ・・・・・!」
リュウガはの瞳をまっすぐ見つめたまま、その小さな唇に躊躇いなく噛み付いた。
早く喰らい尽くして、我が物にしてしまわなければならなかった。
この愛しい『獲物』が、自分と同じ『ケダモノ』の手によって、無残な嬲り殺しにされてしまう前に。
「んぅっ・・・・!うっ・・・・・・!ぃやっ・・・・!んっ・・・・・!」
抵抗するを力で捩じ伏せて、リュウガはその唇を激しく貪った。
「んっ・・・・・!やぁっ・・・・・うっ、んぐっ・・・・!」
の抵抗は、抵抗の内にも入らない、弱々しいものだった。
捻じ込まれた舌を噛むでもなく、股間を蹴り上げるでもなく、
ただもがくだけで、リュウガに苦痛を与えるような真似はしなかった。
それも慈愛の心ゆえか、それとも恋慕の情ゆえか、はたまた無知なだけなのか。
ただ一つ確実に言えるのは、がこの行為を凌辱と認識して怯えているという事だけだった。
「あっ、いやっ・・・・、んっ、ふぅっ・・・・・!」
必死の思いで顔を背けて逃げても、顎を掴まれて強引に引き戻され、また良いように唇を貪られ、舌を吸われて。
そんな口付けを喜ぶ女などいない。この野蛮な行為を愛の営みと思う女などいない。
そんな事は、最初から百も承知している。
こんな形から始まる事を、は決して望んでいない事も。
だが、こうするしか術がなかったのだ。
を心変わりさせるには、無理矢理にでもその身体に女の悦びを覚えさせるしか。
その身体に、決して抗えない本能の疼きを呼び覚ませるしか。
「いい加減に観念しろ。どれだけあがこうが無駄だ。」
リュウガはの上に殆ど馬乗りになりながら、シャツを脱ぎ捨てた。
上半身を露にしただけで、は火を噴きそうな程に顔を赤らめ、涙目で小さな悲鳴を上げた。
いよいよ取って食われる寸前の獲物のように。
「こんな枷のような服など、もう二度と着る必要はない。」
「ぁ・・・・・・っ、い、やぁ・・・・・・・・!」
震えているの法衣の襟元を、リュウガは一思いに引き裂いた。
「きゃあっ!いやぁっ・・・・・・!」
リュウガは泣き叫ぶから無理矢理毟り取るようにして、重々しい黒い法衣を脱がせた。
そして、白い薄衣一枚の姿になったを仰向けに押さえ付けると、その胸元に強く吸い付いた。
「あっ・・・・・!」
所有の証が、白い胸に刻印される。
くっきりと刻みつけられたそれを確認するように一瞥して、リュウガはの胸元を大きく肌蹴た。
「いやっ・・・・・!」
さほど豊満ではないが、張りのある美しい乳房が、リュウガの眼前に晒された。
その頂が、官能的な紅色に色付いて存在を主張している。
リュウガはそれを啄ばみ、舌で舐め上げた。
「あぁっ・・・・・・・!」
がビクリと身を震わせた。
未知の感覚が怖いのか、肩が強張っていて、無駄な力が入っているのが分かる。
「あっ、んっ、んっ・・・・・・・・!」
リュウガはあっという間に固くしこったの宝珠を尚も舌先で転がしつつ、
衣の裾を捲り上げて太腿を撫で上げ、下着の上から秘部を擦った。
「いやあっ・・・・・・!」
その途端、はまた激しくもがき始めたが、抑え込むのは容易い事だった。
「いやぁ・・・・・・!ああっ・・・・!んっ・・・・・・・・!」
リュウガはの上に覆い被さるようにしてその抵抗を抑え込み、
耳朶や首筋に舌を這わせながら、ゆるゆると秘部を擦り続けた。
すると次第に、パニックに陥っていたが落ち着いてきた。
「ぁっ・・・・・・、ん・・・・・・・・」
未知の感覚への恐怖の中に、幾らか違う感情が混じり始めているのは明確だった。
下着から沁み出てきている蜜が指先を濡らしているのに気付き、リュウガは満足げな笑みを浮かべた。
「そうだ、それで良い。頭で拒むな、考えるな。その身体で素直に快楽を受け入れろ。」
「あぁ・・・・、そんな・・・っ・・・、事・・・・・・」
「まだ拒むか?だが、いつまでそうして神に操を立てていられるかな?」
リュウガは突然に、下着の上からの花芽をぐいと押した。
「ああっ・・・・!」
の身体が、またビクンと大きく跳ねた。
リュウガはの下着を一思いに引き摺り下ろし、熱く火照った秘部を直に攻め始めた。
「あっ・・・・!やぁっ・・・・・・!あぁんっ・・・・・・!」
相も変わらず胸の頂を舌で弄りながら秘裂を指で割り開き、優しく擦り上げていると、
とめどなく蜜が溢れてきて、淫らな粘着音を立てるようになった。
リュウガは一旦を解放すると、まだ腹の周りにわだかまっている邪魔な衣を完全に取り払い、
一糸纏わぬ姿になったの両脚を大きく開いた。
「やぁっ!やめてぇ・・・・・・・・!」
ランプの小さな炎でぼんやりと照らし出されたの花弁は、魅惑的な女の色香を漂わせていた。
羞恥して泣き叫ぶ本人の意思とは裏腹に、リュウガを求め、誘っていた。
裏腹?
いや、違う。
女としての自分を、がまだ認めようとしていないだけだ。
「あっ、あぁっ・・・・・・・・・!」
溢れている熱い蜜の一筋を、リュウガはおもむろに舐め取った。
「あぁっ、いやぁっ・・・・・!やめっ・・・・、やめてぇ・・・・・・・!」
激しい羞恥に身を捩って泣き叫ぶを押さえ付けて、知らしめるかのようにわざと音を立てて舐め回す。
「リュ・・・ガ、様・・・・!もっ・・・・・・、やめっ・・・あぁあっ!!」
ヒクヒクと痙攣し蜜を垂らす中心も、柔らかな茂みから顔を覗かせている花芽も。
「ぃやっ・・・・・、あぁぁんっ・・・・・・!」
震えながら激しい快楽に咽び泣くを、リュウガはどんどん追い詰めていった。
「あぁ・・・・っ・・・・・、駄目・・・・、駄目・・・・・、こんな・・・・ああっ・・・・!」
しかし、否応なしに与えられる快楽に喘がされながらも、はまだなお苦悩しているようだった。
「神、さま・・・っ・・・・、ぁっ・・・、おゆ、る・・・し・・・・、下さ・・・・」
快楽と苦悩の両方に苛まれ、混濁した意識の中、は泣いて神に許しを乞うた。
「・・・・許せ、だと?」
リュウガは愛撫を止め、の瞳を覗き込んだ。
「お前は何に対して許しを求めているのだ?
身体の交わりに強い快楽を伴うよう人の身体を創ったのは、全ての創造主たる神なのではないのか?
子孫を残す手段をそれと決めたのも、否応なくそれを求めるよう人の本能に刷り込んだのも、神ではないのか?」
「・・・・・それ・・・、は・・・・・・・」
涙で濡れた瞳が、驚いたように、戸惑うように、揺れている。
「・・・・・そして、女を満たすのは神ではなく、同じ人間の男だというのも。」
「っ・・・・・・・!」
リュウガが顔を近付けると、は怯えたのか、固く目を閉じ、身体を強張らせた。
そんなの唇に、リュウガはゆっくりと触れるだけのキスを与えた。
「・・・・求めて当然のものを求めるのに、許しを乞う必要などない。」
「・・・・・リュウガ・・・・様・・・・・・」
「俺がお前を欲するのに、神の許可など必要ない・・・・・・・」
「ぁ・・・・・・・・・」
震えているの唇に、リュウガはもう一度口付けた。
今度はゆっくりと、の意思を確認するように舌を挿し込むと、初めて反応が返ってきた。
小さな舌が、おずおずと消極的ながらも、明らかに自分の意思を持って、リュウガに応えたのだ。
「ん・・・・・・ぅ・・・・・・・」
リュウガはの舌を優しく絡め取って吸いながら、綻び始めた中心にゆっくりと指を挿入した。
「あっ・・・・・」
身体の中に入ってくるリュウガの指に一瞬驚きはしたものの、はもう抗おうとはしなかった。
だが、初めての異物感に、身体はまた緊張に強張ってしまっている。
力が篭って固く狭まった内壁を傷付けてしまわないように、リュウガは殊更慎重に指を沈めていった。
「あっ・・・・・、ぅ・・・・・・んっ・・・・・・・」
の呼吸に合わせて、ゆっくりと進めていく。
過ぎた緊張を解すように、柔らかく口付け、髪を撫でながら。
「ぁ・・・・・・・んん・・・・・・・」
程なくしてが甘い吐息を零し始める頃には、リュウガの指は既に、根元までの中に埋没していた。
深々と穿ったその指で、リュウガはゆっくりとの中を掻き回し始めた。
「あっ、あっ・・・・・・!んっ・・・・・・・・・」
まだ誰も迎え入れた事のない筈の其処を、広げるようにゆっくりと掻き回す。
既に十分に分泌されていた蜜のお陰で、に苦痛はないようだった。
「ふっ・・・・・・、っん・・・・・・・・・・!」
何度か掻き回してから、リュウガはゆっくりと指を引き抜いた。
そして、つい今しがたまで指を穿っていたその場所に、今度は自身の先端を押し当てた。
限界にまで昂り、今にもはちきれそうに硬く熱く膨張したそれを。
その感触に気付いたが、ハッと息を呑んだ。
「リュウガ、様・・・・・・」
これから何をされるのか理解したが、不安げに潤んだ瞳でリュウガを見上げた。
「案ずるな。大丈夫だ。」
「でも・・・・・・、怖・・・・い・・・・・」
の心情に察しはつく。
神に貞節を誓った身として、それを覆す事を恐れてもいるのだろうし、
また単純に、間もなく味わう未経験の痛みに怯えてもいるのだろう。
だが、察しはつけど、その恐怖を消してやる言葉を、リュウガは知らなかった。
「・・・・・・いくぞ」
何も言えないまま、リュウガはの不安を押し切る形で腰を沈めた。
「あっ・・・・・!あぁっ・・・・・・・・!」
は、思ったよりすんなりとリュウガの侵入を許した。
多少のきつさは感じるものの、苦痛という程でもなく、進み入るのにもそう難儀はしなかった。
「痛っ・・・・・!いた、い・・・・・・・・!リュウガ様・・・・・・・!」
だがは、苦しげな表情で痛みを訴えていた。
大丈夫か、と訊くのは愚問に他ならない。
その痛みがどれ程のものなのかを理解するのも、男の身では不可能な事。
リュウガに出来るのは、一刻も早くその痛みを快感に変えてやる事だけだった。
「あぁっ、ぃやぁっ・・・・・・!ぅんっ・・・・!んっ・・・・・・・!」
奥深くまで強く突く事はせず、代わりに肌を出来る限り触れ合せて、をしっかりと抱き締めた。
そして、破瓜の痛みにを慣れさせる為、浅く緩やかな律動を繰り返し、
その心を蕩かせて解き放つ為、甘く深い口付けを何度も与えた。
「んぅ・・・・・・!んっ・・・・・・、うぅ・・・・・・」
そして、の痛みが快感に変化していくのを、今にも暴発しそうな欲望をどうにか抑え込んでじっと待った。
「・・・・・・・ん・・・・、はぁ・・・・・っ・・・・・・」
やがて、の様子に変化が出てきた。
切なげな吐息を洩らし、身体に篭っていた無駄な力が抜けてきた。
「あ・・・・・・っ、はぁっ・・・・・・・・・」
「・・・・・痛みが治まってきたか?」
「っ・・・・・・・!」
は何も答えず、顔を背けてしまった。
明らかに羞恥に苛まれている様子で。
もう少し、あと一押しで、を完全に快楽の虜に出来るだろう。
リュウガはそのまま、じわじわとを攻め続けた。
「・・・・・ぁ・・・・ん・・・・・、はっ・・・・・・、あぁっ・・・・・・・・」
それから間もなく、リュウガの読み通りになった。
「あぁん・・・・・、あ・・・ん・・・・・・・・」
は頬を薔薇色に上気させ、いつの間にか夢心地のような恍惚とした表情でリュウガに身を任せていた。
本人は果たして気付いているのかいないのか、可憐な唇からは男をかき立てるような甘い声も漏れている。
リュウガは小さく笑いながら、の耳元に囁きかけた。
「・・・・・・良くなってきたようだな」
「あぁっ・・・・・・、そん、な・・・・・・」
「恥じる事はない。素直に認めろ。」
「ぁっ・・・・・・・・!」
グッ、と腰を押し付けると、はビクリと身を震わせた。
「どうだ、もっと欲しくはないか?」
「あっ、あんっ・・・・・・・!」
の欲望を擽るように、リュウガはの中を何度も小刻みに突いた。
「お前さえ望めば、この俺が幾らでも与えてやるぞ?」
「ああっ・・・・・・・!」
リュウガの動きに合わせて、の腰がぎこちなく揺れ始めた。
意識してやっている訳ではない、無意識の内に身体が更なる刺激を求めているのだ。
「・・・・・・さあ、どうだ?」
リュウガは含み笑いを浮かべて、を誘惑した。
まるで天使を唆して魔道に堕とそうとする悪魔のように。
だがその実、リュウガ自身ももはや限界だった。
我慢に我慢を重ねた身体が、今すぐ俺を解き放てと叫んでいる。
しかしリュウガは、持てる限りの気力を振り絞ってそれを捩じ伏せた。
に、自分の意思で選び取って欲しかったのだ。
「答えろ、・・・・・・・・」
今更、心をくれとまでは言わない。
打算と欲望だけでも構わない。
それでも構わないから、求めて欲しかった。
この男について行きたいと、思うようになって欲しかった。
「・・・・・・・し・・・・・・・・・・」
やがて、天使は堕ちた。
「・・・・欲しい・・・・です・・・・・・、貴方が・・・・・・・・」
は、今にも泣き出しそうな瞳をしていた。
今、が何を思っているのか、それは分からない。
今更確かめられるものでもないし、そもそもそれが出来る立場ではない。
だが、は自分からこの手の中に堕ちてきた。
その事実だけで、リュウガには十分だった。
「・・・・・・それで良い・・・・・・・・!」
「あ・・・・、あぁっ・・・・・・・・!」
リュウガは己の内なる想いのままに、を強く、深く、貫いた。
「あぁぁっ・・・・!あんっ!リュウガ、様・・・・・!」
「そうだ、もっと俺を求めろ・・・・・・」
「ああんっ・・・・!」
「もっとだ、もっと求めろ・・・・・・」
「・・・・っと・・・・、もっと・・・・・・・、リュウガさまぁ・・・・・・!」
こんな時代だが、こんな時代だからこそ、には生きる事を諦めて欲しくない。
朽ちかけたこの修道院で『神』と運命を共にするのではなく、臆さず外の世界に向かって踏み出して欲しい。
新しい土地に、新しい人生に、未来に、希望を見出して欲しい。
この動乱の世の先に、平和な時代が必ずやって来るから。
必ず、そうなるようにしてみせるから。
だから。
「、お前はもう・・・・・、俺のものだ・・・・・・・!」
言葉には出来ないその熱い想いを、リュウガはの中に迸らせた。