第二話
[主要登場人物紹介] IV=Image Voice
シンヤ・ミナヅキ(IV 高橋広樹)
オーストラリア皇国陸軍アデレード駐留軍司令部直属特設小隊リーダーである十七歳の少年。階級は中尉。普段はおとなしい性格であるが、一たび戦闘に入るとその気迫はかなりのものである。戦う必要性、戦わなければいけないという責任と義務が少年を戦争へと駆り立てていくのだ。
「――嫌いにならないで……か。分かってるさ、この戦争が元凶だってことぐらいっ!」
リーナ・ツヴァイク(IV 後藤邑子)
アメリカ大陸同盟海兵隊隷下第八特務小隊隊長である十七歳の少女。階級は少尉。強気な性格をしてはいるが、その一方で心優しい一面も持つ。戦いにおける自己の義務感は人一倍強い。白兵戦での戦闘能力はもちろんのこと、TBWの操縦技術も群を抜いて優秀である。
「……私はまだ地獄にはいけないから」
サキ・ミナヅキ(IV 清水愛)
オーストラリア皇国陸軍アデレード駐留軍司令部直属特設小隊に所属する十五歳の少女。階級は少尉。シンヤ・ミナヅキは実兄である。基本的には気弱な性格であるのだが、芯は強いものがある。華奢な少女ではあるが、そんな彼女が軍隊という組織に身を置くのにも理由がある。本人にとって、とても大切な理由である。
「――そして何よりお兄ちゃんのために、わたしは戦わないとだめなんです!」
セリア・リープクネヒト(IV ひと美)
オーストラリア皇国陸軍アデレード駐留軍司令部直属特設小隊に所属する十七歳の少女。階級は少尉。シンヤ、サキとは幼なじみの間柄である。大方、気さくで陽気な性格の少女ではあるが、時に禁句ワードを発して怒らせてしまえば、一大事に発展することもしばしばある。彼女もまた内に秘めたる信念のもと、戦いに身を置くことになる。
「――このまま盗まれた機体を取り返して、さっさと敵さんを片付けちゃいましょう」
リュシアス・ウェリントン(IV 堀川亮)
オーストラリア皇国陸軍アデレード駐留軍司令部直属特設小隊に所属する十七歳の少年。階級は少尉。一風変わった口調で話し、凄まじくノリの良い性格をしている。また、目に見えて分かるほど、サキに好意を寄せている。そんな彼が時折見せる真剣な顔つきは、戦いに対する己の意志を露にしている。
「へっ、それほどでもないがな。サッちゃんの望みはワシの望みやっ!?」
エミリー・ロバーツ(IV 田村ゆかり)
アメリカ大陸同盟海兵隊隷下第八特務小隊に所属する十五歳の少女。階級は少尉。リーナの部下にあたり、彼女のことを「お姉様」と呼びとても慕っている。それもあり、リーナに関連したマイナス面の事件は、エミリーを激怒させるのに十分なものである。それに比して、平時は割と同年代の少女と同様の雰囲気が漂う。
「――そう、お姉様は荒れ果てた野を舞う蝶なのよ……」
アーネスト・マッキンリー(IV 荻原秀樹)
アメリカ大陸同盟海兵隊隷下第八特務小隊に所属する十六歳の少年。階級は少尉。リーナの部下にあたり、普段は冷静でクールな性格をしてはいるが、戦闘に入ると闘争的な部分が前面に出るところがある。戦闘能力は総合的に言っても非常に優秀である。
「おらおらぁっ!! おまえら程度の戦闘力ではオレにかなうかよ!」
ニスト・ナガン(IV 緑川光)
オーストラリア皇国軍親衛隊総隊長を務める十九歳の青年。階級は准将。また、本国の最高意思決定機関である執政部会のメンバーの一人である。常に冷静沈着であり、戦闘中であろうが一切変わることはない。彼の戦闘能力、TBW操縦技術は皇国軍中ではトップクラスである。
「――そして、その希望を掴むだけの力を持っていると、私は確信している」
ユリアーノ・クリス・ミストラル(IV 堀江由衣)
オーストラリア皇国軍開発局長を務める十八歳の少女。階級は大佐。ニストと同様に本国執政部会の一人でもある。少し天然の入った性格だが、優しくて陽気な少女である。また、皇国軍開発局長を担えるだけの頭脳を持つ。すなわち、皇国内でもトップクラスの賢者である。
「――でもね、わたしにしかできないこともあるって、そう思うの」
ユウ・ススキ(IV 子安武人)
オーストラリア皇国軍総帥である二十四歳の青年。階級は大将。ニスト、クリスと同様に、本国執政部会の一人である。本国において、過去の戦争の活躍により英雄視されるユウは、自分の意志とは関係なく総帥のポストに就いたが、現在はそうではない。皇国の誇りを誰よりも強く感じているのは、他ならぬユウなのである。
「そこのパイロット君、命が欲しければ今すぐに投降しろっ!?」
セイイチロウ・ミナヅキ(IV 松本保典)
オーストラリア皇国軍アデレード基地副司令官であると同時に、本国の開発次官を兼任する四十歳の男性。階級は技術少将。シンヤ、サキの実父である。皇国一の頭脳を持ち、開発局長であるクリスと共に中心となり、極秘に新兵器の開発を進める。
「――きっとこちらは守るための戦い、救うための戦いであるのだと、私は考えている」
第二話
「動き始めた時間」
第一節
(The Time Begins Moving)
時は新西暦1182年。その月日は五月十九日。今から十年前に、オーストラリア皇国、アメリカ大陸同盟、ユーラシア連合国の三ヶ国において、ダカール休戦協定及び三ヶ国通商条約が締結されるも、これが失効を迎える時、皮肉にも事件は起きた。
――戦争と平和の歴史はまた、反転の時に面していた。
「そこの所属不明機! 直ちに武器を捨てて投降しろ。さもなくば撃つ!! いいか、これが最後通牒だ!?」
オーストラリア皇国軍アデレード基地。現在、敵の奇襲に遭い混乱の最中にあった。そしてその元凶ともいえる一機のTBWが目の前に立ち尽くしていた。
TBWとは、全長十五メートルから二十メートルの人型機動兵器――すなわち戦術戦闘兵器の略称である。敵の機体はアメリカ大陸同盟軍海兵隊の専用機であるレイ――そのアームズ・タイプである。それに対して、皇国軍側は主力機であるランゼンが十数機。
その十数機の中の一機――おそらくこの中隊の隊長であるかと思われる男が、通信回線を開いてアームズ・レイのパイロット、アーネスト・マッキンリーへと話しかけた。
一瞬の沈黙の後、あろうことか不適な笑い声が聞こえてきた。
「――貴様! 何がおかしい!?」
その男が反論の声を上げた時には、アームズ・レイはスラスターを勢いよく噴射させて、空中へと舞い上がっていた。
「おかしいことこの上ないぜっ!! やれるものならやってみろよ!?」
「――ちっ!? 構うことはない、総員、目標前方の所属不明機! 躊躇うことなく撃ち抜け!!」
十数機のランゼンが次々とビームライフルを敵機へと発射する。しかし、どの機体の射撃もとても精密度の高いものとはいえなかった。
「へっ、どこを狙ってるんだか!? 射撃ってのはな、こうするんだよっ!!」
アームズ・レイとランゼン。性能と武装には圧倒的な差があった。左右からの肩部大口径ビームガトリングガン、その両腕からはビームバズーカ砲が二発、脚部からは四連装ホーミングミサイルポッドが続け様に発射された。その攻撃はどれも正確であり、機動性に劣るランゼンに次々と命中していった。
「……なっ、バ、バカな?! ランゼンが一瞬の内に十機も沈むだと……」
間一髪で回避した中隊長のその男は、戦慄しきった表情で地に降り立ったアームズ・レイを眺めた。
「――ふっふふふ、雑魚どもがっ!? オレ様にかなうと思っているのか!!」
間発入れずに撃ち放ったハンドグレネード、ビームガトリングガンが戦慄を引き起こしたランゼンへと訳もなく命中していく。まもなく、皇国軍のランゼンは残り一機となった。
「――くっ!? なめるなよ、皇国軍の誇りを見せてやる!!」
半ば自棄になったその中隊長は、ビームサーベルを引き抜くと、スラスターを全開にして敵機に突貫した。
「ふふっ、見え見えなんだよ!?」
まったくの余裕の表情をもって、迫り来るランゼンに対して、ハンドグレネードを射出して容易くこれを命中させた。
「残念だったな。誇りとやらを見せることすらできなくて」
アーネストが不適に笑う。その周囲には、無残にも撃墜されたランゼンがそこかしこに広がっていた。
「――僕の名はシンヤ、シンヤ・ミナヅキだ! 覚えているか、リーナ? 君はリーナ・ツヴァイクなんだろう!?」
幼き日の約束。それが叶った場所は、悲運にも生死を懸けた戦場であった。それでも、シンヤはこの言葉を発せずにはいられなかったのだ。
「……っ!? ……シ、シン君……?」
息を詰まらせたように、リーナは言葉を発した。彼女にとって、今目の前で起こっていることは、とても信じることができないのだ。
二人に流れた沈黙の時はわずかに一瞬、けれど二人にとってその一瞬は永遠とも言えるようなものだった。
「――リーナ! おい、リーナ! 何をぼうっとしている!?」
沈黙の時を破ったのは、ソード・レイと呼称されるTBWに搭乗する少年、レオン・ケレンスキーの一声であった。我に返ったリーナは改めて事実を再認識した。
現在、戦闘中であり、重要な任務の最中であるということだ。
「どうする、リーナ? 新型とはいえ相手は一機だ。勝機は俺たちにある!?」
「……レオン、離脱するわよ」
リーナは静かに決断を下した。本能的にも、理性的にも、今は後退するべきだと判断したのである。
「どうしてだ、リーナ?!」
「――私たちの任務はあくまで敵新型機の奪取。多少の誤算はあったけど、任務は完了したのだから、後は離脱するだけよ」
リーナの気迫に押されるように、レオンは渋々ながらも首肯した。
「エミリー、アーネストと合流して、基地を離脱するわ!」
リーナの搭乗する機体――皇国軍の新型MTBWであるエアリス・セイバー、ソード・レイはスラスターを噴射させるや、凄まじい速力でその場を離脱した。
残された一機――新型MTBWラウズのパイロット、シンヤ・ミナヅキは明らかに動揺してはいたが、冷静さを欠くまでには至らなかった。
「……どうして、どうしてリーナがこんなこと……」
決して信じることができない事柄であるにせよ、起こってしまった事実である以上、認めざるを得なかった。
再会した少女、リーナ・ツヴァイク。シンヤの想像を遥かに超える程に、美しい姿へと成長していたのである。
「――くっ、リーナ……。けど、僕もこんなところで黙って見ているわけにはいかないんだ!?」
エアリス・セイバー、ソード・レイの離脱した後を追うように、ラウズもスラスターを全開にして空高く飛び上がった。
皇国軍アデレード基地。対峙する二機のランゼンと一機のレイ――そのスナイパー・タイプは、共に好機を待つかのようにじっとしたまま動かなかった。しばし後、その沈黙を打ち破ったのは、一機のランゼン――皇国軍総帥であるユウ・ススキ大将が搭乗する機体だった。
「ちぃっ!? これ以上の暴挙は、この俺が許さん!」
手早くビームサーベルを抜き放つと、一気に敵機へと加速する。
「ニストっ! 正確な援護射撃、よろしく頼むぞ」
「――まかせておけ、問題ない」
ユウの言葉に、もう一機のランゼンのパイロット、皇国軍親衛隊総隊長であるニスト・ナガン准将は力強く答えた。そのニストの隣では、同乗する少女、皇国軍開発局長であるユリアーノ・クリス・ミストラル大佐が、懸念の表情で前方を見やる。
本部であるA.M.キングダムからこのアデレード基地に視察にやって来た彼らは、不運にも事件に巻き込まれ、身を守ることを第一の目的として、このランゼンに搭乗することになった。ニストもユウも、TBWの扱いに関しては比類なきトップクラスであるのだ。
「――何よっ!? たった二機のランゼンで、何ができるっていうのよ!!」
スナイパー・レイのパイロット、エミリー・ロバーツは続け様にビームライフルを二、三発、迫り来る一機のランゼンへと撃ち放つ。確かに、ランゼンとレイでは、性能・武装に圧倒的な差はある。だが、TBWの扱いに優れているとはいえ、スナイパー・レイのパイロット、エミリー・ロバーツはまだ十五歳の少女なのだ。実戦経験など無いに等しい。その彼女が、搭乗する機体がレイとはいえ、皇国軍のトップクラスのパイロット二人を相手にするのは、決して容易いことではなかった。
「ふっ、そう簡単に当たってはやれんよ!?」
敵機の攻撃をあらかじめ予測していたユウは、良くはないランゼンの機動性で、その攻撃すべてを回避する。さらに加速したランゼンは防御もままならないスナイパー・レイへと斬りかかった。
「――くっ、何だっていうのよ!?」
後退しつつも抜きさったビームサーベルで敵ランゼンの攻撃を切り払う。正直、ランゼンにここまで追い詰められるとは思ってもいなかった。だからこそ、余計に焦ってしまうのだ。
「そこのパイロット君、命が欲しければ今すぐに投降しろっ!? なあに、総帥であるこの俺の権限で命の保証はしてあげよう」
エミリーの耳に、通信回線から男の声が届いた。あり得ないことに、自分のことを軍の総帥と称し、さらには投降を求めてくるのである。当然のように、エミリーはこれを侮辱と捉えた。
「――こいつっ、バカにするなあっ!!」
スナイパー・レイが敵のサーベルを切り払い、今度は逆に反撃に転じる。
「おっと、危ない危ない。――ニストっ?!」
難なく回避したユウの乗るランゼンの背後からは、間髪入れずニスト機から撃ち放たれたビームライフルがスナイパー・レイを襲う。
「――きゃああっ!? こ、こいつら、何でこんなに強いのよ?!」
回避することもかなわずに、エミリーはこの攻撃を左腕部に装着されたシールドで防いだ。衝撃の振動に頭を抱えながらも、エミリーは大きく憤慨した。たかが二機、されど二機のランゼンである。
「何をしている、ユウ? 敵に情けなどかけていては、痛い目をみるぞ!?」
冷静にニストがユウを怒号する。今の攻撃のタイミング、ニスト機の放ったビームライフルをシールドで防ぐ敵機を、ユウがサーベルをもって仕留めることは十分に可能であった。だが、ユウはそれを為さなかったのだ。
「ああ、それは分かっている。分かってはいるんだがな……」
珍しく歯切れの悪い口調でユウが答える。敵機パイロットから聞こえてきた声、それは女性の声で、さらに厳密に言えば、まだ幼さの残る少女の声のように思われた。ユウは単純にその事実に驚いていたのだ。確かに、ユウにとってTBWでの戦闘は久方ぶりのことであるが、情けをかけるつもりなど毛頭なかった。ユウ自身も、これを自問していたのである。
「――よくない知らせだ。ユウ、こちらにもう一機、いや、さらに敵機が近づいてくるぞ」
レーダーに反応があった。その反応方向からこちらに激しい速度で向かっていくるTBW――アームズ・レイである。
「何やってんだ、エミリー!? こんな雑魚たち相手によっ!!」
目標である二機のランゼンを捉えるや、即座に攻撃――両腕部のビームガトリングガンに両脚部ホーミングミサイルポッドを撃ち放つ。これも巧みな射撃であり、ミサイルの回避を試みる敵機の隙をついて、ビームガトリングガンを放つというものである。
「――ちっ、手強いな。ニスト、大丈夫か?」
「あまり過小評価してもらっては困る。私を誰だと思っている?」
ユウ同様にニストも、迫り来るミサイルを回避、あるいはビームサーベルを用いての切り払いを行い、続け様に飛んできたビームガトリングガンも難なく回避した。
「ほう、さすが皇国軍一の名パイロットは、俺なんかとはできが違うことで」
「――それは、過大評価というやつだな」
ニストもユウも、今はまだわずかに冗談を言う余裕も残っていた。
「威嚇射撃も程々にね、アーネスト。それとも、狙って撃ったのかな?」
スナイパー・レイのパイロット、エミリーが駆けつけたアームズ・レイのパイロット、アーネストへと一つ皮肉を漏らした。
「うるせえよ、エミリー。確かに、こいつらがうすのろ亀ではなく、ちょこまかとうるさいハエだと分かったよ。でもまあ、おまえ一人でこのまま戦っていたら、どうなっていたことやら」
エミリーが乗るスナイパー・レイは基本的には遠距離射撃に特化した機体なので、敵機がランゼンとはいえ、距離を詰めてトップクラスのパイロットを同時に二人相手にするのは、いささか分が悪い。
「バカにしないでよっ!? わたしがちょっと本気になれば、あんなやつら――」
「――二人とも、ケンカは場をわきまえてしなさい!? ここは戦場よ」
エミリーの声を遮る形で、通信回線に別の少女の声が割り込んできた。エミリー、アーネストの隊長にあたる少女、リーナ・ツヴァイクである。
「隊長? 奪取はうまく成功したようだな」
「ごめんなさい、リーナお姉様」
二人が交互に話しかける。リーナは特に際立った弊害もなく、敵機新型機――エアリス・セイバーの奪取に成功し、皇国軍アデレード基地を離脱するために合流を図ろうとしたのである。
「――ちくしょう、敵反応がプラス一に……おいおい、ありゃ新型のエアリス・セイバーじゃねえかよ。何てこったい……」
二機のTBW――リーナの乗るエアリス・セイバーとレオンが乗るソード・レイがこの場に辿り着き、地に降り立った。それはちょうど、ニストとユウが乗るランゼンを四機のTBWが取り囲むような形である。
圧倒的に性能・武装面で劣るランゼンに、それを遥かに上回る敵機が四機。どこをどう見ても、絶体絶命の危機であった。
「ニストよ……俺たちは生きて本部に戻れるのかね?」
「フッ。――冗談ではないっ!?」
さすがの二人でも、この状況に陥っては余裕はもうない。ニスト機に同乗する少女、クリスはその小さな震える手をニストの肩へとそっと置いた。
「……ニ、ニスト、お兄ちゃん……」
その顔は絶望と恐怖で埋め尽くされているかのようであった。
「クリス、先ほど飛行機の中でも言ったが、おまえが心配する必要は何もない。今ある絶望は常に希望と隣り合わせにある。そして、その希望を掴むだけの力を持っていると、私は確信している」
今のニストに余裕はない。だが、焦りもなければ、絶望もなかった。
皇国軍アデレード基地。第五格納庫から遅れて発進した機体は、皇国軍新型のハイグレード、ラーク・ガンナーである。
「めちゃくちゃに荒らしてくれたけど、もう好き勝手はさせないわよ」
ラーク・ガンナーのパイロット、セリア・リープクネヒトは一つ舌打ちをして呟いた。先に出撃した中隊規模のランゼンは、ほぼ全滅に近い状態であった。現在、敵機の反応は三。その三機はすでに合流を終え、二機のランゼンを取り囲んでいる状況であった。
それともう一つ気になったことは、その場にいる一機のMTBW――エアリス・セイバーについてである。本来、パイロットである少年、クレーデル・ロッシュがどうして敵機と行動を共にすることがあるのか。セリアはすでに、この答えを暗黙の内に悟っていた。
「四機の敵に取り囲まれたランゼンが二機か……うーん、これはちょっとまずいかなあ」
少し考え込むような仕草の後、セリアはラーク・ガンナー専用のロングレンジコンバータライフルの照準体勢へと入った。
「ではでは、援護射撃と参りましょうか」
狙撃能力に特化したこの機体は、長距離用高性能照準器の効果もあって、十km離れた場所に立つTBWのコクピットに照準を合わせることさえも十分に可能なのである。また、このコンバータライフルは用途によりビーム・レーザー・実体弾を撃ち分けることができるのだ。
「目標に照準セット。さあ、これは当たると痛いわよ」
鋭い目つきで前方を見据え、セリアはトリガーを引いた。轟音を伴って発射されたビームライフルは、敵機TBW――アームズ・レイのコクピットを打ち抜かんとするものであった。
「――何ぃっ!? ロックされただと!」
アームズ・レイに乗るアーネストがその異変に気づいたのは、敵ランゼンの周囲を取り巻いてまもなくのことであった。
「ちっ、こんなもんでやられるかよ」
直ちに回避行動に移るアームズ・レイ。――しかし、
「今だっ!! うおおおっ!?」
狙撃によるビームライフルを回避し終えたその隙を狙って、ユウが機体ごと勢いよくアームズ・レイへと体当たりをかけた。
「――っ!? うぐぐぅっっ!!」
ランゼンの体当たりを受け、アームズ・レイは後方へ大きく弾き飛ばされる。
「へっ、やってくれるじゃねえか!!」
ソード・レイに乗るレオンは、すかさずロングビームサーベルを抜くと、体当たりをしたランゼンの背後から斬りかかろうとする。
「――おまえの相手は、この私だ」
敵機がユウの乗るランゼンへと斬りかかろうとしたが、そうはさせまいとニスト機が横から割り込んだ。同時に、手早くビームサーベルを抜き放つ。
「レオン、アーネスト! 私たちの任務は完了したのよ。今は早くこの基地から――っ!? う、上から攻撃反応?!」
反応と同時に、すぐさまリーナはその攻撃に対する緊急回避に入った。間髪入れず、元いた場所をビーム弾が吹き飛ばす。リーナが上空を注視したところ、飛行しているTBWを発見した。
「――何なの、あれは? もしかして、あれも新型?」
リーナの言うとおり、この空飛ぶ機体は皇国軍の新型MTBWウインドである。ちょうど、そのパイロットである少女、サキ・ミナヅキへと通信が入った。
「サキちゃん、ナイスアシスト!? このまま盗まれた機体を取り返して、さっさと敵さんを片付けちゃいましょう」
その通信はラーク・ガンナーに乗るセリアが発したものであった。また、今しがた復旧中の司令部からの報告があり、パイロット各位に皇国軍新型MTBWエアリス・セイバーが奪取されたことが正式に知らされたのである。
「はい、分かっています。――わたしたちの皇国のために、そして何よりお兄ちゃんのために、わたしは戦わないとだめなんです!」
サキは力強く言うと、間を置くこともなしに二丁のビームバスターガンを敵機へと構えなおし、そのまま撃ち放った。
「――くっ、これじゃあ切りがないわ」
空からの攻撃を割合に余裕を持って回避しつつも、リーナは憤慨する。とにかく最優先の目標は、このアデレード基地からの離脱。持久戦に持ち込まれると、こちらに勝算はまったくないのである。
「こいつ、お姉様に何すんのよ!!」
血相を変えた表情で、エミリーは立て続けに数発、リーナを狙う上空の敵に対してビームライフルを発砲する。
「――っ!? あ、あの機体……強い」
今のスナイパー・レイの攻撃、少しでも油断していたら直撃しているところである。直撃はすなわち死を意味する。これがシミュレーションとは異なる本当の戦いであるということを、サキは改めて実感した。
「エミリー、アーネスト、レオン!! 離脱するわよ」
リーナが三人に命令する。それと同時に閃光弾を撃ち放った。眩い閃光が周囲に広まる中、四機のTBWは即座に離脱を開始した。
だが、これを逃すまいと空へと飛び上がった皇国軍のTBWが一機――シンヤの搭乗するラウズである。エアリス・セイバーとソード・レイを追いかけてこの場に辿り着いたシンヤは、閃光弾の被害に遭うことを免れたのである。
少年、シンヤ・ミナヅキの心中は複雑だった。侵入者を見逃すわけにはいかないという思いは、もちろんある。しかし、それ以上にシンヤを悩ませることもあるのである。
「――リーナっ!? どうして君がこんなところにっ!」
シンヤはエアリス・セイバーへと通信を試みる。率直なところ、もう一度リーナと少しでも話をしたかった。その意味でも、このまま逃がすわけにはいかなかったのだ。
「そ、それを言うならシン君も! どうして軍なんかにっ!?」
お互いの想いが交錯し、それを伝え合うこともかなわずに、二人の会話は長く続くことはない。
「――しつこいよ、おまえっ!?」
「そうそう、あんまりしつこいと嫌われるよ!」
アーネストのアームズ・レイ、エミリーのスナイパー・レイがそれぞれラウズへと攻撃を仕掛ける。先ほどのケンカとは見違えるほど、ビームバズーカとビームライフルの射撃による見事なコンビネーションである。
「――ちっ、何なんだよ、いったい」
二機による同時攻撃をなんとか回避したシンヤは、一つ舌打ちをした。一機で先に追いかけるのは、あまりにも無謀なことであったのだ。
「……シン君、私のこと嫌いにならないで……」
これが彼女からの最後の通信であった。シンヤがその言葉の意味を実感する間もないまま、彼のもとに別の通信が入った。
「――えー、こほん。こちらはアデレード基地駐留軍副司令官のセイイチロウ・ミナヅキだ。新型機のパイロット各位に告ぐ、速やかに追撃を中断して帰投せよ。代わりに駐留軍第二大隊を向かわせることに決定した。――君たちの機体の燃料はもはや空前の灯火というべきものだからね」
「……父さん」
アデレード基地副司令官であるセイイチロウ・ミナヅキ技術少将はシンヤの実父である。上官の命令に加えて、このままでは機体が起動停止するのは時間の問題ときたら、シンヤの取るべき選択肢は一つしか残されていなかった。
「――嫌いにならないで……か。分かってるさ、この戦争が元凶だってことぐらいっ!」
拳を強く握り締めるシンヤのその顔は、新たな決意に満ちたものだった。
第二節
(Blame and Duty)
「……リュウ、あんたはいったい何をしているのよ」
少女、セリア・リープクネヒトは大いに嘆き呆れた。
「そんなん言うたかてしょうがないやろ。整備のおっちゃんからゴーサインがでえへんかったさかいにな」
機体を収容したシンヤ、サキ、セリア、そして諸事情により出撃することができなかったリュシアスは、アデレード基地司令部へと向かうことになった。今後の作戦内容を確認するためである。
「多分、あんたの機体は、あんたに似たせいで起動しなかったんでしょうね」
「――こら、セリア、どういう意味やねん」
「どうもこうも、そのままの意味よ」
セリアとリュシアスは口々に言い合う。だが、これはケンカをしそうとか、すぐにでも殴り合いが始まりそうだとかいったムードではない。むしろ、お互いのコミュニケーションの一環のようなもので、これが二人のいつものやり取りであるのだ。
「セリアさんにリュウさん、ケンカはよくないですよ〜」
セリアとリュシアスの後を歩いていたサキが、先ほどの戦闘時とは正反対の表情で、二人に話しかけた。
「――ほな、や〜めた」
サキの言葉の後、リュシアスは即答した。
「あんた、本当に調子の良いヤツね」
「へっ、それほどでもないがな。サッちゃんの望みはワシの望みやっ!?」
ほとほと呆れ果てながらセリアは苦笑した。何気なく後方を振り返ると、シンヤとサキが並んで歩いているのが見えた。リュシアスと言い合いをする反面、帰投してからどこか沈んだ表情で、あまり言葉を発することのないシンヤを気にかけていたのだ。それはサキとて同様のことであった。
確かに、戦友であるクレーデル・ロッシュの死は、シンヤたちに大きな衝撃を与えた。だが、ここが軍隊であり、自分たちが兵士である以上、それはそれで割り切らねばならない。おそらく、これはシンヤも心得ていることだろう。では、いったいどうして彼がここまで気落ちするのかが、セリアやサキには分からなかったのだ。
「――ねえ、どうしたの、お兄ちゃん? 少し様子が変だよ」
思い溜まってか、サキがシンヤへと語りかける。その言葉で、ようやく我に返ったようにシンヤは顔を上げた。
「いいや、別に何でもないよ。気にしないでくれ」
シンヤにしてみれば平然と話しているつもりでも、その顔はとてもじゃないが何でもないと言えるものではなかった。
「――ちょっとシンヤ、そんな沈んだ顔で何でもないって言っても、はいそうですかと納得できるわけないでしょ。サキちゃんはあんたのことを本気で心配しているんだからね。それに、あたしだって――」
「終了――っ!! ええ〜い、こんな暗い話はもう終いや! おいシン、何しけた顔しとんねん、しっかりせえっ!?」
我慢の限界にきたのか、いきりたったリュシアスは勢いのままにシンヤの背中を強打した。これには、さすがにシンヤもこたえたようである。
「おい、リュシアス! 何も思い切り叩くことはないだろう」
「問題大ありや!? さっきも言うたけどな、サッちゃんの心配はワシの心配でもあるんやっ! 解決する義務がワシにはある。……クネクネはどうでもええけどな」
一種、リュシアスのセリアに対する問題発言は、すでに日常茶飯事と化そうとしていた。その結果、どうなるのかは目に見えているというのに。
「……クネクネ……言うなあっ〜!!」
深夜も遅くに、アデレード基地に断末魔の悲鳴が響き渡った。
皇国軍アデレード基地司令部。敵軍の奇襲を受けるも、現在は復旧作業も半ば終了し、なんとか体勢を立て直そうとしていた。
その司令部前に、ちょうど二機のランゼンが起動を停止させた。続いてコクピットが開くと、そこからパイロットが姿を見せた。二機の内の一機からは、青年と少女が共に降りてきた。
「ふう、一時はもうだめかと思ったが、あいつらのおかげでなんとかなったな」
もう一機のランゼンから姿を見せた青年、皇国軍総帥であるユウ・ススキは額の汗を手で拭いながら、降りてきた青年と少女に話しかけた。
「私は駄目などとは、露とも思わなかったがな」
もう一人の青年、皇国軍親衛隊総隊長であるニスト・ナガンは変わることのない冷静な表情で言った。それに比して、少女、ユリアーノ・クリス・ミストラルはといえば、実にホッとしたような安堵の表情を浮かべていた。
「もう、ニストお兄ちゃんってば。本当に心配と不安で胸がいっぱいだったんだからね。心配するなって言われても、そんなの絶対に無理だよ」
「――そう、か。なら、無理をしてまで心配するなとは言わない。できれば、私もそうしてくれたほうが嬉しい」
恥ずかしい台詞にもかかわらず、表情を変えないままニストは言う。その内の想いはいざ知らず、ニストは常にポーカーフェイスな青年である
「ありがとう、ニストお兄ちゃん♪」
ここに至って、クリスはようやく柔らかな微笑みを見せた。これは単に面白いからなどという理由での笑いではない。戦争の最中においても、その輝きを失わない強さと勇気、これを有しているからこその微笑みであるのだ。
「礼を言うのは私のほうなのだがな」
珍しくニストが苦笑を漏らした。互いに見つめ合うニストとクリス。二人の世界が形成されようとしてはいたのだが、それを傍から眺める青年が一人。他ならぬユウである。
「……おまえら二人、いっそのこと結婚すればいいのではないか?」
ユウはサラリと二人に向けて言い放った。一瞬、その意味を理解しかねた二人だが、これを悟った時にはすでに、どこか様子がおかしかった。普段冷静なニストもどこか変だった。それはありていに言うならば、二人ともが至極照れているようであった。
「――け、結婚って、何言ってるのよ、ユウお兄ちゃん?! わたしはまだ十八でニストお兄ちゃんも十九だし……あれ? 結婚できるね、なら……っじゃなくて!? ああ、わたしはどうしたらいいんだろう?」
「……私がクリスと結婚……だと?!」
一方では、混乱して慌てふためくクリス。他方、固まったまま動くことのないニスト。互いの反応は違えど、照れているのは間違いなかった。
「いやはや、この二人の反応を見るのはまた趣深いものだな」
実に愉快な顔をして二人を眺めていたユウではあるが、それがゆえに今度は逆に二人に睨まれることになった。
「怒るよ、ユウお兄ちゃん……」
「私はすでに怒っている」
二人の威圧感に一歩身を引いたユウは、何かうまく誤魔化す方法はないかと周囲を見渡した。すると、ちょうどこちらに向かって歩いてくる人影が見えた。少年が二人と少女が二人。彼らはニストたちも知っている、皇国軍Highシリーズプロジェクトの新型機のパイロットなのである。
「――よう、さっきは危ないところを助けてもらい、感謝している」
ユウが話しかけたことで、その少年少女たちは皆一様に驚いているようであった。でもまあ、オーストラリア皇国軍総帥とバッタリ出くわして、話しかけられたのだから仕方のないことではある。言ってみれば、道を歩いていて有名人に声をかけられるようなものなのだ。
いや、その中の一人、ぼさぼさと乱れた髪の少年だけはどこか思案顔だった。
「――だ、誰や、このおっさ――んぐっ!!」
少年、リュシアス・ウェリントンの開いたばかりの口は、その隣にいた金髪をツインテールにまとめた少女、セリア・リープクネヒトによってすぐさま閉ざされた。
「すいません、このバカのことは無視してください。――それよりも、どうして総帥がこんなところにいるんです?」
決してよくできているとはいえない敬語で、セリアがユウへと話す。
「そんなに硬くならんでくれ、セリア・リープクネヒト君。さすがに、このおっさん扱いはあんまりだがね」
「――別にいいんじゃないの、おっさんでも。ねえ、ニストお兄ちゃん?」
ユウの隣に立つクリスが少し怒ったような顔で言い、ニストがまもなく首肯した。
「おいおい、おまえらそりゃねえだろ」
ニストもクリスも皇国の中では、おそらく知らない人のほうが少ないぐらいにその存在が知れ渡っている。その理由は、三人が共に皇国本部の幹部クラスの人間であるというよりはむしろ、ニスト、ユウ、クリスの三人と皇帝であるアイザック・サガ・モンフォールを合わせた四人は、本国の最高意思決定機関である執行部会のメンバーであり、皇国を動かしていると言っても過言ではないからである。
「あの、先ほどランゼンに乗って敵と戦っていたのは、総帥さんたちですか?」
側に横たわる二機のランゼンを見て、少女、サキ・ミナヅキは口を開いた。並のパイロットでは瞬殺されていそうなところを、性能・武装面で大きな差異のあるレイを相手に、少なくとも互角に渡り合ったのである。
「ああ、そのとおりだ。でもさすがに、四対二ではまったく相手にならなかっただろうからな、君たちには非常に感謝をしている」
あくまでユウは誉め言葉のつもりで言ったのだが、少年少女たちの表情は険しくなった。その中の一人、シンヤ・ミナヅキは口を開いた。
「……けど、僕たちは敵に逃げられてしまいました。決して、逃がしてしまってはいけなかったのに……」
「それは君たちの責任ではない。確かに、逃げられてしまったことは、それはそれで問題であるわけなのだが、それを解決するためにこれからの行動を思案する。これでいいのではないかね?」
「――でも、僕は……」
どこか納得のいかない顔で、シンヤは言葉を発しようとしたが――、
「そんなに深刻な顔をするな、シンヤ君。君は小隊のリーダーなのだろう? 君がこのような思い詰めた顔をしていては、他の皆にも影響を与えてしまう。君はあのセイイチロウ・ミナヅキの自慢の息子だ。セイさんの何事においても動じない心が、きっと君の中にも存在していると、俺は確信しているさ」
ユウの言葉に、シンヤは黙ったまま首肯した。
「――あの、わたしたちはこれから司令部で作戦会議があるんです」
サキがユウたちへと話しかける。そうなのだ、こんなところで立ち話をしている余裕をシンヤたちは有していなかったのである。
「そうか……おい、ニスト。乗りかかった船だ、俺たちも同席してはどうか?」
「問題なしだ。……クリス?」
「うん、もちろんいいよ。――わたしには戦う力はない。でもね、わたしにしかできないこともあるって、そう思うの。わたしも、何かの力になりたい」
確固たる意志を持った瞳でクリスは言う。それは、自分自身の弱さを知った上での、彼女自身の強さだ。
「――では、行くとしようか」
シンヤたち、そしてユウたちは共に作戦会議室へと歩みを進めるのであった。
暗闇が辺り一帯に広がる真夜中。強い月光が大地を照らす。そのような闇の世界の中、ただひたすらに進み行く者達がいた。
皇国軍アデレード基地南方約四十km地点。海岸方向へと逃走を続ける四機のTBWが平地を疾風のごとく駆け抜けていた。それらはちょうど、平地から荒野へとさしかかろうとしていた。
彼らの目的とは、皇国軍アデレード基地にて秘密裏に開発されていた新型TBWの奪取であった。新型機は一機しか開発されていないという誤報により、作戦に多少の弊害が生じたものの、狙い通りに一機のMTBW――エアリス・セイバーの奪取に成功した。
「四十km地点通過。向こうもそう簡単には逃がしてくれないだろうから、警戒を怠らないでね」
米大陸同盟軍海兵隊隷下第八特務小隊長である少女、リーナ・ツヴァイクは残り三機のTBW――ソード・レイ、アームズ・レイ、スナイパー・レイのパイロットへと通信を試みた。小隊長とはいってもまだ十八歳で、長く伸ばした黒髪をポにーテールにまとめた容姿端麗の少女である。
「まかせておいてください、リーナお姉様! 雷が鳴ろうが、嵐が吹こうが、わたしがお姉様を守ってみせますから」
スナイパー・レイのパイロット、エミリー・ロバーツは力強く言う。隊長であるリーナのことをお姉様と呼び大変慕っており、リーナに関する一切の不利益はエミリーに対しても大きな苦痛に値する、といったものだ。エミリーは容姿にまだ幼さの残る十五歳の少女である。とはいえ、整った顔立ちと茶髪のセミロングが印象的な美少女である。
「――はっ、ばあか。雷も落ちなければ、嵐も吹きやしねえよ」
嘲笑と共に口を開いたのがアームズ・レイのパイロット、アーネスト・マッキンリーである。普段は冷静沈着な性格をしているが、一たび戦闘に入ると闘争心を強く発揮する十六歳の少年である。
「なっ、バカですって!! 何よっ、物の例えというヤツじゃない。ふん、見え張った割には、結局あの二機のランゼンを仕留められなかった、誰かさんに言われたくないわよ」
「何だと!! フン、それを言うなら、オレが助けにこなければ、誰かさんは今ごろあの世行きだろうぜ」
任務中はさすがに問題大ありなのだが、エミリーとアーネストのケンカはしばしば見受けられる。何かと些細な理由で揉め合うのである。
そのたびにどうなるのかというと――、
「二人とも……いい加減にしなさい!!」
――とまあ、こうなるわけである。例のごとく、リーナはエミリーとアーネストを大きな声で叱咤した。彼らにも判断能力は十分に備わっているので、一度怒られるとしばらくはおとなしくなるのである。特に、リーナに怒られたときのエミリーの沈み具合は深刻なものでった。
「へへっ、ちゃんと落ちたじゃねえか、雷がよ」
ソード・レイのパイロット、レオン・ケレンスキーがどこかおもしろそうに呟いた。確かに、雷は落ちた。ただし、リーナの落とした雷であるのだが。
「……レオン?! ふざけないで」
リーナの咎めるような声がレオンのもとに届く。真面目な性格をしているリーナは、普段でさえあまり冗談を解さないというのに、それが戦闘中ともなればなおさらなのである。
「あいよ、悪かった。――リーナ、そんなことよりもだ。この荒野、何かあるぞ?」
打って変わって、真剣な表情となったレオンがリーナへと話す。ちょうど平地から荒野へと辿り着いたところで、レオンはどうも嫌な予感に似たものを感じ取っていたのだ。
「ええ、分かっているわ。おそらくは待ち伏せ。やはり、そう簡単には逃がしてくれそうにないということね」
大小様々な岩が転がる荒れた野で、リーナの乗るエアリス・セイバーの動作が停止した。それに倣うように、残り三機のTBWもその動きを止めた。
「どうしたんですか、リーナお姉様?」
突然、機体を停止させたリーナへと、エミリーが思案顔で尋ねかけた。
「――敵よ、エミリー。数はおそらく一個大隊規模……一気に片付けるわよ!」
『了解!!』
リーナの言葉に、それぞれが気合の入った声を返す。
荒野に立つ四機のTBW。その周囲を取り巻くかのように、闇の中から幾つもの影――皇国軍主力機であるランゼンが姿を見せた。
「貴様たちが本気なのは分かる。けど、私たちも立ち止まるわけにはいかない」
リーナは気合の一声を発して、ロングビームソードを一刀抜き放った。
今、逃走と追撃の衝突の幕が上がろうとしていた。
第三節
(Chase and Escape
in the Wilds)
「それではこれで、本作戦会議を終了する。ハイブリッド及びハイグレードのパイロット諸君は、補給完了の後直ちに奪取された機体の捕獲及び逃走した敵機の追撃にあたってくれ」
皇国軍アデレード基地司令部の作戦会議室。司令部の被害は決して少なくはなかった。当基地の司令長官も敵の襲撃に遭い戦死した。今はちょうど、臨時司令長官に就いたセイイチロウ・ミナヅキ技術少将が作戦会議の終わりを告げたところであった。
作戦内容の要旨は、現在皇国軍第二大隊が追撃に向かっている敵機への対処方法にある。四機の敵TBWの内の一機は自軍の新型機エアリス・セイバーであることから、その機体の捕獲と残りの敵機の掃討が目的である。
「少し待つんだ、シンヤ。話がある」
少年、シンヤ・ミナヅキが作戦会議室を出た時、後ろから不意に声がかけられた。相手は上官であり、そして実の父でもあるセイイチロウである。
「――父さん? 僕に何か」
シンヤはセイイチロウへと振り返った。父の顔にはいつものような余裕が表れている。見ているこちらが羨ましいと思えるぐらいの清々しい表情である。
「いいや、私ではない。シンヤ、おまえの顔が、まるで話があるとでも言っているようだからね」
シンヤは驚いて目を見開いた。先ほど、妹であるサキや幼なじみであるセリア、さらには偶然出くわした総帥であるユウからも気を遣われ、なるべくそのことについて考えないように、表情に出さないようにとしていたのだが、父にはまったく通用しなかったようである。
「――ねえ、お兄ちゃんにお父さん。どうかしたの?」
シンヤとセイイチロウが話し出すのをたまたま目にしたサキが、どこか硬い表情で二人へと話しかけた。
「いやいや、たいしたことではないよ。単なる世間話だ。サキ、まもなく作戦の開始時間だから、おまえは早く持ち場につきなさい」
「――う、うん。分かりました」
敬礼を一つしてサキはその場を離れた。気を引き締めたその表情には、少し影が見え隠れしていた。
「これでよかったかな。無理をしてまで私に話せと言っているわけではない。ただ、上官としてではなく、父として息子の悩みを聞きたいと思っているのだよ」
サキを見送ったところで、改めてセイイチロウは穏やかな笑みを浮かべながら、シンヤへと口を開いた。
「父さん……」
やっぱりこの人には敵わないなと思いつつも、シンヤは今の自分の思いを父へと伝えることを決めた。それは、幼き日々に再会を約束した少女との突然の出会い。皮肉にも再会の場は命を奪い合う戦場。敵である彼女に対して、いったい今の自分に何ができるのか。
「――そうか、ツヴァイク氏の子女が……ね」
シンヤの話を聞いて、セイイチロウは珍しく複雑な表情を見せた。今から約十年前、約束の少女、リーナ・ツヴァイクは父であるロバート・ツヴァイクと共に皇国の地を踏んだ。ロバートもセイイチロウと同様に技術士官であり、米大陸同盟軍内ではトップクラスの頭脳を誇っているのである。それもあり、国を越えた話し合いの場が設けられたのだ。これがシンヤとリーナの出会いの運命を築いたのであった。
「シンヤ、おまえはどうしたいんだ?」
黙りこんでしまったシンヤへと、セイイチロウは優しく語りかけた。
「……僕は……どうしたら……」
「――話し合いをして解決することができないからこそ、戦争が起こる。それは時に、ただ戦いを楽しみたいがために起こることもあれば、互いの譲ることのできない誇りや信念を貫かんがために起こることもある。きっとこちらは守るための戦い、救うための戦いであるのだと、私は考えている」
「守るための戦い……救うための戦い……」
セイイチロウからの言葉の重さを胸に受け、繰り返して小さく呟くシンヤの肩に彼の手がそっとのせられた。
「考えても、考えても、何も分からない時だってある。そんな時はただ前だけを見据えて突っ走れば、案外良い結果を生むこともある。そうすることによって、段々と分かってくることもある」
ただ前だけを見て走る。確かに、そのとおりだ。立ち止まることができない以上は進み続けるしかないのである。
「父さん……僕はまだ、何も分からない。だけど、分からないからこそ分かろうとすることができる。だから、走り出せる!」
「――うむ。息子よ、行って来い」
「はい。――ありがとう、父さん」
セイイチロウの言葉に敬礼を返したシンヤの表情は、どこかスッキリとしたものであった。そこにはセイイチロウのような不屈の心が浮かんでいるようにも見えた。
「――ところでシンヤ」
セイイチロウは一息ついた後、再びシンヤに話しかけた。
「おまえはツヴァイク氏の子女に惚れているのかね?」
「……っ!?」
セイイチロウの冗談に、引き締まったシンヤの顔があっという間に赤く変貌した。どうやら、そちらの覚悟はまだまだのようであった。
★
「――どうやら吹っ切ることができたようだな、シンヤ君は」
「これは総帥、見ていたのですか?」
セイイチロウが振り向いた先、そこにはいつの間にやらユウの姿があった。
「ああ。でもまあ、さすがはセイさんだ。あんなに沈んでいたシンヤ君に、以前にも増して元気を与えたのだからな」
ユウの言葉に、セイイチロウは思わず苦笑を漏らした。
「大袈裟ですよ、総帥。私は何も特別なことなどしていません。父として当然のことをしたまでです。私にできることといえば、彼が立ち止まった時に背中を押してやることぐらいだからね」
セイイチロウの言葉と表情からは、息子を想う気持ちが溢れているように思えた。そしてそれは、確実にシンヤへと伝わっているのだ。
「――はあああっ!!」
気合の一声と共に一閃させたロングビームソードは容易く二機のランゼンを真っ二つにした。これは決してランゼンに搭乗するパイロットが劣っていたというわけではない。少女、リーナ・ツヴァイクの操るエアリス・セイバーはまさに格闘においてプロフェッショナルな機体であるのだ。
皇国軍アデレード基地南方約四十km地点。平原が途切れちょうど荒野にさしかかったところで、戦闘が始まった。事前に待ち伏せておいたアデレード駐留軍第二大隊が逃走を続ける四機のTBWを捕獲及び掃討するために、作戦を開始したのである。
だが、事態は皇国軍第二大隊側の予想を大きく裏切る形へと傾き始めていた。四十八機のランゼンが目を疑うような速さで次々と破壊されていき、ついには十機を下回ってしまったのである。
「何故だっ?! 何故、我ら第二大隊がたかだか四機のTBWごときに! こんなことはあってはならんのだ!!」
半狂乱状態に陥った第二大隊長であるルイ・ルメルシエ中佐は、自棄を起こしたように前方のTBW――エアリス・セイバーへとビームライフルを連射した。
「このような有様では、死んでも死にきれんわ!? 各隊員に告ぐ、皇国軍新型機をなんとしてでも撃ち落せっ! 皇国に害をなす愚者に地獄を見せてやれ!!」
隊長命令を受けた残り八機のランゼンは一斉にエアリス・セイバーへと狙いを定めた。これはもはや捨て身の攻撃であった。敵は一機ではない、四機なのだ。残り三機からの攻撃を完全に無視して集中攻撃に専念しようというのだ。間髪入れず、各々のランゼンからエアリス・セイバーへとビームライフルが一斉に発射された。
「――くっ……ううっ」
いくら新型機といえど、ビーム兵器の直撃を食らうものなら一撃で沈んでしまう。そんな危機の中、リーナは続け様に放たれたビームライフルの大方を回避し、回避不可能な軌道の射撃はすべてシールドで防ぎ、致命傷はおろか軽傷と呼べる被害さえ出すことを阻んだのである。
「命を懸けてでも相手を倒そうとするその意志は分かる。でも、私にも戦う理由がある! 戦わなければいけない理由があるから、やられるわけにはいかない!!」
気合の入った声と共に、リーナはすかさず両肩部に装備されたリニアガンを前方二機のランゼンへと発射する。
「エミリー、アーネスト、援護をおねがい!」
「了解です♪ ほらぁっ、どこ見てんのよ! お姉様の敵はわたしの敵、絶対に許さないからね!?」
「おらおらぁっ!! おまえら程度の戦闘力ではオレにかなうかよ!」
二人に援護を要請するや、スナイパー・レイに乗るエミリーが放ったビームライフルが、アームズ・レイに乗るアーネストが放ったビームライフルが無防備のランゼンを次々と撃ち落す。
リーナの撃ったリニアガンも容易く二機のランゼンを貫いた。
瞬く間に八機のランゼンが全滅を迎えた。
「――ちぃっ!! 新型機がどうしたというのだ! ランゼンだってなあぁっっ!?」
自棄の最高潮を迎えたルメルシエ中佐はなりふり構わずにエアリス・セイバーへと突貫する。――が、
「へっ、どんなに足掻いたところで、おまえにもう勝ち目はない」
ランゼンのエアリス・セイバーへの攻撃を妨げるかのように、ソード・レイに乗るレオンがロングビームサーベルで斬りかかる。
「――くっ……だが! このまま簡単には死ねん!! 貴様らも地獄に道連れにしてやる!?」
雄叫びを上げながらルメルシエは格闘するが、その攻撃は易々とソード・レイに防がれてしまう。その隙にリーナの乗るエアリス・セイバーは一気に距離を詰めてランゼンへと迫る。
「……私はまだ地獄にはいけないから」
ルメルシエは背後に大きな殺気を含んだ威圧感を覚えながらも、ソード・レイとの格闘に精一杯な状況ではもはやどうすることもできなかった。
「――ひ、ひいぃ?! た、たすけ……」
「悪く思わないで、これは仕方のないこと。これが、戦争だから……」
皇国軍第二大隊長ルイ・ルメルシエ中佐が最後に耳にした言葉は、冷たくもどこか憂いのこもった少女の声であった。
「さすがはお姉さまです! どれだけ多勢でこようが、蟻の大群が美しい蝶に勝てるはずないですもんね」
最後となるランゼンをリーナが背後からミドルビームソードを用いて斬り裂いた後、すかさずエミリーが感嘆の声を上げた。
「何でよりによって蝶なんだよ? 普通は像だろうが」
――早くもつっこみを入れたのは他ならぬアーネストである。
「バカ、像なんてリーナお姉様には相応しくないじゃない。そう、お姉様は荒れ果てた野を舞う蝶なのよ……」
うっとりとした表情でエミリーが陶酔したように言った。
「……はいはい。それは褒め言葉として受け取っておくわ。そんなことより今は少しでも早く――」
「――待った。残念ながらそう簡単には逃がしてくれないようだ」
レオンが苦笑を漏らしながら言う。その理由は、突如としてレーダーに反応があり、凄まじい速度で上空からこの場所に接近してきているのだ。
それは、四機のTBWであった。飛行形態のTBWがそれぞれ一機ずつTBWを運び、この荒野へと辿り着いた。そして次の瞬間には、驚くべき事態が起こる。
「何なの、これ……変形した?」
エミリーが思わず声を漏らした。それは無理もないことで、飛行形態から人型へと変形するTBWなど今まで一度さえも聞いたことがなかったからだ。リーナたち四人が慎重に身構える中、その四機のTBWが台地へと降り立った。
リーナの前に立つその敵は、明白に先ほど戦闘を行った新型TBWであった。それはすなわち、その機体に搭乗するパイロットも同じ人物であるということだ。シンヤ・ミナヅキという、リーナは敵の中のパイロットの一人を知っていたのだ。幼少の頃、両国が休戦中であった時分に、シンヤと出会いある一つの約束を交わした。それは、アデレードの街が一望できる小さな丘の上での、再会という名の約束。その約束は成就した。しかし、皮肉にもあの丘の上とは程遠い戦場という名の悲しみに満ちた場所であった。
今またその約束の少年が自分の前に現れたのだ。
「――どうして、どうして追いかけてくるの、シン君!? 私はあなたとは戦いたくはない」
戦場で戦いたくはないというのは命取りともなる想いであるのだが、これが今のリーナの本心である。何も相手を殺すために戦いをするわけではない。リーナが行う戦いは己の信念に基づいた戦いなのだ。リーナの背負う物、それは少女には少々荷が重いものである。
「僕も戦いたくはない!? けど、戦わなくちゃいけない! リーナ、君が背負う大きな運命と、僕は戦うんだ」
「……大きな運命」
シンヤの発した言葉の意味を思い返しながら、リーナは小さく呟く。
「――お姉様、リーナお姉様!?」
切迫したようなエミリーの声で、リーナは我に返った。今やるべきこと、それを先ず為すことが現在の道標。迷いを振り切るように頭を左右に振り、リーナは力強く叫んだ。
「皆、私たちの目的はあくまでもこのアデレードからの離脱よ。可能な限りの戦闘は避けて合流ポイントに向かうわよ!」
追撃と逃走の最終局面がようやく始まろうとしていた。
同刻。オーストラリア皇国軍アデレード基地中枢の作戦司令室。そこでは四人の人物が事態の進行を見守っていた。臨時司令長官の任についたセイイチロウと本国首都A.M.キングダムから視察に訪れたニスト、クリス、そしてユウである。
「――どうしてまた戦いが起こるのかな? このまま戦争が始まっちゃうのかな?」
部屋の窓際に立ったクリスが空を見渡しながら嘆くような口調で言った。空には月と星がただただ輝いていた。
「人という生物は計り知れないほどの力を秘めている。その力が良いことに使われるか、悪いことに使われるかは分からない。時に人が持つ力というのは世界さえも作ることができる。人がそのような力を持つが故に、争いが起こることになるんだと、私は考えるよ。だからこそ、その力を良い方向に行使して、平和な世界を保っていかなければならないんだ」
クリスの言葉に答えたのはセイイチロウである。彼女の隣に立つニストもその言葉に賛同するように首肯した。
「いやはや、まったくもってセイさんの言うとおりだ。やはり、平和が一番! あの宇宙に住む野郎共はさぞかしこれを満喫しているだろうに」
ユウもクリスと同じようにして空を見渡した。
人類が宇宙に進出して、すでに千年を超える月日が経過した。それを可能にしたのが、人為的移民用小惑星――開発代表者であるヴェル・テール博士の名にちなみVT(ヴィット)アイランドと呼ばれているものである。
現在では、宇宙空間に千以上のVTアイランドが散らばっている。また、国際的な規約により宇宙空間における戦争行為は禁止されており、それは今に至るまで遵守されているのである。
――しかし、それに比して、不相応なまでにセイイチロウの顔には曇りがさした。
「……何も起こらなければ、いいのだがね……」
浮かない顔で一言、セイイチロウはそう小さく呟くのであった。
(第二話「動き始めた時間」 終)
[次回予告]
アデレード基地奇襲事件
これをきっかけに
再び世界は戦渦に巻き込まれてしまうのか
シンヤとリーナの戦闘の行方は
そんな中
宇宙ではある一つの変化が訪れようとしていた
それは……
次回
新暦戦記ラウズ
第三話
「目覚める宇宙」
月の夜空を、駆け抜けろ、ウインド!!
[あとがき]
どうもどうも、YUKです。『新暦戦記ラウズ』、無事に二話の執筆を完了しました。いやはや、密かに一話オンリー(長続きしない)のYUKとも言われているのでありますが、今回は二話が完成したわけであります。まぁ、私としても時間とネタさえあれば、『ドゥ・アット・ランダム デビュー』や『天使のきまぐれ―Angel Fancy―』も続きを書きたいと思っております(もちろん、それと同じくらいに、中途半端な『Future Past』、『それでも最後はハッピーエンドで!?』の続編、また、まだ日の目をみない新作……なども書きたいと思っていますさあ)。でも、とりあえず、今はラウズかな。ヒロキさんもせっかく設定協力してくれましたし。というわけで、ネタが豊富ではないのですが、次回、三話でお会いできることを願って、筆を置かせていただきます。最後に、すべての読者に感謝の意を。
ではでは、私たちの新西暦時代(あした)を共に覗き見んことを。
2005年1月10日
著者 YUK
設定協力 ヒロキ