あらすじ

 桜咲く季節。それはいつも出会いと共に訪れる。そして、今年もまた、そのときがやって来た。ここは、傍から見ればごく普通の高校である私立高揚学園。大きくそびえる正門を入ると、校舎棟まで続く桜並木が来る者を歓迎するかのように、咲き乱れている。その桜並木を凄まじいスピードで走り行く少年がいた。あっという間に、歩行者を追い抜き、ときには歩行者と衝突しつつも、校舎の中へと颯爽と姿を消した。……その遥か後方、そこには泣きそうな表情で独り言を漏らす一人の少女がいた。あっさりと少年に放っていかれ、途方に暮れていたのだ。――この少年と少女は、今年高校二年生になる。特にこれといったこともない何気ない日常の繰り返し(多分)。何かが起こって欲しいような、欲しくないような、そんなもどかしい気持ち(ほんとかな?)。そんな普通の日常が、これまでと同様に続いていくんだと、そう思っていた。疑う余地なく、そう思っていたのだ……(そ、それなのに……)