葛 城 (kazuraki) 女神に美醜はあるのか?
(あらすじ)
出羽(山形)羽黒山から山伏の一行が大和(奈良)葛城山へやってきた。
「やっぱ本場で修行しなくっちゃ」・・・そう葛城山は
修験道の祖、役(えん)の行者が開いた山、全国の山伏の憧れの山。
しかし今は降りしきる雪が行く手を阻む雪山であった。
・・・とそこへ女が現れ自分の庵に招く。ワケありげ・・・・・・
女は山で拾い集めた木々の梢を焚いて、山伏をもてなす。そして
『我に悩める心あり。御勤めのついでに祈り加持して賜り候へ』
などという。いったいこの女にどんな悩みがあるのだろうか。
すると「岩橋を架けなかった罪で蔦葛に身を縛られ、
岩屋に閉じ込められたのです」といって消え失せる。
実はこの女、役の行者に葛城山〜吉野・金峰山に空中橋を架けるよう命ぜられた、
一言主神(ひとことぬしのかみ)の化身であった。
自分を『見苦しき顔ばせ』つまりブスと思い込み、夜にしか作業しなかったため
なかなか橋が架からず、行者を怒らせ岩屋に閉じ込められたのだった。
なんという人間的な神さま!
そしてなんという超人的な行者!あなた何様!
(この傲慢さがもとで伊豆に流されたという説あり)
やがて夜もふけ山伏が一心に祈祷していると、
祈りに引かれて女神が美しい姿で立ち現れる。そして
雪明かり・月明かりの中で、大和舞(天の岩戸の前で
神々が舞ったという舞)をみせるが、朝が来る前に
再び岩屋にもどっていく・・・『はづかしや浅ましや』といいながら。
最後まで自分の顔にコンプレックスをもつ女神。親近感をおぼえる。
しかし舞台上の女神はあくまでも清らかで美しい。
「全然ぶさいくちゃうよ」と声をかけてあげたい。