運命の出会い

 

「あれ?」

「まあ?」

同時に喫茶店のドアノブに手を出した男女は、その互いの顔を見て驚きの声を上げた。

「きみ、さっきも博物館で会ったよね?」

「ええ。それにその前の遺跡でも」

二人が出会ったのは今が初めてではない。さきほど彼がいた博物館でもばったり遭遇し、その前の古代遺跡でも鉢合わせたのだ。ちなみに、彼らはその前の駅前でもぶつかっている。

二人はお互いにドアノブに伸ばした手を引っ込め、照れ笑いを浮かべた。

「なんていうか、縁があるね」

「本当。偶然とは思えないわ」

 一度目は偶然。二度目の出会いはたまたま。三度目は必然、ならば四度目は運命とでもいうのだろうか。

 この偶然に、彼は思った。

(もしや、彼女は前世で離れ離れになったジェニファーではないのか?)

 彼は前世で西洋の国の貴族であった。町民であった恋人ジェニファーとは、身分の違いから両親に別かれさせられたのだ。

 ひとたびそう考えると、こうして何度も出会うことはもはや宿命。目の前にいる彼女がジェニファーであることに間違いないように思えてきた。いや、間違いない。あの時、叶えられなかった激しい恋の熱が、彼の中にメラメラと燃え上がってくる。

すでに彼は彼女がジェニファーであると確信してしまった。しかし、彼女が過去のことを覚えているかは分からない。彼は激しく悩んだ。

この偶然に、彼女も思った。

(もしや、彼は前世で離れ離れになった辰之助ではないのかしら?)

 彼女は前世で東洋の貴族であった。牛舎小屋掃除であった恋人の辰之助とは、身分の違いから両親に別れさせられたのだ。

 ひとたびそう考えると、こうして何度も出会うことはもはや宿命。目の前にいる彼が辰之助であることに間違いないように思えてきた。いや、間違いない。あの時、叶えられなかった激しい恋の泉がコンコンと湧き上がってくる。

 すでに彼女は彼が辰之助であると確信してしまった。しかし、彼は過去のことを覚えているかは分からない。彼女は激しく悩んだ。

『あの、よかったらご一緒にお茶しませんか?』

意を決し、かけた言葉が見事にハモった。

二人は顔を見合わせ、ほほを染め、一緒に喫茶店に入った。

こうして旅先で偶然出会えた運命に感謝しながら。

意見の食い違いから二人がこの店を出るのは、一時間後のことである。

 

 





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