都合のいいこと、悪いこと

 

パシャパシャパシャ。

激しいフラッシュを浴びるのは、マウドニア市の議員、アンドリア・クマッカス。

彼は昨夜、たまたま立ち寄ったコンビニで強盗事件が発生。その犯人と格闘の末、なんと捕まえたのである。

最近世論は汚職だのなんだのと悪いニュースが重なったため、彼は一躍ヒーローとなった。

そんな今日の一面は『腐敗した政治に救世主! アンドリア・クマッカス議員お手柄!』だったりする。

「クマッカス議員。犯人が現れたときの状況を教えてください!」

「僕はね、奥さんに頼まれて牛乳を買いに行くところだったんだ。そうしたら、入り口から怪しいサングラスをかけた男が現れてね。包丁を突き出して金を出せって言ってきたんだ。まったく、僕はドッキリかとおもったよ」

 インタビュアーの質問に、クマッカスは大げさに肩をすくめてみせた。

 周りの記者陣が、おおぅと、感嘆の声を上げる。

「なるほど。では、犯人と格闘したときのお気持ちはどうでしたか?」

「考えている暇なんてなかったね。気付いたら体が動いていたよ。まぁ、強いて言うなら僕が守らなくてはいけない、かな。なにせ僕は市民の味方だからね!」

 インタビュアーの質問に、クマッカスはウィンクいてみせる。

 周りの記者陣が、わははと、笑い声を上げる。

「では、最近の市政にまつわる事件ついてはどうお考えですか?」

「まったく、同じ議員として僕も嘆かわしいよ。エレノ議員は三丁目のコロッケ屋から無償でコロッケを貰っていたそうだね。それにリィ議員も。近所の井戸端会議でパウロ議員がカツラだということを話してしまって、その結果パウロ議員は引きこもってしまった。市長も市長だ。結婚記念日を忘れて、奥さんに離縁されそうになったからといって、大事な予算会議を休んでもいい理由にはならない。何より問題なのは、皆が皆都合が悪くなると『ノーコメント』ときている。これでは市民の代表として示しがつかないではないか、諸君!」

インタビュアーの質問に、クマッカスは熱く拳を握り締める。

 周りの記者陣が、うんうんと、同意する。

「では最後に。女性との密会写真が激写されましたが、彼女との関係について一言!」

「……ノーコメントで」

 

 そんな翌日の一面は、『アンドリア・クマッカス議員、ホステス嬢と不倫発覚!』だったりする。





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