やってらんねえ。
緑って何だよ、緑って。
全国区の番組だから、子供向けの戦隊ものでも我慢してるってのに。
ミドレンジャーの憂鬱
俺に与えられた色は、よりにもよって緑。これがもし赤だったら、俺の機嫌はここまで悪くない。なにせ赤は戦隊ものでの主役。リーダーだからだ。まあ、青だったとしてもここまでイラついたりはしない。青は副隊長で、準主役級。例えば黄色だったら……微妙だった。
そもそも、緑ってどうなんだ。人気はやっぱり赤に集中する。性格も分かりやすく熱血系。当然出番も多い。二番人気はやっぱり青。クールで格好いい。けど、仲間想いの情熱系。ピンクは別格として、これが気に入らない。三番人気が黄色なのだ。玉子大好きな筋肉系馬鹿。なのに三番人気。緑はぶっちぎりの最下位で人気が無い。だいたい、自然を愛する天然系ってキャラクターの意味が分からん。天然を装ってるところで、すでに天然じゃねえだろう。趣味、家庭菜園って、俺の趣味はギターだ。
最近のヒーローものは、面が勝負。朝、子供と一緒にテレビを見ている主婦層もターゲットに入っているからだ。最近では若手の登竜門として、あの若手芸能人が世界各国に飛ばされる番組と一緒に挙げられるくらいに。確かにこれで成功してチャンスを掴んだ同業者は結構いる。けれど、それも一部の人間でしかない。赤という特別な色を持った人間だ。
くそっ。
なんで俺が緑なんだ。
本来、ファンに囲まれてちやほやされてるのは俺のはずだ。
顔だって、俺が一番格好いい。うぬぼれとかじゃなくて、本気でだ。
けれど、現実に俺は赤じゃなくて緑。
ああ、泣きたくなってきた。この業界、向いてないのかもしれない。
「おじちゃん、寿司レンジャーのかっぱ巻きグリーンでしょ」
ああ、そうだよ。
たまに声かけられたって、美人の奥様じゃなくて五歳くらいの子ども。女の子なのがせめてもの救い。あと二十年成長してから来て欲しかった。ついでに俺はおじちゃんじゃなくておにいさん。まだ二十三歳だ。
「これ、あげる」
ありがとう。綺麗な赤い花だ。
これって皮肉なんだろうか。緑の俺に赤い花って。だからといって、俺は緑色した花を知っているわけじゃないけど。
「なんでお花はキレイなのか、しってる?」
それは、花が色とりどりで綺麗だからだろう。
どうせ俺はしがない葉っぱ。花を彩る刺身のツマってところか。
「ちがうよ。みどりのはっぱがあるからだよ」
それってどういう意味。
「あのね、みどりいろのはっぱがきれいだから、お花がきれいにみえるの」
それってつまり、おれが主役ってこと。
さっきまで泣きそうだったのに、今度は笑えてきた。張り付いた作り笑顔じゃなくて、心のそこから湧き上がってくるって感じだ。目からうろこってこういうことなんだろうな。
見てる人は見ていてくれてる。なんか嬉しい。本気嬉しい。
俺がいなきゃ戦隊は始まらないし、ロボットも動かせない。緑って結構重要なんだ。今日初めて、俺は緑が好きになった。ありがとう少女。
「だけど、そのお花、まぐろレッドのおにいちゃんにあげてね」
……はい?
「だって、あたしはレッドがいちばんすきなんだもん」
……うん。わかったよ。
ここでキレなかった自分に賞賛。そうだな、所詮緑なんてそんなもんだよな。
俺はこの瞬間、前よりも緑が嫌いになった。そして、緑以外の色がもっと嫌いになったのだ。
あとがき
これも大学の課題で出した作品です。テーマは緑!
かなり、アホい作品に仕上がってます(笑)
これ書くのに、わざわざ当時やっていた戦隊ヒーローの研究したなぁ。ちなみに、緑は長男でした。
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